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休日

「ふぁ〜」


 自室に呑気なあくびが響く。

 そこには昨日の夜の興奮や熱などはとうになく只々今日という休日をだらだらと過ごそうとしている夜宵の気持ちがその雰囲気から感じられた。

 寝ぼけた頭のまま着替えを済ませるとふらつく足取りの中既に仕事に出て行ったであろう母が残してくれた朝食を温めることなく口に入れもしゃもしゃと咀嚼し飲み込む。

 朝食も冷めきってはおらず独特な生ぬるさを噛み締める度に少しずつ意識が覚醒する。


「ご馳走様でした」


 手を合わせ食事を終える頃には頭は完全に冴えており、出かけの予定があるのを思い出すと戸棚から羊羹を引っ提げて外へと飛び出した。


 〜〜〜


「──ってことがあったんだよ爺さん」


「そりゃまた不思議なことに巻き込まれておられますなぁ」


 カチカチと将棋の駒を指す音が響き蒸し暑い中縁側で愚痴る。

 時たまに鳥が飛んではクソ暑いのを皮肉るように鳴いて去っていく。


「──で、やーさんはどうするので?」


「だから爺さん、そのやーさんって呼び方やめてくれねぇか?昔ならあんまし気にならなかったけどな、今だとヤクザのこともやーさんと呼ぶもんだから流石に近所の人に聞かれるとあんましいい顔されないんだよ」


 そう言うと「おやおや、そうでしたか。すいませんね。確かにこんな可愛らしいヤクザさんはいませんね」と軽く流す。


「まぁとりあえず様子見かな.....面白そうだがあんたらにゃあ迷惑はかけられねぇよ。」


 調子づく爺さんの言葉を無視して夜宵は続けるが突如として爺さんは駒を持つ手を止めからからと笑い始めた。


「どうした爺さん?ついに暑さでおかしくなったか?」


「──いや、あなたはそんな人じゃないでしょうに......人を気遣うとかそういうのは柄でもないでしょう?あ、王手だ......」


「はは、あんたには敵わねぇよ」


 夜宵はやれやれと肩を落としながら将棋盤の横に控えてあった羊羹の最後の1切れを祖父に差し出し、祖父は美味しそうに口へと放り込んだ。


 〜〜〜


「──そういや爺さん」


「どうしましたかやーさん?」


 変わらないやーさん呼びにもう訂正する気も失せたのでそのまま話を続ける。


「木刀壊しちまったから新しいの買ってくれねぇか? 」


「あぁ庭の隅に隠すように置いてあった青いボロ雑巾でしょう?いいですよ別に、また壊しそうなので次は買う本数増やしておきますが.....」


 げっ、バレてたか.....

 後でこっそり処分しようと思ってたんだが.....


「あ、あぁ助かる。悪いな、買ってもらって......」


「いえいえ孫に頼られるのはおじいちゃんとしての本望ですから。それが木刀とは流石に私も思いませんでしたがね。ほほほ......」


 二人は顔を見合わせどちらともなく吹き出したしばらくの間、日が暮れかけたオレンジ色の空に笑い声が響いていた。


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