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29、生命線、ラインの黄金

 モルタの沈着ぶりは、揺らぐことがない。


「どのみち、ディキマとはやりあわなければならん」


 クロトは、彼女の落ち着きぶりに対し、急かすように語気を強める。


「どうやって倒すのさ?」


 モルタの胸から正面に向けて、一筋からなる金色の線が伸びた。


 やぶから鳥が羽ばたき出て、驚くようにクロトはのけぞる。


「うわぁ!?」


「この金の弦は、ワシらドミネーターの命そのもの。文字通り、”生命線”じゃ」


 生命の輝きを宿した黄金の糸に、少年は見とれていると、脳細胞が漏電したかのようにシビれを感じ、過去の断片がフラッシュバックする。


「僕、これ見たよ! 事故に合った時、この金色の線をたぐっていったら、天使に会って、助かったんだ……」


「主とノーナは、この生命線で繋がっておる。ノーナが放った生命線により、死の縁から引き上げられたのじゃ」


 合点がいくと、クロトは自分が、この世に存在している奇跡に感謝した。

 そして、すぐに彼女の言わんとすることを、汲み取る。


「その生命線がディキマにもあって、切れば倒せるってこと?」


「端的に言えばそうじゃ。じゃが……」


 モルタの胸から伸びる、金色の線は消え、彼女が手を観音像のように手をすくい上げると、手の平から空へ向けて、金色の線が放たれる。

手から線が消えると、今度は彼女の額から、天へと一直線に伸びた。


 変わる変わる放たれる金色の線に、クロトは唖然としていると、女神は丁寧に説明する。


「命そのものとする生命線を、そう容易たやすく、敵にさらすわけにもゆかん。ドミネーターは、これをあらゆる所から出すことも出来れば、隠すことも出来る」


「そんな!? どうするのさ?」


「生命線の発現は、力を極限まで高めた時に隠しきれなくなる」


「つまり、弱点と一撃必殺が同時に出る、てことか」


「さよう」  


 異次元のことや難しい話は解らないが、それが危険な賭けだというのは、少年のクロトにも理解出来た。


 仕留められなければ、返りうちは必須。


 憔悴しょうすいする彼の鼓膜を、鳴り響く救急車のサイレンが揺さぶったが、聞き止めることなく受け流すのだった。


 その間延びしたサイレンの音の間隔が短くなり、救急車が近づいて来るのが解る。

 サイレンはひっきりなしに聞こえる為、気に止めることはないが、今に関しては別。


 サイレンの違和感は、憔悴する少年の気を引いた。


 それは、公園の側を通る道路から聞こえて来るものではなく、まるで頭から浴びせるように音が近づいて来る。  


 ついさっきまで、道を横切る緊急車両は赤灯は、回転灯籠のように辺りを真っ赤に染めていたが、今は赤い光が繰り返し地面を這いずっていた。


 困惑するクロトとは対象的に、相変わらず起伏の無いモルタは呟く。


「…………来おったか」


 少年が音の聞こえる頭上に目を向けると、木々の間から、赤い明滅が視界に入った。  

 点火された爆竹のような、破裂音を鳴らし、木々は落下する救急車に、なぎ倒されていく。


 木々の破裂音は、大気を激しく振動させ、クロトの鼓膜や腹筋を叩きつけた。


 まるで立体映像のような迫りくる臨場感に、クロトは呆気に取られるが、それは物体として、実際に迫って来る。


 死の恐怖を感じ取った時には、ボロボロの救急車が視界を、めいいっぱい覆う。

 

 そんな凍りつくクロトを、モルタは脇に抱えると、イナゴのように跳躍し、公園を抜け出た。

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