第1話 うなじがこわばって、ぞくっとする。千八百年前の本もそこから始まる。
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第1話 汗が出るか、出ないか
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傷寒論 太陽病 第1〜3条(一級)
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「風が冷たくなってきたね」
「首の後ろに来るな、こういう風は」
「うなじがこわばって、ぞくっとして」
「千八百年前の本もそこから始まってる」
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■第1条 太陽病とは
太陽之為病,脈浮,頭項強痛而惡寒。
太陽の病たる、脈浮、頭項強痛して悪寒す。
|要約 脈が浮く・頭とうなじがこわばって痛む・寒気。この三つがそろえば太陽病。
「さっきの首の話そのままだ」
「三つだけ。短いね」
「短いから覚える」
太陽病は、病の名前というより、病がいる場所の名前だ。外から入った邪がまだ体の表面にいる。中医学ではこれを表証と呼ぶ。始まりが急で、場所が浅く、続くのが短い。
「表面にいるうちに追い出せば、奥へは行かない」
「奥へ行くとどうなるの」
「段階が六つある。太陽の次が陽明、少陽。その先が太陰、少陰、厥陰」
「日本の漢方でも六つで見るよ。『六病位』って言う」
「呼び方は違うけど、入口に太陽を置くのは同じだ」
六つの段階で病の進み方を追う見方を、中医学では六経弁証と言う。傷寒論の骨組みはこれでできている。
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■第2条 汗が出るなら「中風」
太陽病,發熱,汗出,惡風,脈緩者,名為中風。
太陽病、発熱し、汗出で、悪風し、脈緩なる者は、名づけて中風と為す。
|要約 汗が出る太陽病を「中風」と呼ぶ。
「汗が出るんだ」
「出る。次の条は出ない」
「中風って、日本だと脳卒中のあとの半身不随のことでしょ」
「ここでは『風に当たった』くらいの意味」
悪風は、風に当たると寒く、風を避ければ治まる寒気。
「脈の『緩』はゆっくりってこと?」
「速さより張りの話として読まれてきた」
成無己は、傷寒論に初めて注を付けた人とされる。その注に、寒の性質は張りつめて急、風の性質はほどけて緩い、とある。だから風に当たった中風の脈は緩い。張っていない脈と読める。
「速さじゃなくて張りなんだ」
「次の条の『緊』と並べるとよく分かる」
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■第3条 汗が出ないなら「傷寒」
太陽病,或已發熱,或未發熱,必惡寒,體痛,嘔逆,脈陰陽俱緊者,名為傷寒。
太陽病、或いは已に発熱し、或いは未だ発熱せず、必ず悪寒し、体痛み、嘔逆し、脈陰陽倶に緊なる者は、名づけて傷寒と為す。
|要約 必ず悪寒があり、脈が張りつめている太陽病を「傷寒」と呼ぶ。
「熱は出ていても出ていなくてもいいんだ」
「でも寒気は『必ず』」
「体も痛い。吐き気もある」
「中風より重いね」
悪寒は、着こんでも火に寄っても治まらない寒気。風を避けても着こんでも治まらない。
脈の緊は、よった縄を引っぱったときのような脈。寒の性質の、張りつめて急な形がそのまま脈に出ている。
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■並べてみる
◇汗
中風(第2条):出る
傷寒(第3条):出ない(第3条には書いていない。後の条で出てくる)
◇寒気
中風(第2条):悪風(風に当たると寒い)
傷寒(第3条):悪寒(必ず。着こんでも寒い)
◇脈
中風(第2条):緩
傷寒(第3条):緊
◇ほか
中風(第2条):—
傷寒(第3条):体が痛む・吐き気
「同じ風邪のひきはじめでも、汗が出るかどうかで、道が分かれる」
「出る人と出ない人で薬が変わる」
「出る人の薬が次の話」
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第1話 まとめ
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■覚えておく原文
太陽之為病,脈浮,頭項強痛而惡寒。(第1条)
太陽病の三つ。脈浮・頭項強痛・悪寒。
太陽病,發熱,汗出,惡風,脈緩者,名為中風。(第2条)
汗が出る太陽病は中風。
太陽病,或已發熱,或未發熱,必惡寒,體痛,嘔逆,脈陰陽俱緊者,名為傷寒。(第3条)
必ず悪寒、脈が緊の太陽病は傷寒。
■新しく出た言葉
表証・六経弁証(日本では六病位)・悪風・悪寒・緩・緊・中風・傷寒




