28 そうよ。自分で“人気もの”って言っていいのは、クレヨンしんちゃんだけよ
(4)
「――!?」
と、これには流石の花園静華も驚きつつ、咄嗟に反応する!!
並みの強敵であれば、第一波か二波くらいは耐えれるものの、魔界植物の波状攻撃に捕まってしまうのだが、
「あらら? まだ来るの?」
と、少し忙しそうにしながらも、
――ドワァァッ!!
と、襲い来る植物たちを、花園静華は余裕そうな様子でかわしていた。
それを見ながら、
「あぁッ――!? あんなに簡単にかわされるのかい!」
「何と――? 魔界植物をかわすとは」
と、登場したドン・ヨンファとカン・ロウンのふたりが驚いていると、
「ったく! 黙って攻撃すりゃいいだろが! ヨンファ! わざわざ大声出しやがって! 攻撃を知らせてるもんじゃねぇか!」
と、キム・テヤンがドン・ヨンファにつっこかかってきた。
「わっ! ご、ごめんって!」
慌てながらも平謝りするドン・ヨンファに、
「てか、やっと来やがったのかよ! お前たち、よぅ?」
と、キム・テヤンが顔をしかめて言うと、
「いや、テヤンだって、今来たし」
と、パク・ソユンが横からつっこんだ。
その間も、
――ズシャァァッ……!!!
と、乱れる大波のごとき魔界植物の攻撃を、まるでファンの追っかけから逃げて戯れる御姉さまのように、花園静華は回避し続けていた。
さらに、
「ごめんなさいね♪」
と、詫びを入れつつ、
――ファサァァッ……!!
と、“これ”は召喚したのか? あるいは、何らかしら仕込んだトリックで出したのか――?
結晶華が現れるとともに、魔界植物たちを束ね、まるでフラワーアレンジメント作品のようにして無力化してしまう!!
「「なッ――!?」」
カン・ロウンとドン・ヨンファが同時に、
「た、タヌキの魔界植物が――!?」
「ぽよ」
と、続けてキム・テヤンとパク・ソユンが驚きの声を上げた。
まあ、『ぽよ』は驚きの声じゃないだろうと思われながら。
それはさておき、四人は驚くも、
「おい、攻撃を緩めるなっての! タコ!」
「わ、分かったって! タコ呼ばわりしなくてもいいだろ」
と、キム・テヤンが怒鳴って、いちおうは植物を具現化する系の異能力を持つドン・ヨンファに攻撃を続けるよう急かす。
そうして再び、ドン・ヨンファは妖狐から借りた、新たな魔界植物
を出す。
そのいっぽう、
「フ、シュッ――!!」
と、キム・テヤンが息を吐くや、まるで瞬間移動のような身のこなしでフロリスト、花園静華との距離をつめ、
「フンッ!! ハァッ――!!」
「――!?」
と、流石は元情報部とでもいうべきか!! テコンドーの応用と思しき連撃を見舞うも、
――ブンッ――!!
と、強力に放たれる高速の蹴りであるが、
「フフッ♪」
と、花園静華は微笑しつつ、
――ひら、り……
と、残像を残す余裕を以って、軽々とかわされる。
ただ、回避されることは計算のうえで、その花園静華が避けるだろうと思った先にはパク・ソユンが構えており、
「おい!! グロい道具出して殺すなよ、ソユン!! あくまで捕縛しろ!!」
「うん。分かったって」
パク・ソユンが気の抜けた返事をしながら捕縛系の、ヘビのように蠢く長布というマイルドな武器類を召還し、
「ちょッ!? ソユンまで私を捕まえようとするの!?」
「うん。だから、タイーホするぽよー、って言ったじゃん」
と、フロリストを捕まえんと、放つ!!
