表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
41/79

4-2-15 秘密結社の噂

杏子はある日、自宅のリビングでいつものように地元のニュース番組を眺めていた。


その日の特集は地方選挙。地元ではほとんど無名だった新人議員が、予想を覆して当選したことが大きく取り上げられていた。


解説者たちは「地元密着の堅実な活動が有権者に支持された」と口を揃えて分析している。


だが、その説明は杏子にはどこか腑に落ちなかった。


「最近、こういうニュース多くない?」


テレビを消し、ソファへ身を預けながら独り言のようにつぶやく。


「なんていうか……やたら同じ方向の意見ばっかり流れてくる感じがするんだよね」


その声に、隣で雑誌を読んでいた従姉妹の美夜子が顔を上げた。


「どういう意味?」


大型連休で実家へ帰る途中、杏子の家へ立ち寄って一泊する予定だった美夜子は、地方誌でライターとして働いている。取材で町を歩き回ることも多く、噂話や地域の空気には人一倍敏感だった。


「ニュースとかSNSとかさ。急に同じ話題ばっかり盛り上がることってあるでしょ? 誰かが空気を作ってるみたいで、ちょっと気持ち悪いなって」


美夜子は雑誌を閉じ、小さく頷いた。


「それ、私もちょっと思ってた。特にあの議員さんね。本当に無名だったのに、急にSNSで『正義の味方』みたいに持ち上げられ始めたじゃない」


杏子は身を乗り出す。


「やっぱり?」


「もちろん、本当に支持が広がっただけかもしれない。でも取材先では、『誰かが裏で仕掛けてるんじゃないか』なんて話も聞いたわ」


「裏で?」


「例えば、AIを使って話題を広げるとか、世論を誘導するとか。今なら技術的には珍しい話じゃないしね」


「AI?」


杏子は少し拍子抜けしたように笑う。


「そんなの今どき普通でしょ?」


「そうね。AIそのものは珍しくないわ。でも、それを使って世論を操る人がいるとしたら、少し話は変わってくる」


美夜子は肩をすくめた。


「フェイクニュースを流したり、特定の候補だけを目立たせたり。そういう噂は昔からあるし」


「まあ、ありそうな話ではあるね」


杏子はそれ以上興味を示さず、再びソファへ寝転がった。


すると美夜子は少しだけ声を潜める。


「もっとも、これは本当に都市伝説なんだけど」


「今度は何?」


「そういう世論操作を専門にやってる連中がいる、なんて話もあるのよ」


杏子は思わず吹き出した。


「秘密結社ってやつ?」


「そうそう」


美夜子も苦笑する。


その時だった。


隣で静かに本を読んでいた小桜の手が止まる。


「へぇ……AIを使う秘密結社なんているんだ」


小桜は目を輝かせた。


「その組織、何て名前なの?」


美夜子は少し考えてから答えた。


「確か、オラクル……コードだったかな」


「もっと詳しく聞かせて」


急に身を乗り出した小桜へ、美夜子は少し戸惑ったように笑った。


「本当に噂話よ? SNSの裏で暗躍してるグループで、AI技術を使って世論を操作してるとか、気に入らない相手を社会から消してるとか……そんな都市伝説」


「都市伝説でも、火のないところに煙は立たないって言うじゃない」


小桜は興味を隠そうともせず、さらに問い掛ける。


一方の杏子は呆れたように立ち上がった。


「はいはい、好きに盛り上がって」


嬉しそうに話を聞く小桜を一瞥し、小さく笑う。


「都市伝説なんて聞けば、すぐその気になるんだから」


それ以上気に留めることもなく、軽く手を振って自室へ戻っていった。


残された小桜と美夜子は、その後もしばらくリビングで話を続ける。


都市伝説として語られた『オラクルコード』。


そして、その背後にある”AIで人を操る”という噂話。それは笑い飛ばすには、どこか現実味を帯びすぎていた。

ブクマで小桜たちの応援をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