8 ドラゴンクロウ
突如、何者かに襲われたハルトは、争うこともできず意識を失った。
序盤からとんでもない状況を突きつけられたハルトの行末は如何に!
「ところでお前さん、この辺じゃ見かけねえ風貌しているが、どっから来なさったね?」
そう問われたハルトは、咄嗟にデタラメな返事をした。
「……東から? いや西から……空から来たとか?」
「どうしたもんか……お前さん、記憶まで失うてしまったんかいな?」
いやいや、本当にわからんのですよ。
「記憶を失くしたわ訳ではないのですが……」
「じゃあお前さんよ、神の世界からやって来たとでも?」
「神の世界から?」
「儂の見ていた限り、お前さんはあの時あの場所にいきなり現れたんじゃ。なぁ、そうじゃろ?」
「あの瞬間を見ていたんですね」
「ああ。じゃがの、あの場所で儂が助けに行ったとしても、まず救い出すことはできんかったじゃろうよ」
「あいつらは一体何者なんですか?」
「お前さん、左手首に何か着けとったじゃろ?」
と言われて左手のスマホがないことに気づく。
「あっ、あれ? スマホがない! えっ、今日は何日ですか? あ、いや、あの日から何日経ってるんですか?」
ハルトはボーロに迫る。
「ん……あれからまるっと三日日は過ぎておる」
となると、この物語に残された猶予は二百八十七日、と言うことか……。
「三日も……スマホ、ええっと、俺の左腕についていたものを奪ったのは、誰なんですか?」
ボーロは即答した。
「盗賊じゃよ!」
「盗賊?」
「そうじゃ」
ハルトは拳をギュッと握りしめてボーロを睨むように視線を向けた。
「あれがないとまずいんです!」
「ほう、あれは大事な物だったんじゃな?」
「ええ、とっても。いち早く取り返さねば……」
ボーロは顔つきを強張らせ、こう忠告をした。
「だとしてもじゃ……悪いことは言わん。やめておくんじゃな!」
「え?」
その瞬間、ハルトは混乱した。
そんなハルトを諭すように、ボーロはその訳を語り出した。
「奴らはな、ただの盗賊じゃない。ドラゴンクロウと名乗る悪党だ。ドラゴンたちを操ることができる恐るべき輩なんじゃ。普段は王国の宝飾や食糧を狙っているのじゃが、気まぐれか、村の食糧、家畜や金目の物を奪いにこの辺りにも現れよる」
「じゃあなおのこと、奴ら懲らしめなきゃなりませんよね?」
「まぁ、それができるなら、儂らとて奴らの悪さを見逃してはおらんよ」
とボーロは「ドスン」と椅子に腰を下ろしたあと、やりきれない顔つきを見せた。
「どうであれ、俺は奴らからスマホを奪い返さなければならないんだ!」
と憤りながらボーロに気持ちをぶつけた。
「なぁ、ハルト殿よ、はやること勿れ。そんな身体で何ができようぞ。すべては怪我を治してからじゃ、そうじゃろ?」
「……まあ、そうかも知れませんが……」
そのあとボーロは、盗賊達が根城とする森林のこと、夜遅くになると天空の歪みから魔物が現れること、魔物を回避するためラクーに乗って明るいうちにこの村まで戻らなねばならないと言う厳しい条件を、ハルトに説いた。
「いずれにせよ、奴らからスマホを奪い返さなければここにいる意味はないんです。だから奪い返す選択肢があると言うのなら、それを選びますよ」
「どうしてもかね?」
「ええ、どうしてもです。スマホがなければ死すも同然だから」
ボーロは、一度下ろした重い腰を振り払うかのように両手で太腿を「ドン!」と押し付けながら、前のめりにゆっくりと立ち上がった。
「承知したぞ……ハルト殿。でもまずは身体が元に戻るまで、ここで休んで行きなされ!」
「かたじけない! ボーロさん!」
ご愛読いただきました皆様へ
この作品を楽しみにしてみえた読者の皆さま、大変お待たせしました。
いや、一年近く連載を止めてしまい誠に申し訳ございませんでした。
諸事情によりなかなか投稿のピッチを上げることはできないのですが、私自身がとても描きたかったハイファンタジーを、また一歩ずつ紡いでいきますので、応援をよろしくお願いいたします。
また現在連載しております「男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!」などの作品もご愛読いただけたら幸いです。
三ツ沢中町 より




