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4-3-7 神託の中身

駅近くの小さなカフェの一角で、小桜と恵麻は向かい合って座っていた。


店内はほどよい賑わいに包まれ、二人の話し声も周囲に紛れる程度の大きさに収まっている。智絵里たちとの話し合いを終えたばかりだったが、小桜には、どうしても恵麻と二人で確認しておきたいことがあった。


「先ほどの話を整理すると、重要なキーワードがいくつかありましたよね」


小桜はテーブルに置かれたカフェラテの縁へ指先を添えながら、静かに切り出した。


「『未来の破滅』、『神託』、『暴走の制御』……。どれも気になります。でも、私が一番引っかかっているのは『神託』の中身──なぜ聖奈さんがゼノンを狙ったのか、その理由なんです」


恵麻は小さく頷きながらも、眉を寄せた。


「確かに理由ははっきりしてないね。でも、ゼノンに怪しいところなんて無いはずだよ。データ捏造の一件からようやく立ち直って、みんな必死に会社を立て直してきた。社内も厳しい規則で動いているし、何か悪いことに関わってるなんて、とても思えない」


「私も、ゼノンが悪いとは思っていません」


小桜は穏やかに首を振った。


「でも、グラビティウムも私も、それだけは見過ごせないという結論になりました。聖奈さんがゼノンを標的にした以上、そこには私たちの知らない理由があるはずなんです」


「でも、どうしてそんなことを……?」


「それを考えていて、一つだけ気になったことがあります」


小桜は真剣な表情で続けた。


「麗蘭さんの話にあった『暴走の制御』です。聖奈さんが暴走した魔導AIを調整したと言っていましたよね」


「……うん」


「自分で魔導AIを扱ってみて分かったんですが、あれを制御するには論理魔法の知識が欠かせません。魔法使いでもない人に、簡単にできることではないんです」


恵麻は何も言わず、続きを待った。


「ここからは仮説になりますが……」


小桜は一度言葉を区切る。


「もし聖奈さんが、私の知らない方法で魔導AIを制御しているのだとしたら? その力は、魔導AIの根幹に関わる何かではないでしょうか」


「魔導AIの……根幹?」


「ええ。それは異世界にある十二の伝説のデバイスです。もし、それに類する存在の力を借りているのだとしたら、魔導AIを異常なほど精密に制御できることにも説明がつきます」


小桜は小さく息をついた。


「そして、その存在が『未来の破滅』をもたらすつもりなら……それがゼノンを狙った理由に繋がるかもしれません。もちろん、確証はありませんが」


恵麻は腕を組み、しばらく考え込んだ。


「でも、そのデバイスって異世界にあるんだよね?」


核心を突く問いに、小桜は苦笑する。


「その通りです。私にも分からないんです。どうやってこの世界に関わっているのか、その方法が説明できません」


恵麻は静かに頷いた。


「それでも、ゼノンが関わっているとは思えないな……。私は内部のことを知ってるし、もし怪しい動きがあれば気づくと思う」


「だからこそ、一度この目で確かめたいんです」


小桜の声は穏やかだったが、その決意は揺るがなかった。


「ゼノンの内部を調べる必要があります」


恵麻は思わず身を乗り出した。


「それは無理だよ! ゼノンは関係者以外は絶対に入れないし、私が許可を取ろうとしても上層部が認めるはずない。それに、情報漏洩防止のため、外部の物は基本的に持ち込みもできないんだから……」


「分かっています」


小桜は落ち着いた口調で答えた。


「でも、大丈夫です。方法なら考えてあります」


ふっと微笑み、少し照れくさそうに続ける。


「こう見えて私、昔は結構すごい魔法使いだったんです」


「えっ……?」


驚く恵麻を見つめ、小桜は静かに笑った。


「もちろん、恵麻さんにもゼノンにも、ご迷惑をおかけするつもりはありません」


その真剣な眼差しを見つめ返し、恵麻は少し考えてから頷く。


「……分かった。でも、本当に無茶だけはしないでね」


「はい」


小桜は安心させるように微笑み、カフェラテを一口飲んだ。


カップを置くと、何かを思い出したように恵麻へ視線を向ける。


「それから……もう一つだけ、お願いがあるんです」


恵麻はその表情を見るなり、小さく笑った。


「……杏子には内緒、かな?」


恵麻が少しだけいたずらっぽく笑う。


小桜は一瞬きょとんと目を丸くしたが、すぐに照れたように笑みをこぼした。


「そうです。やっぱり分かってしまいますか」


「前にも同じお願いをされたからね」


恵麻は肩をすくめながら笑う。


「杏子が首を突っ込むと、話がややこしくなるって」


「はい。その通りです」


小桜もつられるように笑い、小さく頷いた。


「姉には、いずれちゃんと話します。でも……今はまだ、その時じゃないんです」


「分かってる。今日のことは杏子には話さないよ」


その言葉に、小桜はほっと息をつき、ようやく肩の力を抜いた。


「ありがとうございます。本当に助かります」


恵麻はそんな小桜を見て、安心させるように穏やかに微笑んだ。


ブクマで小桜たちの応援をお願いします!

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