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お金で殴る彼氏と普通の私  作者: ロミ


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4/9

それゆけ、開発部男性陣!

始め木下デジン視点。後半開発部視点。

 




ザワザワザワ

 木々を揺らす風の音


ピーピー

 遠くで、鳥が鳴いている


 目の前には、レンガ造りの古いトンネル。昼間なのにトンネルの中は薄暗く、黒いシミや、コケが多数。

 じめじめした、不気味な雰囲気が漂う。


 俺とセバスチャンは、2回目のデートの下見に来ている。

 前回のホストクラブは、プロだからと安心しすべてを任せてしまった。今回は同じ間違いはしない。下見をし、しっかり準備をして臨む。


「リザさんは、うるさい場所は苦手らしい、そこで、今度は自然豊かで静かな場所に行こうと思う。ここだ」


「ぼっちゃま、確かに自然は豊かで静かでございます。ですが、意中の女性と2回目に行く場所ではございません。お考えを改めた方がよろしいかと」


「なぜだ。調べたが人気の心霊スポットらしい。黄泉の国へのトンネル。死者も黙る静かな場所。これ以上静かな場所がどこにある」


「ございません。しかし、静かすぎます。何もありません。女性が喜ぶでしょうか」


「うむ。確かに何もないな。では、余興をこちらで準備しよう。トンネルの中で食事をするのだ。フランス料理のフルコースはどうだろう。このトンネルは距離は短い、トンネルの出口側で料理を作り提供する。オーケストラの楽団を呼び寄せ、生演奏もいいな。トンネル内に響いて、幻想的な雰囲気になるはず。ここまで静かで、おごそかな場所なら、リザさんも喜んでくれるだろう」


「そうでございましょうか‥‥。」


 こうして2回目のデートは決行された。





 ◇◇◇





 リザさんの家まで、車で迎えに。リザさんが俺の横に座った。

 俺の横!なぜ向かいの席ではなく俺の横?リザさんとの距離が近くなって嬉しい。

 前回のホストクラブは失敗ではなかったのか、俺への好感度が上がっている!


「よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 上機嫌の俺は、隣に座るリザさんをチラチラ見る。


 髪を降ろし、普段着、ズボン姿の彼女も、なんだか幼く見えて可愛い。


 俺は、デートを脳内でシュミレーションしながら、車に揺られて目的地に向かった。


 そろそろ、目的地の心霊スポットだ。


 目的地に着いたとたん、リザさんの顔色が変わった。

 車から降りないと断固拒否。


 これは困った。フランス料理の準備も、オーケストラの生演奏もスタンバイ済み。

 リザさんが来ないと始まらない。だが、リザさんの意思を無視することはできない。


 スマホを見た、圏外。使えない。


 俺は車から降り、セバスチャンと一緒にトンネル内へ、トンネル内に待機していた部下と、計画の代案を検討していた時、車の方から悲鳴が聞こえた。


「なんだ?リザさんに何かあったのか?」


 俺は、慌ててリザさんの元へ全速力で走る。走るが俺の大きな体が邪魔をする、トンネル内のコケに足を取られ早く走れない。


「セバスチャンさん~、セバスチャンさん~」

 彼女の切羽詰まった叫び声が聞こえた。


 なぜ、俺ではなく、セバスチャンを呼ぶ?


 胸が何だかモヤモヤする。隣を走るセバスチャンを睨みつけた。


 リザさんは、外に出て車の横に座り込んでいた。


「大丈夫ですか?」


 俺が話しかけたのに、リザさんはセバスチャンに抱き着き大泣き。よほど怖かったのか体が震えている。


 セバスチャンはリザさんを受け止め、やさしく背中をさすっている。


 俺は、その光景を、茫然と見ていた。

 胸の中は、疑問と、モヤモヤでいっぱいだ。このモヤモヤの正体は嫉妬なのか。

 リザさんが頼ったのが、俺ではなかった事に落胆と、いら立ちが隠しきれない。



 そのうちリザさんは落ち着き、俺と一緒に車に乗り込んだ。

 今日のデートは中止だ。リザさんは車内に乗り込んでも、キョロキョロ周りを見回し落ち着かない。


「一緒に乗っていた、人当たりの良さそうな中肉中背の40代くらいのスーツを着た男性は誰ですか。一緒に乗ってきましたよね」


 リザさんは何を言ってるんだ?

