27 何か、ダムの形式でいうと、中空重力式ダム
そんな綾羅木定祐の先を行くのは、同じく、這って動くスタイルの上市理可であり、
「はっ、はっ、はっ! 這ってうごぉぉく!! 白ぉぉ!!」
「それ、ど、こ、かで見たことある! 努力とか友情とかいって少年たちに夢だけ与えてジャンプさせて現実世界で突き落とすスタイルの少年誌の、そのネタァッ!!」
「そして、だ! てめぇのパンティの色はッ!! 何色だぁッ!! 赤ですかぁ、白ですかぁ!!」
「し、昭和の運動会!!」
と、綾羅木定祐と上市理可のふたりは、まあまあ頭のおかしい掛け合いをしつつ、
「てか、理ィ可ァ氏ィッ!!」
「――!?」
「なぜ、タイトな、尻のフ・ォルムがくっきり出るパンツでなく、そんな、ゆったりとした作業着のようなズボンなのだ!! やる気があるのか、ええ!! それにッ!! もっとエッチな感じに、尻をフリフリせんかァッ!!」
「うっ、げぇー!! さすがに、それはキモすぎィッー!!」
と、綾羅木定祐は渇を入れながら、上市理可の尻を追う!
ーーー
※『シン屋根裏の散歩者』より
笑いながら、
「まあ、話を戻しますと……、結晶華を添えて、作品にすること――、そして、私のように、トランスヒューマニズム技術で以って、身体を半分サイボーグ化させて、生きること――。“これら”はどちらも、実は、同じ意味を持つわ」
「ん……? それは、何故ぽよ?」
と、パク・ソユンが聞いた。
相変わらずの、『何故ぽよ』で。
花園静華が答える。
「ええ……、どちらもね、私たち、人間に“老い”と死という宿命を与えた神々、世界の設計者たちに対するアンチテーゼ……、もっと言えば、反逆であり革命とでも、言うべきかしら」
「はぁ、アンタ、アンチテーゼの意味分かって使ってるぽよ?」
「フフ……♪」
花園静華は微笑で誤魔化しつつ、
「ギャンブル好きなのかしら、確率仕掛けの世界の創り主の方たちが、エントロピーの法則――。“それ”によって、世の中のあらゆるものは劣化して、朽ち果てて死に向かう。アナタを含め、すべての人間、生命は、その運命から逃れられない……」
「……」
「いえ、生命だけでなくてね、この、堅牢なコンクリートのダムも、不夜城のようなソウルの都市も……、そして、ローマの文明が滅んだように、この石油文明の世界も」
「……」
と、花園静華の言葉に、コンクリートの回廊をチラリと眺めてみた。
また、花園静華は続ける。
「――そして、その、“死へと向かって劣化する過程”には、悲しいことに、醜さと、苦しみが伴う」
「ん? それで……? 結晶華と、トランスヒューマニズム技術ってのが、“それ”に抗う、象徴みたいなもの――、ってわけ?」
「ええ……。結晶――、ああ? またソユンから、「雪の結晶は、ぽよ――」ってつっこまれちゃうから、ダイヤモンドのような結晶ね♪ ――は、まさに、手垢のついた言葉だけど、永遠の変わらない、美しさの象徴――」
「はぁ……、それで? 結晶華を添えて作品にすることで、世に決別する子たちを、最後、せめて最も美しい姿でとどめてあげようとした――、ってこと?」
「そうかも、しれないわ……」
と、花園静華は微笑交じりにも、少し遠い目で答える。
その、一呼吸の間をおいて、
「そして、トランスヒューマニズム技術……、いえ、トランスヒューマニズム技術だけでなく、シンギュラリティに向かう技術というのはね……、象徴ではなく、具体的な反逆と革命」
「何ぽよ? その、シンギュラリティの最終的な目標は、神殺しとか、中二病的なアレってこと?」
「ええ……。我々が、私たち人間がね、数多の戦争、権謀・陰謀を繰り返してまでも、進歩させてきた科学技術――、その、最終的な目標は、確率仕掛けの世界を創った神々を殺すこと」
「……」
と、意味深に言う花園静華に、パク・ソユンは沈黙を挟みつつ、
「まあ、中二病と言われても、仕方ないけれわよね」
「うん。仕方ないぽよー」
と、気の抜けた相づちをした。
そのように話しているうちに、パク・ソユンと花園静華のふたりは、開けた空間へと出た。
適当な広さに、そこそこの高さのある、まるで大きな聖堂のような空間。
「ひっろ……、何? ここ?」
パク・ソユンが、思わず声を上げる。
少し、反響が残る中、
「そうね。まるで、聖堂みたいね」
「ぽよ」
「何か、ダムの形式でいうと、中空重力式ダムっていうみたいね」
「ぽよ」
と、花園静華はスマホを手にし、検索してみせていた。
「重力ダムの、真ん中が空洞になっている構造ね」
「ぽよ」
「……」
と、パク・ソユンの『ぽよ』だけの返事に、花園静華が沈黙しつつ、
「――で? 何で? 中空にすんの?」
「う~ん……? 何か、ひと昔前に、コンクリートの節約のためだったみたいね。 まあ、それが、コンクリートの生産力が上がって、その必要もなくなったみたいだけど」
「ぽよ」
「……」
と、再び沈黙させられながらも、そのまま“コンクリートの聖堂”の中を散策し、眺める。
「ああ……、ここは、いい空間ね」
美しいものを見て言うような花園静華に、
「ぽよ」
と、パク・ソユンが答える。
「“ここ”にいたら、アナタも、作品になりたくなってこない? ソユン?」
「ぽよ」
「もう、何でもかんでも『ぽよ』で答えて、悪い子ね♪」
と、ここで、花園静華が困り顔ながら誘惑する御姉さまのような顔で、パク・ソユンを見つめた。
「……」
「……」
ジッ……と、パク・ソユンと花園静華は目が合って、向かい合う・
「悪い子には、イタズラでもしちゃおっかな?」
「……」
と、両肩を掴む花園静華と、パク・ソユンが相対峙した。
その時、
――ヒューッ――!!
と、頭上から寸前まで殺した気配とともに、
「おらァァッ!! 離れろ!! フロリストッ――!!」
と、キム・テヤンが叫びつつ降下して現れ!! フロリストに襲撃しにかかる――!!
その攻撃を受けん刹那、
「ろっ、とぉッ――♪」
と、花園静華は一寸のところながら余裕をもってかわす!!
その傍らでは同時に、
「ッ――!? は!? テヤン!!」
と、パク・ソユンが、助けに駆けつけた(まあ、降下してきたのだが)キム・テヤンに気がついて声を上げる。
そのキム・テヤンは、
「ちッ! 反応いいヤツめ!」
と、自身の急襲を回避したフロリストに舌打ちする。
「あら、ん? もう、デートの邪魔をしに来たの?」
「けっ、何が、デートだってんだ」
また、キム・テヤンは舌打ちしながら、
「しかも……、ああ”? 女じゃねぇか! この、フロリストってのは」
「うん。何か、半生サイボーグがどうだって」
「はぁ? 半生サイボーグだと……?」
と、パク・ソユンの言葉に、顔をしかめる。
また、そこへ、
「そッ、ソユン――!!」
と叫ぶ声が聞こえてくるとともに、
――ズッ、シャァァッ――!!!
と、今度は魔界植物と思しきが、雪崩れこむように花園静華を捕縛せんと襲いかかってきた!!




