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4-3-1 エンディングの後

第三部エンディング後の回想から始まります。

闇の女王の脅威が去り、王国はようやく長い戦乱から解放されつつあった。新たな女王としてサーラゼル・ヴェリルライトが戴冠し、人々は未来への希望を胸に新しい時代を歩み始めている。


その姿を静かに見届けたミーナもまた、一つの決意を胸に秘めていた。祝福と歓喜に包まれた王都とは対照的に、彼女の視線は遥か遠く、その先に待つまだ見ぬ未来を見据えていた。


王都が戴冠を祝う熱気に包まれる中、ミーナは誰にも知られぬよう旅支度を整えていた。目的はただ一つ──失踪したルシウス皇帝と、その側近ロキスヴェインの足取りを追うことだった。


帝国はすでに崩壊している。すぐに脅威となることはないとミーナも理解していた。それでも、彼らが姿を消したままで終わるとは、どうしても思えなかった。


いずれ再び動き出すのであれば、その兆しを見逃すわけにはいかない。その思いだけが、彼女を未知の旅へと駆り立てていた。


サーラたちには何も告げないまま、ミーナはまだ夜の名残が残る早朝、王都を後にしようとする。


その時、不意に後ろから軽やかな足音が聞こえてきた。


振り返ると、肩で息をしながら立っていたのはエレインだった。急いで追い掛けてきたのだろう。それでも彼女の瞳だけは真っ直ぐにミーナを見つめていた。


「本当に……一人で行くつもりなの?」


震える声の奥には、不安と、それでも彼女の決意を尊重したいという複雑な想いが滲んでいた。


ミーナは一瞬だけ言葉を探すように口を閉ざし、やがて穏やかに頷いた。


「うん。この旅に当てなんてないし、いつ戻れるかもわからない。だから、誰かを連れて行くことはできない」


その背には、旅の唯一の供として選んだ伝説のデバイス──《獅子の剣》が静かに輝いている。


エレインは唇を噛み締めると、意を決したように胸元から小さなイヤリング型デバイスを取り出した。


「これ……『エーテルサイン』よ。どこにいても私たちと話せるようにしておいて。せめて……何かあったら連絡して」


差し出されたそれを見つめたミーナは、小さく微笑み、静かに首を横へ振った。


「ありがとう。でも、これは受け取れない」


思いもよらない返答に、エレインは目を見開く。


ミーナは少しだけ照れくさそうにはにかみ、それでも優しい笑みを崩さなかった。


「話したら、きっと会いたくなってしまう。そうしたら……私の心が折れてしまうわ」


その一言で、エレインはもう何も言えなくなった。


引き止めたい。その気持ちは今も変わらない。それでも、目の前に立つミーナの覚悟が揺るがないことだけは痛いほど伝わってくる。


だからこそ、言葉を飲み込み、ただ静かにその姿を見つめ続けた。


やがて東の空から朝日が昇り始め、二人の足元に長い影を落としていく。


ミーナは最後にもう一度だけ微笑み、静かに踵を返した。


振り返ることはない。その背中には迷いも躊躇もなく、ただ果たすべき使命へ向かう強い意志だけが宿っていた。


エレインは、その姿が朝靄の向こうへ消えていくまで、ただ立ち尽くして見送っていた。


吹き抜ける風が髪を揺らし、祝祭を迎えた王都の喧騒が遠くから微かに聞こえてくる。


「無事でいてね……必ず」


誰にも届かないほど小さな祈りは風に乗り、旅立つ友の背中へと静かに託された。


こうしてミーナは、新たな旅路へと歩みを進める。


その道がどこへ続くのかは、まだ彼女自身にも分からない。それでも胸には燃えるような使命感と、王国に残してきた仲間たちへの変わることのない想いが、静かに、そして力強く息づいていた。

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