婚約披露パーティー2
全話の続きです。
準備はつつがなく終わり、私はアレックス様と並んで招待客を迎えた。肩が触れそうなほど近くに寄り添っているため不快感が半端ない。しかも口々におめでとうと祝福してくれる招待客たちに笑顔でありがとうございますと返さなければならないという、何とも苦行のような時間だった。
会場には軽快な音楽が流れ、先に着いた招待客たちは自由におしゃべりを楽しんでいる。私もここから抜け出してあの中に混ざりたいと思ったけれど、そんな事叶うはずもなく。
仕方なく目の前の招待客に視線を戻すとハルフウェート侯爵家の方々がいて、侯爵令嬢にお茶会お待ちしてますね!と念を押されてしまった。行くと決めたものの、決意が揺らいでしまう。こんなに念を押されるなんて、一体ナニをされるのだろう・・・。
色んな感情で心がごちゃごちゃになっている中、グレースの顔が見えて少しだけ心が和らいだ。前にいた数組の招待客に挨拶した後、グレースと共に来ている彼女の両親に挨拶した。
「パミュラ伯爵、伯爵夫人、グレース様、本日はお越しいただきありがとうございます」
「お招き頂きありがとうございます。アレックス殿、ベルティーナ嬢おめでとうございます」
伯爵と型通りの挨拶を交わした後、私とグレースはすれ違いざまに目だけで合図して小さく頷いた。怪しまれてはいけないので特に言葉を交わすことはなかった。
先日の夜会でアルたん呼びをしてからアレックス様を好奇の目で見る人やひそひそと噂話をする人がちらほらいたみたいだけど、さすがに今日は自粛しているようだ。アレックス様にも私にも好奇の視線は感じない。
招待客も大体揃ったかという頃にノルマンディ公爵家がやってきた。もちろん公爵令嬢も一緒。形式的だとしてもアレックス様の婚約披露パーティーなのだ。一体どんな顔をしているのかと思ってちらりと顔を見てみると、驚くほどすました顔をしていて全く気にしていないようだった。
気にしていないというよりむしろーーー
と考えながらじっと見つめていると、不意に公爵令嬢がこちらに視線を向けてきたので目が合ってしまった。
牽制するような視線を向けられるかと思いきや、反対にニコッと微笑んでおめでとうございますと言われてしまった。
あまりにも悪意の無い笑顔に毒気が抜かれるようだったが、逆にそれが怖くもある。
一体、何を考えているのかしら?
・・・はっ!ダメよ、ここで怯んじゃ!!
今日は大事な日なんだから!
公爵令嬢が来てもこちらを盗み見る人はいない。みんな相当な我慢しているようだ。そんな中で私が公爵令嬢の顔をまじまじ見つめる訳にはいかないので慌てて笑顔でありがとうございますと返した。
招待客が揃ったところでウェールズ公爵様がパチンと指を鳴らすと音楽が止まり、私たちの近くにあるスタンド型のランタンに淡い光が灯った。
公爵様もアレックス様と同じく指を鳴らすことが魔法の発動条件らしい。さすがに音楽は楽団の演奏なので合図に合わせて演奏をやめただけだろうけど。
ざわめいていた会場が途端に静まり返り私たちに視線が注がれた。
「本日は息子アレックスとモリスヴェイン伯爵家のベルティーナ嬢との婚約披露パーティーにお越し頂きありがとうございます」
その挨拶に合わせてアレックス様と2人でお辞儀をすると会場中から拍手が沸き起こった。
「素晴らしい人と出会えましたことに幸せを感じております。まだ未熟な私たちですが、温かく見守って頂けましたら幸いです」
公爵様に続いてアレックス様が口を開き、その挨拶を聞きながらどの口が言ってんの、と思ったけど貼り付けた笑顔を崩すことはしなかった。眉一つ動かさなかった自分を褒めてあげたい。
「それではどうぞ存分に食事とダンスをお楽しみ下さい」
挨拶の後公爵様がそう声をかけると、再び会場に賑わいが戻った。
この後はアレックス様と二人で改めて挨拶回りをして私たちも自由時間となる。
あともう少しの辛抱よ、私!無理に笑顔を貼り付けているせいで顔の筋肉が攣りそうだけど、明日筋肉痛になるとしてもここは耐えなければ。
そう思って何とか挨拶周りをすることができた。アレックス様はご学友に呼ばれて行ってしまったので、私もグレースのところに向かうことにした。勿論作戦の確認のため。
さあ、本当のパーティーはここからよ。
明けましておめでとうございます。ストックが切れてしまい毎日更新することが難しくなっていますが、できる限り早く更新していきたいと思っています。
今年もお付き合い頂けましたら幸いです。




