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30、妖《あや》とり

 落下する救急車は先程まで、2人が居た小さな滑り台やプロトケラトプスの石像を押し潰す。

 

「モルタ!? 落ちるぅう!」


「なら、ワシの胸でも尻でもよい。どこかしがみつけ!」


 女子の身体に触れる自由を与えられるなど、夢のような特権だが、恐怖でその恵まれた状況に感謝はできない。


 モルタに身を任せ、クロトは宙を舞っている間、真向かいに青空を舞う人影を目で捉えた。

 人影のはためくスカートや袖は、まるで炎をまとっている印象だった。


 真っ赤なドレスに身を包んだディキマは、距離が離れている為、フランス人形ほどの大きさに見えるが、離れていても、鬼の形相でこちらを睨むのが見て取れた。


 鬼に睨まれたクロトは「ひぃ!?」と、なんとも情けない声をあげた。

 

 しかし、そんな細かいことを気にする余裕は、危難のクロトにはない。


 モルタはクロトを抱えたまま一足飛びで、開けた交差点値へ移動すると、影が交差点を覆った。

 見上げると、1台の消防車が真下に顔を向けながら落下する。


 モルタの髪が風でなびくと、クロトの頬を彼女の髪がなでた。

 そして髪が輝くと、再び青く染まり腰まで伸びた美女の髪に、単線の地平線が浮かぶ。


 蒼天の女神モルタは、封じていた真理の力を解き放つのだった。


 彼女が住宅から伸びるパース線を掴み、青空へ爪痕を刻むように引っ張る。


 ゴムのように伸ばされる住宅もさることながら、爪痕のような線に落下する、消防車が当たると、消防車はまるで、シュレッダーにかけられたかのようにスライスされ、無数の赤い帯となって2人の頭上から降り注いだ。


 危険を遠ざけたと思いきや、足元の影が大きく広がり、交差点を包む。

 今度は空を埋め尽くす程の、何台もの救急車やパトカー、消防車が落下してくる。


 クロトは見上げると慌てふためき、抱えられたモルタの腕で暴れる。


「モモモ、モルタァー!? にげ、逃げてぇぇええ!!」


「えぇい、女々しい! 暴れるでない!」

 

 モルタは駄々っ子のようなクロトを叱り付けると、疾風よりも早く、その場を立ち去り回避する。

 上空から地面に叩きつけられた、いくつもの車は、正面を潰し豪雨のような騒音を周囲に響かせた。


 無表情でありながら、モルタは弾みのある言い回しをする。


「あやつめ、ワシを倒そうと息巻いておる」


 宙を舞う2人の横を風圧がかすめる。

 クロトが眼下に広がる、地図のような街へ目を凝らすと、歩道に並べられた標識が跳ね上がり、矢のように向かって来る。


 蒼天の乙女は、海中から海面を目指して登る、イルカのように泳ぎながら、飛び交う標識の矢を華麗にかわす。


 が、モルタは攻撃をかわすことに気を取られ、脇が甘くなり、クロトにかかる蜘蛛の巣に気付かなかった。


「モル……だあああぁぁぁーー!!?」


「いかん!」


 クロトは蒼天の乙女から、すり抜けた。

 引き寄せられる彼の視界に、燃え盛るドレスをまとった、ディキマの顔が近づく。

 彼女は笑みを浮かべ、言葉を投げかける。


「久しぶりね、クロト君? あんな青くさい女より、私と遊びましょ?」


 クロトは空中でもがくが、異能の力から逃げることは皆無。


 カエルの舌に巻き取られた虫のように、ディキマの線に引き寄せられる少年を、モルタは手放しで見送ることはしない。


 蒼天のモルタも追うように手をかざし、クロトを捕縛する。

 クロトは、ディキマの魔の手から逃れ、今度はモルタへと引き寄せられた。

 

 少年の絶叫だけが、ただただこだまする。


 真紅のディキマは、手中に収めるはずだった戦利品を奪われ、苦虫噛むと、すかさず手をかざし取り戻そうとした。


 2人の異次元人が放つ線に捕縛され、綱引きをする蒼天と真紅の間で、クロトはもてあそばれる。


「またかぁぁぁあああ!?」


 捕縛されるクロトと女神達は、そのまま地上へと降りていった。

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