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緑風の魔法少女の記録②

「──つまりな俺は正義の魔法少女を作り出す可愛い人形様って訳だ。......だからな、その......」


「宗教勧誘は結構ですので今すぐお引き取りくださいッ! 」


 和室の中央に座しているぬいぐるみモドキを睨みつけながら私は和室の隅っこに極限まで体を圧縮して座布団バリアで身を守っていた。


「せめて、その......隅から出たらどうだ? その......ほら迫力が出ないだろ? 」


「た、確かに......いや、私がここから出たら襲うつもりだなぁっ! ......私は絶対にここを動かない! 」


 気絶したぬいぐるみを抱えてとりあえず家の和室に入ったは良いもののすぐ目を覚まして今この状況である。

 自慢じゃないが私はホラー映画を最後まで見たことがない。

 見ようとしたことは勿論あるが、最初のホラーシーンで気絶して起きたところで映画は終わっているというのが私である。

 そんな私がぬいぐるみが喋るところなんて確認してみろ、恐怖で震え上がることは確実だ。......今みたいに......あ、SAN値チェックしなきゃ。


「はぁ......だから俺はそんな危ない奴じゃねぇって......ほら、もふもふだぞ? こんなもふもふがそんなに危険に見えるか? 」


「たし......かに」


 確かに、あんなにもふもふなヤツが危なかったり怖いものだったりするはずがない。

 話だけでも聞いてみるか......私は少し部屋の中央に近づいた。


「おぉ......なんだ......野生の動物の相手をしてるみたいだな(小声)。まぁ、さっきも言った通り俺は皆を守るために戦う★魔法少女にすることができる優しい優しいぬいぐるみだ。だが困ったことに俺と契約していた魔法少女が魔物に連れ去られちまって、あそこにボロ雑巾のごとく放り投げられていたのをお前が助けたというわけさ! さぁ望みを言うが良い少女よ! 契約とは違うからささやかな願いしか叶えられねぇが自販機のくじに当たるようになる程度はできるハズだ。ほれ、望みを言ってみ?俺も新しい魔法少女を探すので忙しいからさ」


「──あのさ私じゃダメかな? 」


「──?」


「だからさ、私がその魔法少女ってのになっちゃダメかな? 」


 そういうとぬいぐるみモドキは顔を顰め、怪訝な声をあげた。


「お前本当にそれ言ってるのか? 俺が言うのもなんだがあまり良いもんじゃないぞ? 本当にそれを分かって言っているのか? 」


「いいよ、別に......私もうなんか人生どうでも良くってさ......なんか刺激が欲しかったの。望み叶えてくれるんでしょ? 」


「はぁ......どうなっても知らねぇからな......」


 ぬいぐるみモドキは私の前まで来ると手招き......いやしゃがめか。

 しゃがんであげるとぬいぐるみモドキは私のちょうど胸の位置辺りにの空間に厨二のノートでしか見なさそうな魔法陣を書き出すとその魔法陣は私の胸に吸い込まれて消えていった。


「これで契約終了だ、じゃあ説明だけしとくぞ......俺は後始末やら上への報告でしばらく居なくなるからな...」


 そこからは魔法少女の色々を聞いた。

 半分以上流してたけど......でも一つだけ強く印象に残った。......いや印象づけるために強く言っていた言葉がまだ脳内に半数していた。


『最後に言っておくが魔法少女の最後は悲惨だ、ぐちゃぐちゃに食われ殺されるのならまだマシな方で、魔物のほとんどは無力化した魔法少女を飼い殺しにして犯し、その個体数を増やす。暴行を振るわれることや拷問、奴らの特殊な性癖のはけ口にされることもある。仮に耐えきり奇跡的に他の魔法少女に救助されたとしてもほぼ例外なく現実を直視できずに救助された端から自害して命を絶っていく......これだけは覚えておいくれ。それじゃあ俺はもう行く、戻ってくるまでに死ぬんじゃねぇぞ〜!』


 〜〜〜


 あ......れ......?私なんでこんな夢見てたんだっけ?

 動きの鈍い頭をゆっくりと動かし見渡すと自身の腹に穴がぽっかりと空いていて血の池に沈んでいることが分かった。

 だがあの虫男の毒のせいだろうか......痛みなんてものは不思議と感じず、少しづつ身体が冷えていく。

 視界の端に高笑うあの虫男と最近出会った少女が対面しているのが見えた。

 あいつが私たちごと腹をぶち抜こうと狙ってたのは分かったから突き飛ばしちゃったけど悪いことしちゃったな。

 思えば私はあの子に惹かれてたのかもしれない。あの子はなんというか人じゃなくて魂を見てるんじゃないか?ってぐらいその人の内面をよく見ている。

 どこまでも見られなかった私にとってあの子の存在はとても都合が良かったのだろう。だからわざわざ関わりに行った。そんなタイプじゃないのに......

 走馬灯が駆け巡る中、身体は刻一刻と冷えていき終わりが近づいてるのが直感として理解できた。

 あぁ......このまま私死んじゃうのかな?

 ──いや私はしぶとい! そう、あれ誰に言われたんだっけ?

『お前って本当にしぶといよな!』

『はぁ?それ、か弱い私に言う言葉ぁ?』


『紗良......我慢させちゃってごめんね...紗良もお友達みたいにゲームで遊びたいだろうに...』

『うん、大丈夫、大丈夫、家には可愛い、可愛い妹ちゃんがいるからしょうがないよ』


『え? これ本当にいいの......? 』

『勘違いするんじゃねぇぞ? 俺が新しいゲーム機買ったからいらなくなっただけだ。それにお前とも一緒にゲームしたいし......』


 ────なぁんだ......


「あの子の言った通り私......本当に馬鹿だったな。勝手に社会の被害者ぶって周りを見ようとしなかったのは私の方じゃないか......お母さんも、お父さんも、妹も、幼馴染も......あとついでに綾部部長も皆私のことをしっかり見てくれていたし心配してくれてたんじゃないか。なのに......このざまかぁ......本ッ当に笑えないね。勝手に退屈して、勝手に社会に絶望して、勝手に変な運命に巻き込まれて、勝手にみんなに迷惑かけて死ぬ。どこまで落ちればいいんだか......最低だな私って......あ......れ......? 」


 頬には大粒の涙がとめどなく溢れて......毒による痛みの遅延も少しずつ薄れてきていた。


「あはは......痛いなぁ......痛い。でもなんでかなぁ。......お腹に穴が空いてるってのに胸が痛いや。まだ生きたかったなぁ......みんな泣いてくれるのかな? こんな私みたいな奴のために? ......ないないない......でも泣いてくれたら嬉しいなぁ......なんか、もう眠くなってきちゃった......」


 その眠気には逆らえず私はゆっくりと意識を手放した。


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