↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/67

婚約披露パーティー 4

セイドリアン様と公爵令嬢は相変わらず目を見開いたまま私たちのことを見ているが、アレックス様はまだ茫然自失状態のようで私が差し出すケーキをパクパクと食べている。私が差し出すケーキを全て食べ終えたところで、アレックス様のお母様である公爵夫人が声をかけてきた。


「あらあら、仲睦まじくてよろしいこと。それにしてもアレックス、いつから甘いものを食べられるようになったの?昔から苦手で食べられなかったのに」


・・・・・・え?

べルティーナさんが食べさせてくれると食べられるのね、愛の力はすごいわね。と言いながら公爵夫人はまた別の方のところへ声をかけに言った。ふと周りを見ると皆微笑ましい笑顔でこちらを見ている。

甘いもの、本当に苦手だったの・・・?ギギギと音がしそうなほどぎこちなくアレックス様の顔を見ると真っ青になっていて今にも吐きそうな顔をしている。

あ、これ、やばいかも。頬につつつと垂れる冷や汗を感じながらも何もできずにいると、公爵令嬢がさっとアレックス様に近づき背中を優しくなでた。


「アレックス、大丈夫?気持ち悪いなら吐いた方がいいわ。セイドリアン様お願い」

「あ、ああ」


私同様固まっていたセイドリアン様は公爵令嬢の声で我に返ったようで、慌ててアレックス様を会場から連れ出していた。方向からして化粧室に向かっているようだ。

公爵令嬢はアレックス様を呼び捨てにして、介抱とは言え体に自然に触れて世話を焼く。いかにも自分こそがアレックス様の本命だと言っているような行動だ。そしてハラハラした気持ちでアレックス様の背中を見送っていた私に牽制するかのように厳しい口調で声をかけてきた。


「べルティーナさん、悪ふざけが過ぎましてよ。アレックス様は本当に甘いものが苦手なのです。それをあんなにたくさん・・・・無理に食べさせるなんて酷ではありませんか」


ただのお飾りのあなたが私のアレックスになんてことするのよってことね。

先程までほんわかしていた雰囲気が一気に張り詰めたものへと変わっていった。会場中の視線は私と公爵令嬢に注がれている。おしゃべりに興じていた人たちも声を潜め、会場はしんと静まり返っている。

私はというと公爵令嬢の正論にぐうの音も出ず黙って俯くことしかできないふりをして呼び名がアレックス様に戻ってるなーなんてことを考えていた。

確かに私の勝手な思い込みでアレックス様に辛い思いをさせてしまったのよね。いくら嫌いな相手だとしても苦行を強いることは本望ではない。それは悪かったと思うけど、でもだからと言ってここで引くわけにはいかない。


「で、でもでもアレックス様は本当に二人だけの時は食べてくれるのです!!現にちゃんと食べてくれていたじゃないですか!本当にお嫌なら食べないはずでしょう?失礼ですがアレックス様のことは婚約者である私の方が良く知っています!」


目に涙を溜めて私はそう反論した。私って自分の意志で涙を流せる人間だったのね、初めて知ったわ。いや、こういう雰囲気だからかしら。

あくまで私は悪くないというおバカな令嬢を演じつつ、いくらアレックス様の心はあなたにあっても婚約者は私よという反抗も忘れない。ただのお飾りだと思っていた女が自分に嚙みついてきたらイラっとくるわよね。

さあ、公爵令嬢はどう出るかしら?ちなみにグレースは予想外の展開に傍観者に回ることにしたみたいだ。ちょっとちょっとグレースさん、今こそ助け船を出すときじゃない?


「婚約者なのに相手が嫌がっているかどうかも分からないのですか?アレックス様の妻になられるのなら・・・・・」


怒りを隠そうともせず非難を続けていた公爵令嬢がそこまで言ったところで言葉を止めた。不思議に思って公爵令嬢の視線の先を見てみるとアレックス様がいた。しかも私のすぐ後ろまで来ている。

いつの間に来たの?!魔法で気配と足音を消していたとでもいうのかしら?

ぎょっとしたものの、平静を装いながらアレックス様を心配するふりをして駆け寄った。駆け寄ると言ってもすぐそこにいるのでただ距離を詰めただけだけど。


「アルたん!ごめんなさい。いつも食べてくれていたから甘いもの大好きなんだと思っていたの・・・・・。今度から嫌なことは嫌って言ってね?」

上目遣いでウルウルしながらそう訴えると隣にいたセイドリアン様が再びあり得ないものを見るようにアレックス様と私を交互に見ていた。後ろからも公爵令嬢の視線をバシバシ感じる。というか会場中からさすような視線を向けられているのを肌で感じる。アレックス様は多少良くなった顔色をまた青に染めながら意識を飛ばしそうな顔をしている。先ほどの騒動で視線を集めていたのに、両親や友人知人たちの前でアルたん呼ばわりされたのだ。当然の反応だろう。


ふふ。警戒していたみたいだけど、弱っているときにやらかされるとは思ってなかったでしょ?ちょっと可哀想かなって思うけど今が一番いいタイミングだもの。それに公爵令嬢にダメ押しもしておきたかったし。


だけどダメージを負ったのは何もアレックス様だけではない。私にだって羞恥心はある。学園時代の友人や両親の知人たちにぶりっこして馬鹿な女を演じてる姿を見られたのだから今すぐここから立ち去りたいくらいの恥ずかしさは感じている。でもそんなことをしてしまったらすべてが水の泡だから絶対にやらないけど。


公爵令嬢にも喧嘩売っておいたし、アレックス様にも嫌がらせができたから、これで婚約破棄してくれたらいいな。

そんなことを思いながら一人ほくそ笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。