ドキドキの報告
「はじめまして、エドワード・ヴィス・グレンブルクと申します」
エドワード様がお父様に深々と頭を下げる。いつもより緊張した彼が新鮮で、私まで緊張した。
ウェールズ伯爵家につくと、お父様が玄関で待っていた。お父様も一目見てわかるくらい緊張していた。
「ああ、よく来てくれたね。中で話そう」
お父様は緊張しつつも、いつもの優しい笑顔で私たちを迎えてくれた。
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応接間では、フィリップ兄様とアン様が私たちを出迎えてくれた。4人でフィリップ兄様とアン様の結婚式以来の再会を喜んだ。
「ソフィー!久しぶりね。お元気だった?」
アン様は皇帝陛下の妹君で、「帝国一の美女」と謳われるほど美しい人だ。本当は近隣国の王子の婚約者だったらしいが、学院でフィリップ兄様と出会い、大恋愛の末に結婚したのだ。
噂では、フィリップ兄様と幼馴染の皇帝陛下が二人の恋路を応援してくれたらしい。
「お義姉さま。お久しぶりです。学院生活は大変なこともありますが、なんとか」
「堅苦しくしないで。私、妹がずっとほしかったからソフィーみたいな可愛い子が妹になってくれてうれしいの」
アン様が私に抱きつく。甘いいい香りがした。
「エドワード、ソフィーのことをよろしくね」
アン様が横にいるエドワード様に言う。
「もちろんです」
彼がそう返事をしたときー
フィリップ兄様が膝から崩れ落ちて言った。
「僕は!!まだ!!認めてないからな!!」
涙を流しながら恨めしそうにエドワード様を睨む。
「ちょ、ちょっと...兄様......」
私は慌てて彼に謝る。
「ごめんなさい、兄はちょっとシスコンで...」
エドワード様は膝をついて兄様に言った。
「大事な妹さんとお付き合いをさせていただいております。責任は重々自覚しております。兄上にも認めていただけるよう努めます」
誠実な彼の態度にお兄様も私も思わずドキドキしてしまった。
相変わらず涙を流すお兄様を、アン様がそのまま別室に連れて行ってくれた。
「ごめんなさいね、この人の気持ちの整理がついたらまた話しましょう」
困り顔のアン様に連れられてお兄様は泣く泣く部屋を出て行った。
「...騒がしい兄でごめんなさい」
私が申し訳なさそうに言うと、彼が笑いながら言った。
「いや、大丈夫だ。君の家族は温かくていい家族だな」
私は思い切って聞いてみることにした。
「エドワード様のご家族って...」
そう言いかけたとき、応接間の扉が開いて
「おねえさまー!!!」と勢いよく弟のヘンリーが突進してきた。
「ヘンリー!元気だった?大きくなったわね!」
突然抱きつかれた私はよろけながらもヘンリーを抱きしめた。
ヘンリーの世話係をしているエマも遅れて入ってきた。
「お嬢様、お久しぶりでございます。ご立派になられて...エマはうれしゅうございます。エドワード様、はじめまして。ウェールズ家でヘンリー様のお世話係をしております、エマでございます」
エマは私たちを見て涙でうるうるしている。
「お嬢様、こんなに素敵なお婿様を連れてお帰りになるなんて...本当によかった。お幸せになってくださいね」
エマはエプロンの裾で必死に涙を拭いている。
「エマったら...気が早いわ。まだお父様とゆっくり話してもいないのに」
私は笑いながら彼女の肩にそっと手を当てた。
お母様が亡くなってからエマにはたくさんお世話になった。まだ幼いヘンリーもエマによく懐いていて、ついに専属のお世話係に任命されたのだ。
「そうだわ!旦那様をお呼びしてきますね」
エマはそう言って部屋を出た。
「おねえさま、この人だあれ?」
ヘンリーがエドワード様のことを不思議そうに見上げる。
エドワード様はしゃがんで、優しい声でヘンリーに話しかけた。
「エドワードだ。よろしくな。君のお姉さんの...恋人だ。ヘンリーくんは今いくつ?」
「6歳!おねえさまの『こいびと』?じゃあ、ラブラブなんだね!」
無邪気に笑うヘンリーに、私もエドワードも顔を赤らめた。
お父様が応接間に入ってきた。
「待たせてすまない」
ヘンリーはエマと一緒に外に遊びに出かけた。
私たちはお父様とソファに向かい合って座る。
「君たちの婚約のこと...祝福しよう。娘のことをよろしく頼む」
お父様はエドワード様に深々とお辞儀した。
私たちは顔を見合わせて、安心と喜びから笑い合った。
「娘さんのことを一番大切にします。よろしくお願いします」
エドワード様がお父様と握手をして抱き合う。
お父様も身長が高くて体つきがよい人だったけど、エドワード様の身体の大きさがよく分かった。
「ありがとう、お父様」
「お前の幸せを心から願っている」
お父様は目に涙を浮かべながら私のことも抱きしめた。




