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明かされる真実 1

ガタゴトと随分長い間馬車に揺られている間、アレックス様は私の隣にぴったりくっついたままで、体に回した手を離すつもりもないらしい。

いたたまれず少し離れて欲しいとお願いしたもののあっけなく却下されてしまった。

私は少しでも気を紛らわせようと疑問に思っていたことを聞いてみることにした。


「あの、そう言えば、どうして私のいる場所が分かったんですか?私たちでさえあそこがどこだか分からないのに」

「あそこは没落した元男爵の屋敷です。現在は国に返還されて役人が領主の代わりを務めています。あなたに魔封じをかけていた男がいたでしょう?あの男はその元男爵の息子で珍しい魔法が使えるからと父親が神殿に押し付けて行ったそうです」


アレックス様の話では男爵の子息などとんでもないと最初は門前払いだったけど、魔封じが使えると分かって特別に雇ってもらえることになったそうだ。魔封じ以外には特段使えるものはなく、役立たずとして神殿の中で冷遇されていたらしい。


そっか、失った自分の実家に私たちを閉じ込めたのね。そこなら見つからないと思って。それにしても魔法が使えるから貴族だとは思ってたけどまさか没落貴族だったとは。あの人も苦労したのね。だからって許す気なんかさらさらないけど。


「ところで、さっきの質問ですが、あなたは私が贈った宝石を逃亡資金として持って行ったでしょう?」


その言葉に身体がビクッとはねた。

逃亡資金、ということは逃げたことはお見通しってわけね。まあ部屋は散らかってるのになぜか宝石箱だけ元の位置に戻されててしかもラピスラズリのネックレスとイヤリングだけ残されてる。その上私とマリーは行方不明となれば普通に考えて逃げたと思うわよね。


「うっ・・・・はい・・・」

「あなたは舞踏会用に贈ったアクセサリーだけに私の魔力が籠っていると思っていたようですが、実は違います」

「へ?」

「あなたに贈ったものすべてに込められているんですよ」

「は・・・・・はあぁぁぁぁぁ?!」


すべて・・・・・って、すべて?!ドレスも靴もアクセサリーもってこと?やばいちょっと待って理解できないんですけど?!

え、じゃあなに?私はGPSがついたアクセサリーをどっさり持って逃げてたってこと?そんなのすぐに居場所バレちゃうじゃん!そのお陰で助けてもらったわけだけどものすごくフクザツ!!


あれ?助けてもらった?そうよ!色々ありすぎて忘れてたけど私助けてもらったよね?それなのにお礼も言ってないじゃない!しかも今回で2回目なのに。

私は慌ててアレックス様にお礼を言った。


「あの、アレックス様、助けてくださってありがとうございました。本当にもうダメかと思っていました」

「私は当然のことをしたまでですよ」

「あの・・・・・でもどうして助けてくれたんです?」

「どういう意味ですか?」


その途端アレックス様の眉間に皴が寄りピリッと空気が張り詰める。私は慌てて弁明した。


「助けてほしくなかったって意味じゃなくて!あの・・・・・私自分で言うのも何ですけどアレックス様に色々嫌がらせとかしたじゃないですか?」

「嫌がらせ?どんな?」

「えっと、みんながいる前でぶりっこしてアルたんって呼んで恥をかかせたりだとか、嫌いなもの無理やり食べさせたりとか、こ、公爵令嬢と別れて欲しい・・・とか。それに婚約が嫌で逃げちゃったし・・・・」


言っていて自分が情けなくなる。つくづく私は自分のことしか見てなかったんだな。自分が苦しみから逃げられるなら相手がどう思おうとどうなろうと関係ないって思ってた。ううん。むしろ不幸になればいいとさえ思っていた。そのせいで2度もアレックス様に命を救ってもらうことになってしまった。

自分でやっておいてしゅんとしている私にアレックス様はあっけらかんと言ってのけた。


「そんなもの、嫌がらせのうちに入りませんよ」

「・・・・・へ?」

「あなたから甘えられたりお願いをされたりして嫌だと思うはずがないでしょう。むしろもっと正直になってもいいくらいです」

「で、でも、私といる時はいつも無口だったりそっけない態度をとったりしてたじゃないですか。だから、私・・・・」

「それは・・・・・恥ずかしかったんです」

「は?」


口元を押さえ恥ずかしそうに顔を赤らめるアレックス様。私は思わず口を開けたままポカンと見つめ返してしまった。


「は、恥ずかしかった?」

「ずっと探していたあなたと婚約できたんです。嬉しすぎていっぱいいっぱいだったんですよ、私も」


えーっと、この人何言ってるの?


