時計塔の約束
パーティーの日から数日経った。
学院内では婚約が成立したカップルがいたるところでイチャコラしていた。
なんとテレサはあのあと例の男子生徒から告白されたらしく、戸惑って返事を保留にしているらしい。
パーティーの翌日、顔を真っ赤にしながら告白されたことを打ち明けるテレサは可愛かった。
「ソフィーはどうだったの!?あれだけ綺麗だったんだし、何かあったでしょ!!」
談話室のソファに座り、テレサはクッションを抱えて私を見た。
「別になにも...」
言いかけて、中庭でのエドワードとのことを思い出した。
私は彼に惹かれている。そう自覚すると、途端に気恥ずかしくなって顔が赤くなった。
「やっぱり!!何か隠してない?」
テレサがニヤニヤしながら尋問してくる。
「そろそろ講義の時間よ!」
話を切り上げるべく、私は教科書を持って立ち上がった。
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教室を移動するときに通る回廊から、ちょうどエドワードたちが模擬戦をしているのが見えた。戦いに魔法を使う一門の生徒は主に実践形式の鍛錬で魔法の力を磨くのだ。
彼の友人であり、キャルロット伯爵家のカイン様が「エドワード、今だ!」と言った瞬間ー
たちまち激しい火柱が上がり、焼けこげた魔物のハリボテが地面に落ちた。
端で見ていた女子生徒たちが黄色い歓声をあげる。
「エドワード様、素敵...」
「なんでかっこいいのかしら」
「カイン様も素晴らしかったわ」
よく目立っていた二人を口々に褒めていた。
エドワードが、ふと回廊にいるソフィーを見る。
「ソフィー!」
目があったと思ったら、大声で名前を呼ばれた。エドワードに集中していた視線が一気にソフィーへ向かう。
距離は縮まった二人だったが学院で顔を合わせることなく、あの日以来の再会だった。
いきなり名前を呼ばれた恥ずかしさでソフィーは走り去る。エドワードは思わず彼女を追いかけた。
「エドワード!まだ講義は終わってないぞ!」
カインが彼を呼び止めるが、追いつけるわけがなく、あっという間に二人は群衆の中から姿を消した。
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「なんで...あんないきなり...」
赤面したソフィーは時計塔の屋上で座り込んだ。
エドワードのことを意識し始めてまだ日が浅く、今まで色恋に疎かった彼女は自分の気持ちに困惑していた。
「あんな態度をとってしまって...エドワード様も怒ってるかもしれない...」
ポツリと呟いてうずくまっていると、後ろからエドワードが彼女にそっと触れた。
「...ソフィー、すまない。驚かせてしまって」
「エドワード様...私こそ、すみません。名前を呼ばれて、気恥ずかしくなってしまって...あんな態度をとってごめんなさい」
時計塔が15時の鐘を鳴らす。大きな音がなって、ソフィーはビクッとした勢いで顔を上げてエドワードを見た。
彼も照れくさそうに、でもいつもの優しい微笑みで彼女を見つめている。目が離せないまま、お互いを見る。
ー鐘が鳴り終わる。あたりが静まり返ったとき、エドワードが口を開いた。
「...ソフィー。君がこの前言ってくれた、『あなたが救ったものを私が守ります』という言葉をずっと考えていた。俺はそんなことを言われたのが初めてだったから...本当にうれしかったんだ。あれからずっと君のことを考えている...惹かれているんだと思う」
エドワードがぎこちなく気持ちを話している。その思いを正面から受け取ろうとソフィーも彼を見つめた。
「俺は、君が好きなんだ。だから...婚約してほしい」
彼は顔を真っ赤にして、でもソフィーのことをしっかり見つめて言った。
「エドワード様が...私を...」
ソフィーは言葉を受け止めながら、エドワードが自分と同じ気持ちであることが理解できてきて、涙が出かけた。
「私もあなたをお慕いしています、エドワード様」
ソフィーは花が咲き綻ぶような笑顔で答えた。
爽やかな風が吹き抜ける中、二人は抱きしめあって婚約の約束を交わした。
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