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希望越え絶望越え願い越え

「あ......」


 真後ろからの声にびっくりして貰い物を落としてしまった。

 もし、一般人だとしても容赦せぬぞ......食べ物の恨みは恐ろしいんだからな?

 まぁ、それはないか。だってねぇ......身体中に虫を這わせている人なんて普通いないよね?


「今日は宴だねぇ? 楽しみだねぇ? 歌えや踊れや! あははは! 」


 声は野太い男性の声に......あれだ、事件とかでテレビに映るときの声にモザイク加工したみたいな声をしていた。

 そして虫男(仮称)は不気味に笑いながら体をくねらせて踊っていた。

 虫男が大きく動く度に身体についていた百足やミミズといった虫たちが飛び散っていった。

 気持ち悪っ! というのが率直な感想だったが恐らくこの虫男の狙いは私なのだろう。

 幸い前回の失敗から今日に至るまで恐怖を克服するために私は有名なホラゲーを巡回したり近所の出ると噂の廃墟に足を踏み入れ精神的に強くなっていた!

 多分どっちかと言うと今回の相手が前回の犬? と怖さが別ベクトルなせいとも言えなくはなかったが......


「【魔蝕結界】! 【魔装展開】! よしッ! ばっちこーい! 」


 今はもう暗く人通りも少なかったが一応人払いの意味も込め魔蝕結界を張り、魔法少女状態に変身する。


「宴もっ酣っ! 歌えや踊れや! あっはははは! 僕と戦うつもりなのかな? 負けるのも分からないのかな? 分からないのかな? 」


「うっせぇー! お前なんて前の犬に比べたらへでもないよぉーだっ! 」


 そういうと虫男は首を傾げて笑い出す。

 うげっ......また虫が落ちた。

 て、いうかなんで全部みんなが嫌いな虫全員集合みたいな感じなの?

 カブトムシとか蝶々を入れなさいよ! 百足とかゲジゲジとかじゃなくてさ!


「およよよよ? 君はたかだか【猟犬】を相手にしたごときでそれを言ってるのかな? 滑稽かな? 理解不能かな? あはははは! 」


「あなたキモイからもういい! 【セイレーンの緑風】! って......あれ? 」


 虫をそこらに撒き散らしながら踊る魔物に私の今できる最高威力の魔法を叩き込んだのだがいい意味で予想に反して虫男は無数の風の刃に引き裂かれ張り付いていた虫が散り散りに散らばった。


「あんなに自信満々だったのにただの虚仮威しだったてこと? まぁ、私の会った魔物なんてさっきの虫男含めるとあの犬ぐらいだし種類によって違うのかも......?────ん? 」


 あまりこの場に似つかわしくない音が聞こえた。この音は......


「──太鼓と笛? 」


 この季節の暗い中で祭りなんてあっただろうか......?

 ──いや違う、そうじゃない。今私は何処にいる?

 そう、依然としてまだ【魔蝕結界】の中にいるはずだ。

【魔蝕結界】はマスコット達に貰ったアイテム? で、今いるこの世界とまた別の世界を一部だけだが構築する? だったけな?

 まぁ難しくて途中から聞いていなかった説明だったけど、要するにこの結界の中にいる間は私と魔物が戦った形跡は現実に反映されず、一般人は見ることも触れることもできなくなる。

 ......らしい──最近例外っぽいのを見たからなんとも言えないけど......

 だからこそおかしいのだ。仮に祭りとかで太鼓や笛が鳴っていたとしてもそれは結界内にいる私には聞こえないはずなのである。

 私が思考を巡らせている内に太鼓や笛の音はだんだんと明確になり歌が聞こえてきた。


「宴も酣っ! けふ越えて! 沈む朝日に何を見る? されど踊れば極楽浄土! 一つ! 二通夜! 三つの矢! 我ら「『喜劇(悲劇)』」を演じし者! 今日はこれにて舞台は終幕! ......君の負けだよ?」


「え?......痛ッた!」


 最後に声が聞こえた瞬間足に鋭い痛みが走り急いで足を払うと百足が一匹ポトリと落ち、そのまま少し進むとその百足に向かって他の虫たちがその百足に群がり人型になった。

 私はどうやら勘違いしてたらしい。

 あれは何かに虫が張り付いていたのではなく最初から虫の塊だったという訳だ。

 しかもさっきから身体が思うように動かない......


「毒......!? 」


「おぉ大正解ィ! 頭の鈍そうな君でも流石にここまでくると分かるんだね? じゃあ君は僕の家に持ち帰らせてもらうね? 僕の子供たちを沢山産んで貰わないといけないからね? 【猟犬】は大事な大事な魔法少女を殺しちゃうからいけない......彼女らは大切な養殖場なんだからねぇ? 」


「あはははははははは! 」


「ありゃ? 絶望しすぎておかしくなっちゃったのかな? まぁ大丈夫かな。持って帰った後に薬漬けにしておけばいいかな? 大丈夫、君の先輩も沢山いるからねぇ? トントン......やめてくれよ今は気分が良いんだからねぇ......ん?」


「よぉ? 面白いことしてんじゃねぇか? 」


 小柄な少女は木刀を片手に虫男の腕を切り落とした。


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