無人島
リザ視点です。
ピンポン~。
「こんばんは、お届けに参りました」
夕方、仕事から帰ってきてすぐ、玄関のベルが鳴った。
今日も、木下デジンからの贈り物が届いた。
「今日も、部活お疲れ様。毎日配達ごくろうさま」
届け物をしているのは、近所の花屋の娘。
花屋をやっている母親の車に乗って、帰宅途中に我が家に立ち寄り、赤いバラのブリザードフラワーを1本配達してくれる。
「いいですね。毎日送られる花。ロマンチックです。私もそんな彼が欲しいです」
年頃の花屋の娘は、ブリザードフラワーを見てうっとり。
私は、曖昧に微笑んでおいた。
始めて、赤いバラのブリザードフラワーが届いた時にはビックリした。
いらないと断ろうとしたが、ブリザードフラワーは、花屋の店主が作った物で、作成時間や、形が崩れず嬉しかった事など聞かされては、突き返す事も、破棄することも出来なかった。
今では私の部屋に、赤いバラのブリザードフラワーが花束になっている。
ブリザードフラワーの花言葉は『永遠に続いてほしい思い、関係、記憶』
1本だけの赤いバラの花なら、『一目惚れ、あなただけ』
12本で『私の恋人になって下さい』。
赤いバラのブリザードフラワーを捨てずに、私が108本集めれ『結婚して下さい』になる。
正直重い。重たすぎる。そしてちょっと怖い。
でも、毎日届けられる花。私の部屋に増える彼の思いは、意固地になっていた私の心を、ほんの少し溶かした。
そんな生活が2か月ほど続いたある日。
セバスチャンさんから、連絡がきた。
一度、木下デジンを見て欲しいとの事。
また食事を一緒にでも、会って欲しいでもない。見て欲しい。なに?
私は、お花のお礼と、交際のお断りを、直接話す必要性があると感じていたので了承した。
当日早朝。夜が明ける前に、セバスチャンさんが自宅まで迎えに来てくれた。
高級車に乗り込むが、木下デジンはいない。
私一人を乗せた高級車は高速道路を走り、海沿いへ。
そこで降ろされた。
セバスチャンさんが、私に救命胴着を渡す。
「着てください。今から船に乗ります」
目の前には小さな漁船。
「え?」
私は、わけもわからず救命胴着を着用。漁船に乗り込んだ。
「では、行ってらっしゃいませ。明日の朝、お迎えに参ります」
「え?」
セバスチャンさんはそう言うと、頭を下げた。
小さい漁船は出航した。
「え?セバスチャンさんは行かないのですか?」
「行きません。あちらには木下デジンがおります、よろしくお伝え下さい」
岸から、にこやかに手を振って見送るセバスチャンさん。
「騙したな!セバスチャーン‼」
叫ぶ私の声は、漁船の音にかき消された。
2時間ほど漁船に揺られ、到着したのが無人島。
そこで、私は漁船を降ろされた。
無人島で1人呆然と立ち尽くす私。
今持っている物は、スマホと財布、ハンカチとチッシュ。水の入ったペットボトルのみ。
無人島で暮らせる物なんて持ってきていない。
木下デジンがこの島にいるなら、日が落ちる前に早めに合流しなければ…。
それから無人島の海岸沿いを30分ほど歩き、崖になり行き止まり。
そこから、山に入り、道なき道を頂上にむけて歩いて行く。
草木が生い茂る悪路。
足元は岩がゴロゴロ転がり歩きずらい、枝が服に引っ掛かり服を破く。虫が私の周りを飛びかい、
イライラマックス。
2時間山を歩き、疲労困憊。汗だく、足が重い。
山の頂上に着くと、煙が見えた。
私は、嬉しくて、煙の方へ山を駆け降りる。足が傷つこうが、服が破れようが構わない。
山を駆け降りた先には、男性がいた。
黒髪短髪で髭を生やし、茶色い肌、細身で筋肉質。顔は醤油顔でなかなかのイケメン。身長は私と同じぐらい。
イケメン男性は私を見て驚いている。
「え!リザさん…。なぜここに?」
男性は私の名前を知っていた。
「もしかして、木下デジンさん?」
「そうです。木下デジンです」
「わ~ん。」
私は泣き崩れた。緊張が解け、安心したのだ。
泣き崩れる私を見て、慌てたのがイケメンになった木下デジン。
近くの、掘っ立て小屋に入り、木を削って作ったであろう歪な形のコップに水を入れて持ってきた。
私は受け取り一気に飲み干す。なんか少し違和感。
怪訝な表情の私を見て、木下デジンは
「この水は、海水を沸騰させて作った水なので、少し違和感があるかもしれません」
話を聞くと、2か月弱、1人で無人島生活をしているらしい。
後ろにある掘っ立て小屋も、コップもすべて手作り。食料、水も自給自足。週に1回、漁船が来て、会社の状況報告書と、最低限の物資が送られてくるらしい。
私に毎日届く、赤いバラのブリザードフラワーはどうしたのかと聞くと、会社の部下が考え、無人島に行く前に配達を頼んだと、正直に話してくれた。
木下デジンは、私をもてなそうと、海に入り、魚を槍で捕まえ刺身に、山に入り山菜を摘んで天ぷらに、小麦粉を練って、ナンもどきの夕食をご馳走してくれた。
すっかり夜になり、海岸の砂浜で2人で横になり、夜空を見ている。
今日は、木下デジンといっぱい話せた。
悪い人ではない。甘えていた自分を変えるために無人島生活を始めた、思考は斜めに上を突き破っているが、不器用だけど真っ直ぐな人だった。
満天の星空、月が綺麗…。私はいつも間にか眠ってしまった。
木下デジンが『月が綺麗ですね』と言ったことには気づかず…。
朝になり、漁船が迎えに来た。
木下デジンとお別れ、なんとなく寂しい。
「リザさん。2か月たったら無人島生活を終えるつもりです。そしたら、会いに行ってもいいですか」
「・・・ん~。そうですね。今度こそは、私を楽しませて下さいね」
家に帰った私は、ぽつりと、
「木下デジン…。結局、交際のお断り言えなかったな~」
白河・DG・夜舟様より頂きました
サバイバル無人島
男性も女性もイケメンや可愛い子には弱いのです。