「あの、でもアレックス様は公爵令嬢と・・・・」

「レイラとはそんな関係じゃありません」

「じゃあどんな関係なんですか?」


ジーっと見つめながら問い詰める私に、アレックス様は観念したようにため息をついてから事の顛末を話し始めた。


「レイラが隣国に留学していたことは知っていますか?」

「はい。確か誘拐されてアレックス様が助けに行かれたんですよね?そこでアレックス様と公爵令嬢は密な関係に・・・・」

「待ってください、そもそもそれが間違いです。レイラとは幼馴染で子供の頃からよく知っています。母親同士が親友で派閥違いとは言ってもお互いの家の交流はあったんですよ。父達は互いの事情を探るために仲の良いふりをしているだけでしたが、母達は純粋に交流を楽しんでいたんです。だから誘拐騒ぎの時に知り合ったわけでもないですし、そもそも誘拐なんてなかったんですよ」

「え?どういうことですか?」

「レイラは隣国の貴族と親密な関係になってしまったんです。しかも格下の子爵家の次男と。ただでさえ国際結婚は簡単ではないのに格下の家門となればなおさら。当然ノルマンディ公爵は激怒してレイラを連れ戻そうとしたのですが言うことを聞かず。彼とどこかへ逃げようとしていたので私が呼ばれたわけです。だから誘拐犯から助け出したというより駆け落ちしようとしていたのを捕まえたという方が正しいですね」

「で、でも現にアレックス様は公爵令嬢といつも一緒だったじゃないですか。それにカフェだって‥‥」

「カフェ?」


アレックス様と公爵令嬢が仲良くカフェに入って行く姿を思い出して涙が溢れそうになった私は、それを悟られまいとさっと下を向いた。


そう。どう言い繕おうともその事実は変わることはない。

突然黙り込んだ私に違和感を覚えたのか、アレックス様が私の名前を呼ぶけど今は返事はできそうにない。


「べルティーナ嬢、私に弁明の機会を与えてくれませんか?」


応える代わりに私は小さく頷いた。アレックス様は安心したように小さく息を吐いてから話し始めた。


「まず、レイラと一緒にいることが多かったのは彼女から頼まれたからです。バカ王子が自分を狙っているから恋人のふりをしてほしいと。ただの恋人ならいくらでも別れさせられるが相手がウェールズ公爵令息である私となれば話は違う。無理やり話を進めるわけにはいかなくなるし、バカ王子も堂々と手は出せない。ノルマンディ公爵にとっても将来性のないバカ王子に娘をやるくらいなら私の恋人のふりをさせておく方がいいと思ったんでしょう」


な、なるほど。確かに理にかなってる・・・・のかな?


「それを私に教えてくれなかったのはなぜですか?教えてくれていたらこんなにこじれずに済んだのに」

「それについては・・・・・本当に申し訳ありません。最初は単なる伝え忘れだったんです」


なにそれ、そんな大事なこと普通忘れる?!信じらんない!今の今まで忘れてたってこと?!


私のジトっとした視線に気づいたのか、アレックス様が慌てて続けた。


「最初は、ですよ。すぐにあなたに伝えようとしたのですが、思い直しました。これはいい機会だと」

「いい機会?何がです?」

「私は自分で言うのも何ですが、女性にとっては優良物件です」

「はぁ?」


何言っちゃってんのこの人?これがそこそこの顔の人だったら堂々と罵倒できるのに!本当にその通りだから何も言えないのが悔しいわ。


「だからこそ私の婚約者になったあなたは女性から妬まれやすくなる。それを少しでも回避するためにレイラを利用してあなたを“可哀そうな婚約者”に仕立て上げようと考えたのです。人は他人の成功には嫉妬しますが不幸には同情します。それが色恋沙汰ならなおさら。もちろん陰で笑う人もいますが好意を持ってくれる人も必ず出てきます。社交界にデビューしたばかりのあなたが敵に囲まれないようにするための苦肉の策でした」


私以上に苦しそうな顔をするアレックス様。私が陰で笑われているのを見てアレックス様も心を痛めていたの?いやでも一番大変だったの私だけどね。そんな顔したって騙されないんだから。


「そしてもう一つの理由、それは貴族の選別のためです」

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