襲いくる魔界植物と、ハチが刺すようなキム・テヤン格闘術、それからヘビのように襲いくるパク・ソユンの召還する布の追撃――
どんな強敵であっても、苦戦し、逃げることの困難な連撃だろう。
しかし、花園静華はまるで異次元のスポーツプレイヤーのように、触れられることなくかわし続ける。
「ちッ! まったく! ちょこちょこ避けやがって! 遊んでんのかよ!」
「あら、ごめん遊ばせ♪」
「ごめん遊ばせじゃねぇってんだよ!! タコ!!」
「そうよ。ちょこちょこ鬱陶しいし」
と、キム・テヤンとパク・ソユンは苛立つ。
そうしながらも、
「はぁ、……でも、人気ものは困るわね♪ ちょっと、疲れてきちゃった♪」
「ああ”? 何が、人気ものだってんだよ!」
「そうよ。自分で“人気もの”って言っていいのは、クレヨンしんちゃんだけよ」
と、花園静華は疲れてきたと宣う。
また、そこへ、
「ていうか、あの、フロリストというのは攻撃してこないのかい?」
と、ドン・ヨンファが、回避ばかりして攻撃らしい攻撃を見せていない花園静華の様子を見て、ふたりに警戒するように言う。
「ああ”? 一応、警戒してるっての」
「そうよ。アンタに言われるまでもないし」
と、ふたりが答えるのを聞いて、
「あら? ご心配には及びませんわ。とりあえず、私は避ける専門に徹しているから、アナタたちを攻撃などしませんわ」
などと、花園静華は言うも、
「ああ”? んなもん、信じられっかよ」
「そうよ」
と、キム・テヤンとパク・ソユンのふたりは、距離をつめる。
そのまま、再び、三人の攻撃が花園静華を囲まんとする。
だが、ここで、
「――てことで、そろそろ、疲れてきたしぃ……? ちょっと、逃げてもいいかしら?」
と、少し困り顔をふくませて、花園静華は言うや否や、
――タンッ――!!
と、大きく地面を蹴り、上へと跳躍する!!
「あっ――!? 待てい!!」
「は? ちょっと、逃げんの!」
と、キム・テヤンとパク・ソユンのふたりは咄嗟に追おうと思ったが、その高さは簡単に終えるものでなく、
「じゃあ、ね♪」
と、花園静華はそのまま、ダムの外へと向かう。
パク・ソユンたち四人も、その後を追う。
そうして、ダムの外へと出る。
外は、吹雪は止んでおり、夜明けの近づく中、ちらちら程度の雪が美しく降っていた。
その、ダムの堤防の端に、
「……」
と、花園静華は佇んでいた。
その姿は、凛として美しくもあった。
そして、
――キィィン……!!!
と、低空の上空のからは、昨夜のパク・ソユンの部屋でさらったときと同じく、自動操縦のステルス戦闘機が迎えに来る。
「「あっ――!」」
「お、おい! 待ちやがれ!」
「ちょっと! 逃げんの!」
と、あと少しのところに四人は迫るも、
「ええ♪ だって、逃げるって、言っちゃったし」
と、花園静華はすでに、飛び乗る姿勢をとっていた。
その、ステルス機の迫る中、
「――でも、今回はアナタの勝ちよ、ソユン」
「は――?」
と、言った花園静華に、パク・ソユンが顔をしかめる。
「いずれにしても、アナタを堕とせなかった時点で、私の負け……今回は、大人しく退散するわ。でも、その前に――」
と、何か言おうとする花園静華に、
「――?」
と、パク・ソユンは首を傾げそうに、キョトンとする。
その、次の瞬間
――ぐいっ――
と、花園静華はパク・ソユンを引き寄せるなり、
――ズッ、キューン……!!!
と、まるで!! 効果音がせんがごとく――!!
花園静華はあろうことか、パク・ソユンにキスをした!!
「は――? ちょっ!! 何すんの!! アンタ!!」
咄嗟に、ビンタをせん勢いでパク・ソユンがキレるも、
「フフ……♪ ごめん遊ばせ♪」
と、花園静華はイタズラちっくな御姉さまのように笑いつつ、
――スッ、タンッ――!!
と、大きく後ろへ跳躍しながら、
「今度は、ちゃんと静華って呼んでよね♪ ソユン」
「は? 呼ばないし!! 待つし!!」
と、パク・ソユンはイラッとしたときの表情で呼び止めるも、
――キィィン……!!!
と、花園静華は開いたキャノピーからそのままステルス機へと飛び乗り、逃走してしまった。
そこには、
――ファ、サァァ……
と、雪で作ったのか――? 結晶華のブーケが渡されつつ。
「お、おい!」
「そ、ソユン!」
「な、何されたんだい!」
と、三人が寄ってくる中、
「は? 何なの、あいつ?」
と、パク・ソユンは結晶華を手にしつつ、ちょいイラッとした顔で佇んでいた。
(終了)




