1万PV御礼【番外編】幸せの花
ソフィーと結婚式を挙げてしばらく経った。
毎朝目が覚めるとき、毎夜眠りにつくとき、隣で眠る彼女の寝顔を見るのが日課だ。
俺の胸に抱きついて眠る彼女が愛おしくて、起こさないようにそっと抱きしめる。
「......結婚できてよかった」
噛み締めながら小さく呟くと、ソフィーが目を擦って言った。
「...ん、おはよう、エドワード」
「おはよう、起こしてしまったか?すまない」
「...大変!もうこんな時間!起きなきゃ」
もっとイチャイチャしたかったのに、真面目な彼女はベッドから飛び起きて身支度をはじめる。
「...まだ起きなくても大丈夫だ」
俺がそう言って彼女をベッドに引き戻そうとすると、「だめよ!今日はグレンブルク領の領民の方々が私たちの結婚祝いにパーティーを開いてくれるんだから」
「そうだったな...楽しみだな」
彼女に引っ張られ、自分も手近にあるシャツを着る。
「グレンブルク領のみなさんにお祝いしてもらえるなんて、とてもうれしいわ...エドワードの奥さんになれたんだなって、実感する」
微笑む彼女が天使のようで、このまま二人きりで過ごしたかったのをぐっと我慢して支度をはじめた。
----------
「ご結婚おめでとうございます!エドワード様、ソフィー様!」
グレンブルク領のとある町の広場では、大勢の領民たちが集まり二人のことを祝福した。花々が美しく飾られた広場で、持ち寄った料理やお酒が盛大に振る舞われる。
「みなさん、ありがとうございます」
目を潤ませながらソフィーが言うと、領民たちは新しい領主の妻を褒め称えた。
「あんなに綺麗な御人が我が領の領主夫人だなんて、グレンブルク領はこの先安泰だわ!」
「今日は我々からの感謝の気持ちです!領主様も奥様もたくさん召し上がってください!」
そんなことを口々に、俺とソフィーには次々と食べ物と飲み物が手渡され、子どもから老人までたくさんの領民が俺たちを囲んで談笑した。
領民たちと話していると、広間の片隅から小さな悲鳴が聞こえた。ソフィーがいるほうだ。
走って向かうと、心配そうな領民たちに囲まれて地面にうずくまるソフィーがいた。
「ソフィー、大丈夫か?」
彼女の背中に手を当てて顔を見ると、少し顔色が悪そうだった。
領民の案内で休める場所に行くことになり、俺はソフィーを抱き抱えて広場の人々に告げた。
「すまない、妻の具合が悪くなったのでこれで失礼する。今日は俺たちのためにありがとう」
みんなソフィーを気遣うエドワードの様子に見惚れながらも、「奥様お大事にー!!」「領主様カッコいいー!!」と声を上げた。
----------
「ごめんなさい...私のせいでせっかくのパーティーが」
しょんぼりするソフィーを宥め、町の片隅にある診療所で休むことになった。
「気分が落ち着くのでこれを飲んでくださいな」
看護師がそう言ってハーブティーを出した。
「ありがとうございます」
そう言ってソフィーが一口飲もうとしたとき、ハーブの香りに再び気持ちが悪くなったようで吐きそうになってしまった。
「もしかして...」
背中をさする看護師がエドワードを見た。
「.......?」
訳がわからず、もしかして重い病気なのだろうかと不安がよぎったエドワードの額には汗が浮かんだ。
「奥様、少しお耳を貸してください」
看護師がひっそりとソフィーに耳打ちすると、ソフィーは一瞬はっとなり、大きく頷いた。
「...エドワード、赤ちゃんかも」
ソフィーの一言に、エドワードの目が見開く。
看護師が「ちょっと待っててね、医師を呼びますから」と言って部屋を出て行った。
その瞬間、エドワードがソフィーを抱きしめる。
「......エドワード、ありがとう」
「それはこっちの台詞だ」
二人は新たな幸せに喜びを分かち合った。
その後、医師に診てもらいソフィーの妊娠が確定するとエドワードは慌てふためいて、急ぎ帰りの馬車を手配した。
屋敷に着いたエドワードは、すぐさま妊婦に良いといわれるものを片っ端から手配して屋敷中が混乱したのだ。それからというもの、エドワードの妻への献身ぶりが領民の間でも話題となる。
二人が最愛のヴェルダーに会う、少し前のお話。




