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怪しい密談

今回は少し短めです

距離をとることに必死でひたすら闇雲に走った結果、見事に迷ってしまった。今自分がどこにいるのかもわからない。どうしよう、会場はどこかしら?こんな時に限って使用人の一人も通らない。


はあはあと切れた息を整えながら私はあてもなくウロウロとさまようことしかできなかった。

絵本の中のお姫様のように王子様と結婚してお城に住みたいと憧れたこともあったけど、こんな形で出口を探すことになるとは思わなかった。思わずはぁというため息をこぼす。


それからしばらくさまよった後、ようやく庭園に抜けられるドアを見つけた。

やった!外に出れば戻る道が分かるかも!


そう思って外に出ると、目の前には見事な生垣。暗くてよく分からないが綺麗な花が咲いているようだ。道は左右に伸びていて左側にはすぐそばにベンチが置いてある。使用人が休憩するためのものだろう。どっちに行けば会場までたどり着けるか分からない。でもきっと城の中にいるよりはましだと適当に左側の道を歩き始めた。


少しするとぼそぼそと人の話し声が聞こえてきた。

誰かいる!良かった、これで道が聞ける!左側を選んでよかったわ!

歩きすぎて足が痛いけど、力を振り絞って駆け寄ろうとしたその時、聞こえてきた声に私は思わずその足を止めた。


「ことごとく作戦が失敗しているのに呑気なことを言っている場合か!待っていたところで状況は良くならない、俺はやるぞ」


この声・・・・・


私は曲がり角までできるだけ音をたてないように近づくとそっと覗いた。


「!」


やっぱり・・・・

そこには第二王子様とマリンガム侯爵様、そして一人の青年がいた。


「殿下、何をされるおつもりですか?以前のような軽率な行動は控えて頂かないと。それにこれまでの失敗であちらも警戒を強めているでしょうし、もう少し機会を伺った方が・・・・」

「閣下いいではないですか。殿下が王になるためには多少の犠牲は必要かと」


何かを決意する第二王子様とそれを止める侯爵。そして第二王子様を支持する青年。

あの人どこかで見た気が・・・・


「子爵家の三男坊のくせに私に意見するな!」

「侯爵、ルイスはお前のダメな息子と違って私の為に動いてくれる大事な友人だ。発言には気をつけろ」

「も、申し訳ありません」


苦虫を噛み潰したような顔の侯爵とニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる青年。

あ、あの笑い方!思い出した。私に愛人の打診をしてきた無礼な人だわ!伯爵家以上しか招待されていない今回の舞踏会に子爵家、それも爵位を継がない三男がどうしているのか疑問だったのよね。第二王子様が無理やりねじ込んだのね、きっと。


「とにかく、私は今日の舞踏会でアレックスを殺す」

「!!!」

「いろいろとやってみたがことごとくアレックスに邪魔されているのだ。いっそアレックスを消す方が話が早い。今日が絶好のチャンスだということくらいお前たちにも分かるだろう」


あまりにも平然と吐かれた言葉に息が止まりそうなほど驚いた。声を上げなかった自分を褒めてあげたい。

そしてそんなトンデモ発言を聞かされた二人は『いいですね』『確かに一理ありますが・・・・』と真逆の反応を示した。言わずもがな後者がマリンガム侯爵様だ。


「しかしどうなさるつもりです?こんなに人目があるところで手を下せば王妃殿下もさすがに殿下をかばえませんぞ」


はぁと深いため息をつきながらこめかみを押さえて呟く侯爵様。自由奔放な第二王子様に普段から手を焼かされているのが良く分かる。これを機に第二王子様を国王になんて考え捨てればいいのに。


「ではどうしろと?」

「舞踏会の最中ではなくせめて帰りの馬車を襲う方がリスクは少ないかと」

「閣下、それはいけません。そこには婚約者であるべルティーナ嬢も乗っているはずです。私はアレックス様亡き後べルティーナ嬢を懐柔して婿養子に入るつもりなのですから。べルティーナ嬢にまで何かあっては困ります。ちゃんと考えて頂かないと」

「却下だ。侯爵」


やれやれと肩をすくめながら頭を振る子爵令息とそれに同調して肩を持つ第二王子様。

そんな様子を侯爵様はギリギリと歯ぎしりをしながら今にも令息を絞め殺しそうな顔で睨みつけている。マリンガム侯爵家の当主が格下の子爵家、しかも三男坊にいいように言われているのだ。少しだけ同情する。


しかもさっきマリンガム侯爵様の息子より優秀だ、みたいなこと言われてたよね?クリス様のことなのかクリス様のお兄様のことなのかは分からないけど、腹を立てるのも無理はないと思う。


・・・・・・・っていうか、え?私と結婚するつもりとか何言ってるのこの人?さっきはっきりと拒絶したわよね?!やばい、キモイ。アレックス様とは別の意味で鳥肌が立つわ!


「いっそアレックス様に何か罪を着せて拘束してしまうのはどうです?」

「そんなことをしたらウェールズ公爵だって黙ってはいない。この国一番の貴族だぞ、どこぞの三男坊とはわけが違うんだ。下手をしたらこちらの立場が危うくなる。もしもやるなら綿密な下準備が必要だ。殿下、やはり一人になったところを狙って奇襲をかけるのがよろしいかと思いますが」


ああでもない、こうでもないと議論を交わしながらアレックス様の命を奪う作戦を練る第二王子様達。マリンガム侯爵様も最初こそ難色を示していたものの、今ではまるでそうするのが当然というような平然とした態度にゾッとしてしまう。一人の人、しかもこの国に二家しかない公爵家の跡取りを殺そうというのに罪悪感すら抱いていないことが本当に怖い。


私・・・・・アレックス様のことは心の底から嫌いだけど、でも死んでほしいなんて思ってない。そんな形で婚約破棄なんて望んでないわ。私が望んでいるのはあくまで平和的解決。

・・・・・・・・知らせなきゃ。誰かに、このことを。


幸い三人は議論が白熱しているし、方法も決まってないからすぐには実行できないはず。

私は先ほどと同じようにそっと後ろに下がろうとした時


パキッ


落ちていた枝を踏んでしまった。

どうしよう、気づかれた?小さな音だったし大丈夫かも・・・・

ドッドッドッと心臓が早鐘を打つ。私は手で口を押さえ息を押し殺してじっと時が過ぎるのを待った。

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