第6話 ループ6〜10回目
6回目。7回目。8回目。
颯太は繰り返した。
毎回、10時29分21秒に戻る。空が割れる。22秒後に詩が死ぬ。死に戻りが発動する。また戻る。
ループのたびに颯太は少しずつ変わっていった。
STATUS(ループ8回目)
Lv3
HP:8
ATK:5
DEF:4
SPD:6
スキル:なし
経験値:44/200
(Lv3。少しだけ速くなった。でも——まだ足りない)
ループ8回目。颯太は試した。Lv3のSPD:6で、詩の前に立てるか。
立てた。
でも——魔物の腕は颯太を払い、そのまま詩に届いた。Lv3程度では、数値の差が縮まっていない。颯太のATK:5では魔物に傷ひとつつけられない。壁になろうとしても、紙が少し厚くなっただけだ。
それでも、颯太は気づいていた。
確認していた。毎回、必ず、同じ時刻を。
(10:29:22——空が割れる。10:29:44——詩が死ぬ。その差、22秒)
◆
9回目のループで、颯太は動くのをやめた。
座席に座ったまま、UIのログを開いた。5回目に始めたメモが、8回分のデータで埋まっていた。
【LOG】
ループ2回目:詩の死亡時刻 10:29:44
ループ3回目:詩の死亡時刻 10:29:44
ループ4回目:詩の死亡時刻 10:29:44
ループ5回目:詩の死亡時刻 10:29:44
ループ6回目:詩の死亡時刻 10:29:44
ループ7回目:詩の死亡時刻 10:29:44
ループ8回目:詩の死亡時刻 10:29:44
→ 空が割れた時刻(10:29:22)との差:常に22秒
(7回とも、10:29:44。一秒もずれない。これは偶然じゃない)
颯太は拳を握った。
(22秒。なんで22なんだ)
頭の中で数字が並んだ。
(空が割れた時刻:10:29:22——この「22」。詩が死ぬまでの秒数:22秒。そして——)
颯太は自分の誕生日を思い出した。
(ボクの誕生日:12月22日。座席番号:22A。詩の座席:22B)
偶然が多すぎる。
(22。22。22。全部22だ。なぜだ。誰が——何が、この数字を仕掛けている)
答えはない。でも颯太の中で、確信が芽生えた。
(これは偶然じゃない。設計されている。ボクたちは誰かが組んだ何かの中にいる)
その瞬間、魔物の腕が窓を砕いた。
颯太は動かなかった。今回は守ろうとするループではない。データを取るループだ。
詩の声が聞こえた。
「颯太く——」
止まった。
颯太は目を閉じた。手のひらに爪が食い込んだ。拳を握ったまま、白くなるのを待った。
(慣れない。9回目でも、まだ慣れない。それでいい。慣れてはいけない)
◆
10回目。
颯太はUIを開いた。
STATUS
Lv4
HP:12
ATK:7
DEF:6
SPD:9
スキル:なし
経験値:71/300
(Lv4。SPD9。まだ魔物には届かない。でも確実に上がっている)
颯太には今、二つの目標がある。
一つは、レベルを上げて詩を守れる強さを手に入れること。
もう一つは——「22」の意味を解明すること。
詩を見た。今日も詩は文庫本を閉じて、窓の外の雲を見ていた。同じ景色。同じ横顔。何十回目の詩の横顔だろう。颯太には数えられなかった。
「沖縄、楽しみだね」
詩が言った。
1話目と同じセリフだ。颯太は知っている。この後詩は窓の外を見る。少し首を傾ける。それから颯太の方を向いて——
「颯太くんは、沖縄で何したい?」
颯太は少し驚いた。
(これは——初めてのセリフだ)
詩が同じことをすると思っていた。でも違った。詩は今日、颯太に向かって話しかけてきた。
颯太はゆっくりと答えた。
「……キミのそばにいたい」
言ってから、また直接的すぎたと思った。詩が目を丸くした。それからまた、あの首を傾ける笑い方をした。
「なにそれ。一緒に来るの、当たり前じゃん」
「……そうだな」
(当たり前じゃない。ボクにとっては当たり前じゃない。キミがそこにいることが——ただそれだけのことが、ボクには何十回分の奇跡なんだ)
空が割れる一秒前。颯太はUIのメモに書き足した。
【MEMO(更新)】
問い①:なぜ詩が最初に狙われるのか
問い②:なぜ「22秒」なのか
問い③:「22」という数字は何を意味するのか
→ これらは同じ答えに繋がっているはずだ
颯太は確信していた。
詩が毎回最初に死ぬ理由。22秒という数字。自分の誕生日と座席番号に刻まれた22。
これは全部、繋がっている。
(答えを見つけるまで、ボクは何度でも戻ってくる)
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
「22。22。22。全部22だ」——颯太が気づき始めました。この数字の意味は、やがて全てを繋ぎます。
次話もよろしくお願いします!




