4-2-27 未来の破滅
オラクルコード幹部の溜まり場──カフェ「アークロッジ」。
木目調のインテリアが穏やかな温もりを醸し出し、落ち着いた音楽が静かに流れている。
その心地よい空気とは裏腹に、最奥のテーブル席だけは重苦しい緊張に包まれていた。
OracleLionこと聖奈は、スマホの画面を見つめたまま静かに息を吐く。
向かいに座るShadeSheepこと愛蓮は、不安げに眉を寄せた。
「ArrowVioletもAquaLilyも……全然連絡がつきません」
その報告に、聖奈はしばらく黙り込んだあと、小さく答えた。
「……そう」
短い一言だったが、その声音には諦めとも困惑ともつかない重さが滲んでいた。
愛蓮はためらいながら続ける。
「特に菫さんは、一度も既読がつかなくて……。何かあったんでしょうか?」
聖奈はスマホを伏せ、静かに視線を落とした。
「仕方ないわ。あの子たちは、『未来の破滅』が何を意味するのか、本当には知らないんだから」
愛蓮は思わず目を見開く。
「未来の……破滅?」
「そうよ」
聖奈は遠くを見るように目を細めた。
「菫も麗蘭も、『未来の破滅』という言葉は知っていても、その先に何があるのかまでは知らない。知っていたなら……あんな無茶はしなかったでしょうね」
愛蓮は少し考え込むように視線を伏せる。
「それなら……最初から話してあげればよかったんじゃないですか?」
その言葉に、聖奈はかすかに苦笑した。
「話したところで信じてもらえないわ。……私だって、最初は信じられなかったもの」
その返答に、愛蓮は小さく息を飲む。
そして、ゆっくりと顔を上げ、真っ直ぐに聖奈を見つめた。
「……でも、私は信じます」
一拍置いて、静かに言葉を重ねる。
「たとえ他の誰が信じなくても」
その瞳に迷いはなかった。
疑いも打算もなく、ただ聖奈の言葉を受け止めようとする強い意志だけが宿っている。
静寂が二人の間を流れる。
やがて聖奈は、ふっと表情を和らげた。
「……あなたにだけは、話してみようかしら」
少しだけ視線を落とし、小さく笑う。
「これが、どれほど信じ難い話だったとしても」
そう呟いた聖奈は、ゆっくりとスマホを閉じた。
長い間、自分一人だけで抱え続けてきた『未来の破滅』。
その秘密を、初めて誰かと分かち合おうとしていた。
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