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公爵邸で話し合い 2

少し短めです。

「先ほどレイラも言ったように彼女とは街で偶然会っただけです。一応プレゼントと一緒に送った手紙にもその旨を書いていたのですが、読まれていませんか?」

「え?」


手紙?手紙って・・・・私がプレゼントと一緒に床に投げつけたやつ?あの時は絶望のどん底だったから手紙を開く気にもなれなかったのよね。っていうか、何で今回に限ってちゃんと説明してるのよ。ちゃんと確認しなかった私が悪いみたいじゃない。いや、実際そうなんだけど。


でもあの状況で例え手紙を読んだとして信じられたかどうかは分からない。レイラ様がアレックス様のことを何とも思ってないことが伝わってきた今だからこそ信じられるけど、手紙で街で偶然~とか書かれていても『そんなの嘘でしょ!』となった可能性の方が高い。そのくらい私の中でのアレックス様の信用は地に堕ちていたから。


「その様子だと見ていないようですね。あなたを救出した時カフェのことを聞いてきたのでおかしいなとは思っていたのです」

「うぅ・・・・。すみません。色々あって読んでいませんでした」

「いえ、そもそも誤解されるようなことをしてきた私が悪いのです。レイラとのこと黙っていて本当にすみませんでした」


申し訳なさそうに頭を下げるアレックス様。レイラ様に『黙っているなんてあり得ない』とはっきり言われたのが効いたみたいだ。どんなに事情があろうとも私が社交界でお飾りの公爵夫人だと噂された事実は消えない。そこをアレックス様にもちゃんと分かってもらわないと。


「アレックス様、貴族の選別とか私が妬まれないようにするためとか事情がおありだったのは分かります。私自身それで恩恵を受けたのも確かです」


そう、アレックス様に振り向いてもらえない可哀そうな婚約者だったからこそイライザ様たちみたいなお友達もできた。彼女たちはアレックス様が私を助けに来たことを心から喜んでいるようだったし、良い方たちだと思う。それにナターシャ様からもいじめられることは無かった。普通の婚約者としていたなら間違いなく標的にされていただろうから。私は割と顔に出やすいタイプだから演技だとばれないように黙っておいたのも分かる。

頭では、理屈では分かるけど。


下げていた顔をあげて私を見るアレックス様の顔をしっかりと見つめて訴えかけた。


「でも、私の気持ちは考えてくださいましたか?アレックス様から求婚してきたのにいざ婚約すると別に愛人がいたなんて。しかもそのせいで社交界で笑いものにまでなって、とても辛かったんです。逃げ出したくなるくらいに」


実際には逃げ出したいというより全力で逃げようとして色々やらかしたけど。そこは黙っておくことにした。


「それは・・・・・」


お願い。考えていたと言って。私が苦しむことは分かっていたけど、作戦のため、私の為にどうしても必要だったと言って。苦しんでいるのを見て本当は打ち明けたかったけど、どうしてもできなかったって。アレックス様が私にしたことは変わらないけど、それでも人の気持ちを考えられる人ならまだ信じられる。信じてみようと思う。


ドキドキという心臓の鼓動を感じながらアレックス様の答えを待つ。するとアレックス様がゆっくりと口を開いた。


「正直、そこまで考えていませんでした。この件がうまくいけばレイラもバカ王子から逃げられるし私も社交界での付き合いがしやすくなる。何よりあなたを令嬢たちの嫉妬から守ることができる。だから黙っておくことが一番合理的だと信じて疑わなかった。それであなたが苦しい、辛い思いをするかもしれないということは頭にありませんでした」


その言葉で私の心がサーッと冷めていくのが分かった。ああ、この人は私の心に寄り添ってはくれない。私が苦しんでいるのも察してくれることは無いんだ。


疑惑が解消されてアレックス様との未来を考え始めていた私にとってこの事実はとても辛いものだった。

私の脳裏に前世の母が『お父さんは私の気持ちを分かってくれない』と泣いていた姿がよみがえった。その時私はこんなダメな人と結婚しなければよかったのにと冷めた目で見ていたが、このままアレックス様と結婚すると私も前世の母と同じ道をたどるような気がした。


アレックス様は私の気持ちを分かってくれないと涙を流す日々。想像しただけでゾッとするわ。


「そうですか・・・・・。アレックス様、実は父がアレックス様との婚約を解消しろと言っております」

「え?モリスヴェイン伯爵が、ですか?」

「ええ。私だけ事情を知らされていなかったことをとても怒っています。実際に破棄するかどうかは私が決めていいと言われましたが、今の話を聞いて正直迷っています」

「あなたも破棄したい、ということですか?」

「私の気持ちを考えてくださらない方と結婚はできません。政略結婚なら仕方ないのかもしれませんが、この婚約はそうではないでしょう?それなのに私の気持ちを無視して無理やり話を進める方を信用することはできません」

「それは・・・・」

「今日はこれで失礼させていただきます」


言いたいことだけを言い切って私は席を立った。突然切り出された婚約破棄にショックを受けてアレックス様はまだ茫然としている。そんなアレックス様を尻目に私はさっさと部屋を出た。


屋敷を出て馬車に乗り込もうとした時、またあの庭園が見えた。

今日、話し合いが終わったら散策させてもらおうと思っていたけど、とてもそんな気分じゃない。もうあの庭園に行けなくなってしまうかもと思うと少しだけ残念な気がした。


揺れる馬車の中から窓の外を眺めて大きなため息をついた。朝起きた時は納得のいく答えさえもらえればこのまま結婚してもいいと思っていた。期待と不安が入り混じっていた行きとは打って変わって今は失意のどん底にいる。


アレックス様と婚約を破棄したとしてその後私はどうしたいのかしら?この国に留まって他の相手を探す?それともお母様の言うようにリンネイルに渡って新しい人生を歩む?

どちらが正解でどちらに行けばよりいいのかまだ分からない。


今の混乱している状況では何を考えても無駄だと思い、私はとりあえず考えるのをやめた。

朝早く出たおかげで時間はまだお昼過ぎ。正直今は食欲もないけど、何か食べれば少しはこの虚無感が満たされるかもしれない。そう思いながら私はそっと目を閉じた。

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