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4-2-17 オラクルコード

深夜。メンバー専用の仮想空間には、オラクルコードの幹部たちが静かに集結していた。


ログインするたびに姿を変える背景には、満天の星空が広がっている。それはリーダー・OracleLionが好んで設定している景色だった。


そこに集う者たちは皆、現実の素性を隠すためのアバター姿だ。年齢も性別も、本名すら互いに明かされることはない。ただ、それでも彼らは同じ目的を信じる仲間として、この場所に集っていた。


星々が瞬く静寂の空間には、OracleLionを中心に、AquaLily、ShadeSheep、ArrowVioletの三人が揃っている。


全員の接続を確認すると、OracleLionがゆっくりと口を開いた。


「信頼できる仲間たち。よく集まってくれた」


穏やかな声だった。しかし、その一言だけで場の空気は自然と引き締まる。


「新たな神託が下った」


その言葉に、雑談めいた空気は一瞬で消えた。


OracleLionは全員を見渡しながら静かに続ける。


「また一人、未来の破滅へ至る鍵となる人物が示された」


AquaLilyが肩をすくめて笑う。


「はいはい。いつもの『未来を救う使命』ってやつね」


「茶化すな」


ShadeSheepが静かにたしなめた。


「OracleLionは、意味のない話を私たちにすることはない」


「分かってるって。ちゃんと聞くよ」


AquaLilyは両手を上げて降参するように笑う。


「でも、毎回この入りだから、ついさ」


「雑談はそこまでだ」


ArrowVioletが短く割って入る。


「本題を」


OracleLionは一度だけ目を閉じる。


「魔導AIが示した名は──ゼノンの新CEO、ジェレミー・ハーウィックだ」


その名が告げられた瞬間、仮想空間は静まり返った。


ゼノン・サイエンス。今まさに改革企業として世間から注目を集めている存在。その新CEOが、神託によって未来を左右する人物として示されたのである。


最初に口を開いたのはAquaLilyだった。


「ゼノンのCEO? 最近評判いい人じゃなかった?」


OracleLionは静かに頷く。


「私も現在の評価は把握している。しかし神託は、その先にある未来を示していた」


「未来を……」


ShadeSheepが低く繰り返す。


「神託によれば、彼は技術を人々を縛る力へと変え、世界の均衡を大きく崩す存在となる可能性がある」


ArrowVioletは少し考え込むように腕を組んだ。


「神託に疑いの余地はない」


その声には迷いはない。


「だが、どこで未来が分岐するのかは、まだ見えていないということだな」


「その通りだ」


OracleLionは静かに答えた。


「理由までは示されていない。だが、神託が名を告げた以上、必ず意味がある」


その確信に、誰も異論を挟まない。


彼らにとって、OracleLionは幾度も神託によって危機を回避し、自分たちを導いてきた存在だった。その言葉を疑う理由は、誰にもなかった。


「じゃあ、どう動く?」


真っ先に口を開いたのはShadeSheepだった。


「ただ警戒しているだけじゃ、未来は変えられない」


その声音には焦りよりも、OracleLionなら次の道を示してくれるという確信があった。


OracleLionは静かに頷く。


「まずは情報収集だ。新CEOがどんな人物なのかを知る。そして、何を目指しているのかを見極める。それが第一歩になる」


「結局そこからなんだ」


AquaLilyが肩をすくめて笑う。


「でもまあ、いきなり突撃なんてしたら私たちの負けだもんね」


ArrowVioletがすぐに現実的な疑問を投げる。


「具体的には? ゼノンはセキュリティが厳重だ。内部へ踏み込む手段は限られている」


「直接侵入する必要はない」


OracleLionは即座に答えた。


「まずは外から包囲する。SNS、公開情報、過去の発言、人間関係──彼の周囲に残された情報を積み重ねれば、おのずと輪郭は見えてくる」


「じゃあ私、SNS担当ね」


AquaLilyが軽く手を挙げる。


「フォロワーとか交流先とか、掘れば意外とボロが出るかもしれないし」


「私は経歴を追う」


ArrowVioletも迷いなく続けた。


「過去の企業や研究歴、人脈も洗ってみる。何か違和感があればそこを掘り下げよう」


ShadeSheepは小さく息を吸い、OracleLionへ視線を向ける。


「……私は?」


OracleLionは迷うことなく答えた。


「SNS全体の意見傾向を分析してほしい。ゼノンに対する世論、とくにジェレミー・ハーウィックへの評価や反応だ。世論の流れが分かれば、彼が社会に与えている影響も見えてくる」


ShadeSheepは静かに頷いた。


「了解。関連ハッシュタグや投稿履歴を追跡する。好意的な反応だけじゃなく、批判や違和感を書いている人も拾ってみる」


OracleLionは満足そうに微笑む。


「十分だ」


その笑みには、不思議と人を安心させる力があった。


「全員の情報が揃えば、神託の意味も見えてくるだろう」


OracleLionは星空を見上げるように顔を上げる。


「未来は、まだ変えられる」


その一言に、三人は迷いなく頷いた。


誰一人として、自分たちが正義であることを疑ってはいない。


幹部たちはそれぞれの役目を胸に、静かにログアウトしていく。


ジェレミー・ハーウィック──。


神託が示したその名の先に、どんな未来が待っているのか。


オラクルコードは、その答えを求めて動き始めた。


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