「いいえ、この車に乗っていたのは、私と福井さん、運転手のセバスチャンだけです」


 リザさんの顔がみるみる蒼白になり、目をつぶり、俺の袖をつかんだ。


「早く、早く、早く、出発しましょう」


 車は動き出し、暗い森を抜け、主要道路に出た。


 リザさんは目を開け、俺の袖を放した。

 放された袖を寂しく思いながら、リザさんに水のペッドボトルを差し出す。

「大丈夫ですか」


ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ

 リザさんは、勢いよく水を飲みほした。


 俺は落ち着いたリザさんに、謝罪と、何故俺の名前ではなく、セバスチャンの名前を呼んだのか訊ねてみた。


「え!?だって、私、あなたの名前を知りません。自己紹介されてないのでー」


 俺の名前を知らない‼。


 俺は、車のソファーから崩れ落ちた。

「マジで、何やってんだ俺、自己紹介もしてない。リザさんは俺の名前さえ知らない。恋愛以前の問題。

 友達でもなく、知り合いでもない。そこら辺の石と同じだぞ、お前何やってるんだよ」

 俺は自分自身に激しく自己嫌悪。このままではいけない。


「俺の名前は、木下デジンです。お願いです。もう一度、チャンスを下さい!」


「本当に結構です。いりません」


 車に乗っている間、頭を下げて懇願したが、リザさんは了承してくれなかった。


 俺は絶望のなか、帰路についた。






 ◇◇◇






「ハァ~。」


「何してんだ俺。」


「ハァ~。」


「〇(死)にて~。」


 カプセルコーポレーション代表兼開発者のデスクから、ずーーーーとため息が聞こえる。



「おい、何とかしろよあれ」

「無理だろ。意中の女性から完全拒否だろ」

「心霊スポットでやらかしたんだろ。何で心霊スポットに行こうと思うかな~」

「しかも、自分の名前、教えてなかったんだって」

「マジで、どんだけポンコツ」

「それな、だけど代表、仕事はできるんだよな~、開発者としても、ずば抜けてる。今は代表だが、今の会長が退いたら、おいおい代表取締役会長だろ」

「だが、あのため息はウザいな、しかも仕事が全く進んでいない」





 ー・-・-・-・-・





【それゆけ、開発部男性陣!】


 ため息ばかりの代表をしり目に、社内チャットに新たなコンテンツが誕生した。


 伊東:では、早速会議を始めたいと思います


 議題を言わずとも開発部の男性陣が、尽力するべき案件は、これ以上ない。

 いつもは、AI技術開発や、軍事産業、エネルギー関連など世界を揺るがす社内チャットの内容だが、『木下デジン代表と彼女の仲直り計画!!』などと、デカデカと記入されている。


 情報欄には、現在わかっている彼女の家族構成などの情報、女性向け雑誌のデート情報集計、仲直りの定番などびっしり。


 北:現在会長何してるんだっけ?


 伊東:秘書のセバスチャンさんの話では、高級ジュエリーを複数、佐川急便で彼女の自宅に宅配。彼女ドン引き。彼女から秘書さんに連絡が入り、すべて返納されています。


 北:マジか~。知り合ったばかりの女性に、お詫びの贈り物が高級ジュエリーありえない。熟年の夫婦じゃないんだぞ。だが、ちゃんとした常識ある女性でよかったな。


 伊東:代表は仕事以外はポンコツのわりに、女性を見る目はあったようです。ですが、代表に対する彼女の印象は最悪です。


 北:まあ、金で解決しようとしたんだから、普通そうだよな。


 伊東:そこで、仲直り計画です。代表の印象が-(マイナス)の現在。何してもダメでしょう。

 しかし、何もしないと、彼女との関係も、ため息代表も、このままです。

 AI開発は行き詰まり、軍事産業は停滞。エネルギー開発は他国に先を越されます。日本の、世界の損失です。みなさんに解決に向けての意見を募りたい。


 南川:女性向け雑誌では、20~30代の女性が選ぶ理想の彼氏、3大条件は、

 1つ目『清潔感のあるルックス』


 みんな:ないな。


 南川:2つ目は『優しく思いやりがある性格』


 西田:代表、その前に、コミュ力皆無で、テーブルにもつけてないよな。


 南川:3つ目が『自立していること』


 西田:自立…。仕事は自立してるな。でも私生活はセバスチャン任せだろ。


 南川:それな。でも、金持ちはそれが普通じゃね。


 西田:ちなみに、他のリサーチ恋愛調査によると、一貫して『性格・価値観』が最重要で、見た目や、年収より優先される傾向があると書いてある。


 みんな:あ~。価値観か~。


 北:価値観はあきらめよう。だが他は何とかなるかもしれない。

 まずは、贈り物だ。彼女の負担にならず、返却されず、いつでも破棄できて、でも破棄しづらい物。


 北:あとは、清潔感のあるルックスだ、人は見た目が9割と言う。これは代表に努力してもらわなやならない。



 開発部の男性陣の激しい討論が日夜おこなわれており、中には徹夜する日もあるほどだった。










挿絵(By みてみん)

白河・DG・夜舟様より頂きました

もしも、トンネル内で食事をしたなら









有名な心霊スポットのトンネルの中で、オーケストラ生演奏付きフランス料理のフルコースを食る姿。ちょっと見て見たかった。

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― 新着の感想 ―
 ロミさん、こんにちは。 「お金で殴る彼氏と普通の私 それゆけ、開発部男性陣!」拝読致しました。 「除霊」の、男性側視点。  その、下見ですね。  前回はプロとやらに任せて、失敗。  二度と同じ過…
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