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助けに来たのは

この声は・・・・

優しく私を抱き起してくれる人の顔を見てやっぱり、と思った。

アレックス様・・・・


「大丈夫か?くそっ俺に治癒の力があれば・・・・!」

「アレ…‥さま、だい、じょう・・・です」


私は何とか絞り出した声で無事を伝えた。まだくらくらするし吐き気はあるけど、死にはしないと思う。多分。でもなんでアレックス様の方が苦しそうなの?今にも泣きそうな顔をしてる。


「すぐに片づけますから少しだけ、待っていてください」


アレックス様は私の身体を抱き上げて近くのベンチにそっと座らせると第二王子様達の方に向き直った。

ここ、ベンチなんてあったのね。必死に逃げすぎて忘れてた。


「ベルにこんなことをしてただで済むとでも?」


私にはアレックス様の後姿しか見えないけど、その口調や纏う空気から相当・・・・いやかなり怒っていることが伝わってきた。

私はただぼんやりと第二王子様達が狼狽えているのを眺めている。



「あ、あ、あ、アレックス、どうしてここが?」

「ああ、それ、さっきも叫んでいましたね。そんなに知りたいんですか?まあ教えるつもりはありませんがね。足りない頭で考えてみては如何です?」


アレックス様の小馬鹿にする態度に第二王子様の顔はみるみる赤く染まっていった。対照的にマリンガム侯爵様はこの世の終わりのような真っ青な顔をしている。っていうかこんな人たちに様なんてつける必要ないわ。


「なっ、何だと?!俺は王族だぞ!!次期国王になるんだ!そうだ丁度いい、ここで息の根を止めてやる!!」


第二王子は生垣の枝を操り巨大な手の形を作るとアレックス様をガシッと捕まえた。そして空中にいくつもの氷の矢を作り出しアレックス様めがけて放った。


アレックス様に届くまであと一ミリというところで


パチン


先程と同じように指を鳴らす音とともに氷の矢とアレックス様を捕えていた巨大な木の手がバラバラに砕け散った。


「この程度の魔力で私をどうこうしようと思っていたのですか?」


アレックス様はさらに第二王子を挑発するように侮蔑を込めた言葉を吐いた。思惑通りというかチョロすぎるというか、第二王子は顔をゆでだこのように更に真っ赤にしている。


「なんだと・・・・これならどうだ!!」


第二王子は私を燃やそうとした炎より数倍大きい火の玉を両手に作り出し一気にアレックス様めがけて投げた。

ドオン!と大きな音でアレックス様に直撃するかと思いきや・・・・・実際にはジュっという音と共にあっという間に消えてしまった。

何が起きたか分からないというポカンとした顔の第二王子。

私はまだぐったりしていて身体は動かせそうにないので視線だけアレックス様に向けてみるとバリアのような水の膜がアレックス様の前にできていた。そして私まで巻き添えにならないためなのかかなり広範囲まで膜が張られている。


パチャンとただの水に戻る音がしたが、下に落ちる水の量からしてかなり薄い膜だったらしい。そんなもので第二王子の渾身の魔法が防がれるなど予想もしていなかったのだろう、悔しいような信じたくないような微妙な顔をして唇をかみしめている。


「くっ・・・・!おい、マリンガム侯爵!お前も手伝え!ここでアレックスを消さなきゃお前も終わりなんだぞ!」


それでもすぐに元気を取り戻したようで、今度は蒸気でも吹き出しそうなほど顔を真っ赤にしてでマリンガム侯爵に指示を出す第二王子。

それ、自分ではアレックス様にかなわないって認めているようなものじゃない。王族だ何だって騒いでたくせにプライドは無いのかしら?


「わ、わたしは・・・・」


対してマリンガム侯爵は相変わらず青い顔をしたままもごもごと何かを言っている。


「ああ、侯爵閣下、ご子息のクリスのおかげで今回の企みを知ることができました。感謝しますよ」


クリス様の名前が出たことで我に返ったのか、マリンガム侯爵がピクッと反応した。


「それは・・・・どういうことですかな?」

「あの日、マリンガム侯爵邸での夜会があった日、クリスの態度がいつもと違っておかしかった。ベルに何かあったのに頑なに話そうとしないし、ベルに聞いても私に心配をかけまいと教えてくれないしで。こうなったらもう自分で調べるしかないでしょう?」


