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お金で殴る彼氏と普通の私  作者: ロミ


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3/9

除霊

リザ視点です。

 


 ホストクラブの3日後。執事のセバスチャンさんから連絡があった。


 次の待ち合わせは、10日後の夕方。また、迎えに来てくれるらしい。


 今度は、高級な場所ではなく、普段服、できればズボンで来てほしいとのことだった。

 私は渋沢栄一とおさらばしなくていいと、ほっと胸をなでおろした。



 待ち合わせ当日の夕方、家の前に高級車が止まった。


 執事のセバスチャンさんが私をエスコート。

 高級車へ乗り込む。この高級車、ソファーの椅子に、向かい合って座るようになっている、運転席との間には仕切りがある6人乗り。


 高級車の中には、小太りの男性と、40歳ぐらいの中肉中背、人当たりの良さそうなスーツの男性が、向かい合って座っていた。


 私は小太りの男性の横に座った。

「よろしくお願いします」

 行きたくないが、一応挨拶しておいた。


「こちらこそ、よろしくお願いします」

 小太りの男性と、人当たりのよさそうな男性が挨拶。


 その後、またもや車内は沈黙。


 小太りの男性は、少し顔を赤くして外を眺めているし、人当たりの良さそうな男性は、じっと私を見ている。いや見ていない?目が合わない、どこ見てる?私の後ろ?


 私は後ろを振り向くが、後ろは高級なシートと、頑丈そうな後部ガラスしかない。


 私が前を向くと、人当たりの良さそうな男性と目が合い、微笑まれてしまった。

 何?なんなの?


 やることがないので、外を眺めていたら、夕日が落ち、外はすっかり真っ暗の夜。


 本当に真っ暗、いつの間にか、住宅街を抜け、主要道路を抜け、どこかの森の中の細い一本道を走っている。



「あの~。どこに向かっているんですか」

 不安にかられた私は、小太りの男性に訊ねてみた。


「トンネルです」


「トンネル?」


「もうすぐ着きます」


 乗って来た高級車が止まった。


 高級車のライトに照らされた、レンガ造りの古いトンネルが目に前にある。


「え~と、なぜここに?降りませんよね」

 私は願いを込めて、聞いてみた。


「降りますよ。なぜって、福井さんが、うるさい所は苦手だとおっしゃいましたから、静かな場所と思い、ここを選ばせていただきました」


「いやいやいや、静かだけれど…違うでしょ。私は降りませんよ」


「なぜです?ここは、心霊スポットの名所。通称、黄泉の国へのトンネルです。地元でも実際に幽霊が見れると評判の場所です」


「そうだとしてもです。怖いです。怖すぎます。絶対に私は車から降りません」


「そうですか…。仕方ありません」

 小太りの男性は一人で降りてしまった。


 残されたのは、人当たりが良さそうなスーツの男性と、私。


 スーツの男性はニコニコしてこちらを見ている。


「あの~。降りられないんですか、あの方は降りて行きましたよ」


「ええ、そうですね、そろそろ時間なので降ります。どうです一緒に」


「いいえ、いいえ、私は結構です」


「そうですか。ではお先に」

 そう言うと、スーツの男性は、すーと消えてしまった。


「ひっ!・・・・」絶句。

 一拍置いて、

「ぎゃあ~あああ!。たすけてぇ~えええ!」


 私は、慌てて車のドアを開け、外へ飛び出した。


 外は真っ暗、車のライトに照らされたトンネル。

 見渡したが、小太りの男性はどこにもいない。

 車に駆け寄り、運転席をのぞき込んだ。運転手のセバスチャンさんもいない。


 私は、何が何だかわからず、名前を呼ぼうとした、

「小太りの…。私、あの人の名前を知らない…。セバスチャンさ~ん」「セバスチャンさ~ん」


 大声で読んでも返事がない。


 草木を揺らす風の音、かすかな水の音、車のライトに照らされたトンネルがこちらを見ている気がする。

 私は、今にも泣きそうで、怖い、怖い、漏らしそう。動けない。

 私は車の横に、へたりこんだ。


 遠くからこちらに近づく駆け足が聞こえた、振り向くと、小太りの男性と、セバスチャンさんが私を見て驚いている。


「大丈夫ですか?」


 私は思わず、セバスチャンさんに抱き着いた。


「怖かったです。怖かったー。一緒に乗って来た男性が消えたんです。私の目の前で、外に出たら誰もいないし、怖かったー」

 私はひとしきり、セバスチャンさんにしがみつき泣いた。めっちゃ泣いた。

 セバスチャンさんは私が泣き止むまでずっと背中をさすってくれた。


 私は落ち着いきを取り戻してから、小太りの男性と一緒に車に乗り込んだ。


 私は車内をキョロキョロ。車の中には誰もいない。


「一緒に乗っていた、人当たりが良さそうな中肉中背の40台ぐらいのスーツを着た男性は誰ですか、一緒に乗って来ましたよね」


「いいえ、この車に乗っていたのは、私と福井さん、運転手のセバスチャンだけです」


私は絶句した。背筋に冷たい物が走る。

「早く、早く、早く、出発しましょう」


 私は、小太りの男性の袖をつかんだまま、目をつぶっている。

 外は見たくない、車内も怖い。


 車が動き出した。

 車は順調に森の坂道を下っていく。


 私は目を開けた、目の前には小太りの男性が水のペッドボトルを私に差し出している。

「大丈夫ですか」


 ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ。

 私は一気に水を飲みほし、ほっと一息。


「ふ~う。大丈夫です。落ち着きました」


「すいませんでした。あなたに楽しんでもらおうと、うるさくない場所を選んだんですが、怖い思いをさせてしまいました。本当にすいません」

 小太りの男性は、深く頭を下げた。


「頭を上げて下さい。もう、終わった事です」

 私は、怒っている。


 小太りの男性はおずおずと聞いてきた、

「1つ質問いいですか、さっき私の名前ではなく、なぜ、セバスチャンの名前を呼んだのでしょう?」


「え!?だって、私、あなたの名前を知りません。自己紹介されてないのでー」

 気のない返事。怒っている。今の私は意地悪だ。


 小太りの男は崩れ落ちた。両手で顔を覆い、ぶつぶつ何か言っている。


「俺の名前は、木下デジンです。お願いです、もう一度、チャンスを下さい」


「いいえ、結構です」


「お願いします、今度は間違えません。あなたを喜ばせてみせます」


「本当に結構です。いりません」


 自宅に到着するまで、このやり取りを続けたが、今回の私は折れなかった。


 家に帰って来た私は、ぽつりと、

「木下デジン…。名前がわかったけど、もう私とは関係ない人」












挿絵(By みてみん)

白河・DG・夜舟様から頂きました。

高級車で移動



完璧な決裂。次どうなるのか。

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― 新着の感想 ―
 ロミさん、こんにちは。 「お金で殴る彼氏と普通の私 除霊」拝読致しました。  また、お呼び出し、普通の格好でいいらしい。  で、この人、誰?  どこ見てるの? 私の後の方?  ん? どこに向か…
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