その言葉を聞いて察したのか苦々しい顔でアレックス様を睨みつける侯爵。そんな侯爵の様子などお構いなしにアレックス様は話を続けた。


「そうしたら何とそこのバカ王子を国王にと画策しているというではないですか!バカ王子が国王になるためにレイラを狙っているのは知っていましたが、誘拐しようとしたりノルマンディ公爵家に圧力をかけようとしたりと、あまりに幼稚なやり口なために単独で動いていると思っていたんですよ。それがまさかマリンガム侯爵が暗躍されていたとは!」


恐れ入りましたと続けるアレックス様。悪びれもせず神経を逆なでするようなことをつらつらと話している。


「しかも自分で手を下すのではなく、クリスにやらせるとは。思い通りに動かない長男をあなたが虐げるのを見て兄を守りたい一心であなたに従っていたクリスの優しい気持ちまで利用する。何という見下げた根性でしょうね」


「誰がバカ王子だ!不敬だぞ!!おい、誰か捕まえろ!」

「くっ・・・・」


誰が見てもあからさまな挑発なのにそれに易々と乗り、バカ王子という言葉に過剰に反応して騒ぎ立てる第二王子。先ほどから馬鹿にされすぎて正常な判断ができなくなっているらしい。


誰か捕まえろって、それができないからアレックス様は余裕かましておしゃべりなんてしてるんじゃない。馬鹿なの?あ、馬鹿なのか。

そんなことが考えられるくらいには回復してきたようで内心ほっとした。


一方の侯爵は挑発だと分かっていながら、侮辱されたことが許せなかったのか真っ赤な顔をして唇をかみしめている。青くなったり赤くなったり忙しいおじさんね。


「確かに王妃殿下は高貴なお家柄なのでバカ王子を次期国王にと望む声があったのは事実です。ですが、あまりに出来が悪く学園時代に問題を起こしまくったおかげで、誰もが無理だと見限ったのですよ。それなのにまだ諦めていないということはバカ王子が国王になると相当オイシイ思いができるのでしょうねぇ。宰相として陰で操る・・・・とか」


その言葉にマリンガム侯爵の身体がぴくっと僅かにはねた。


あ、それ前にグレースが言ってた。アレックス様もそう言ってるんだからやっぱり本当のことみたいね。

でもその事実を当然第二王子は知らないわけで。侯爵は慌てて第二王子に弁明しようとしている。


「なっ!何だと!侯爵、お前俺のことを馬鹿で操りやすい奴だと思っていたのか!」

「ご、誤解です、殿下。私は本当に・・・・」

「黙れ黙れ黙れ!もうお前のことなんか信じないぞ!おい、アレックス!俺を馬鹿だの出来が悪いだの言いたい放題言いやがって許さないぞ!」

「アレックス殿!誤解を招くような発言は慎んでいただきたい!


本人達ははものすごい剣幕で怒っているつもりなのだろうが、今の状況ではただの負け犬の遠吠え。子犬がきゃんきゃん言っているようにしか見えない。そしてやはりアレックス様も全く動揺していない。それどころかやれやれと首を振っている。


「私とレイラの本当の関係に気づかないだけでなく、疑いを持つことすらしない。だから馬鹿だって言ってるんですよ。陛下やお兄様(ルイフォン様)はとっくに気づいていらっしゃいますよ?」

「あいつの名を口にするな!あんなやつを兄だと思ったことなど一度たりともない!俺こそが正当な血筋から生まれた正当な王子だ!!」

「そう、ルイフォン様は血筋を重んじる社交界から歓迎される存在ではなく、あなたのように自分の盾となって後押ししてくれる存在もいなかった。だからこそ血のにじむような努力をされたのですよ。皆が認めざるを得ないほどのね。対するあなたはどうです?自らの立場に胡坐をかき問題ばかり起こしてきた。そんなあなたにルイフォン様を非難する資格など無い!」


先程までの余裕たっぷりの態度から一変、アレックス様の周りの空気がサァッと冷えた。バカ王子・・・・・あ、バカって言っちゃった。まあいいや。バカ王子みたいに感情に任せて怒鳴り散らすのではなく、静かに怒気を纏っている。正直怒鳴られるよりこちらの方が怖い。


バカ王子もアレックス様の剣幕に驚いているのか、パクパクと魚のように口を動かすことしかできないようだ。


「・・・・・・・まあ、そのおかげで」


ビリビリと肌を突き刺すような圧が急に消え、先ほどまでと同じ余裕たっぷりのアレックス様に戻った。


「今日の計画にも気づけたわけですが。変に小賢しい計画を立てられても面倒ですからね。その辺についてはその短絡的な思考に感謝しますよ」

「なっ・・・・・」

「もうおしゃべりはこのくらいでいいでしょう。断罪のお時間ですよ、殿下」

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