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淡々三国演義  作者: ンバ
第十三回 李傕と郭汜大いに兵を交え、楊奉と董承双で駕を救う
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五、河東の徐公明

 鑾輿が新豊《しんほう》を通過し、霸陵《はりょう》へ至ろうとする時あたかも秋天に当たり、金風が俄かに巻き起こった。忽ちに喊声大挙し、数百の軍勢が橋上へと至りて車駕の行手を遮った。


「汝らは何者だ!?」


 と、帝が勵声にて問われれば、侍中の楊琦も橋上まで馬を繰りて、


「聖駕がこの地を過ぎ去らんとしておるのに、敢えて阻もうとするとは、どういう了見か!」


 一団から二人の将が進み出て言うよう、


「我々は、郭将軍の命でこの橋の守備に当たり、些細な賊徒の侵犯を防いで参った者。聖駕と申すなら、速やかに陛下のご尊顔を拝見させ給う。しからば直ちにここを通そう」


 楊琦が高らかに珠簾を掲げれば、帝がこれを諭した。


「朕は躬らここにおる。卿は何故退がらぬのだ」


 すると諸将は皆万歳を叫び、両翼に分かれて車駕の通行を見送った。


 二将が戻って郭汜に「車駕は既に通過されました」と報せると、郭汜は語気を荒げた。


「俺は張済を騙して車駕を奪い返し、再度郿塢へ入るつもりでおったのに、お前たちはどうして勝手に逃したりしたのだ!!」


 かくて二将を斬り捨てると、郭汜は兵を整えてすぐに帝を追った。


 車駕が華陰《かいん》県を過ぎようとした折、後方から天を裂くような喊声が俄かに巻き起こり、


「そこの車駕、止まれい!」


 と叫ぶ者あり。言わずもがな、郭汜である。


「うう、やっと狼の巣から逃れ得たと思ったら、今度は虎口に迷い込むとは……」


 帝は涙ながらに大臣らに告げ、皆が色を失うなか、賊軍は漸近してきた。


 と、そこへどっと響き渡った太鼓の音声とともに、山間から一人の将軍がまろび出た。「大漢楊奉」の四字を記した大旗掲げ、千余の手勢とともに殺奔した一団。李傕に敗れた後、手勢を連れて終南山《しゅうなんざん》に駐屯していた楊奉が、車駕が近隣を通過すると聞いて、露払いの為に馳せ参じたのであった。


 布陣が終わると、郭汜の部将崔勇(さいゆう)が出馬し、楊奉の事を逆賊であると散々に罵った。これに激怒した楊奉、陣中を振り返って言った。


「公明《こうめい》はおるか!」


 声に応じて、大斧を携えた一人の将が驊騮《かりゅう》を疾駆させ、崔勇を相手取る。が、両馬が交わる事ただ一合で崔勇は切って落とされた。


 楊奉が勢いに乗じて余勢を掩殺し、大敗を喫した郭汜はそのまま二十里あまり引き退がっていった。


 かくて軍勢を纏めて謁見した楊奉に、帝が慰労の辞を述べる。


「朕を窮地からよくぞ救ってくれた。その功績は多大であるぞ」


 楊奉が頓首して再拝すると、帝は宣った。


「ところで、先程賊を斬ったのは何者じゃ?」


 楊奉はかくてかの将軍を引見し、車の下に跪拝させて述べた。


「この者は河東楊郡の徐晃《じょこう》、字を公明《こうめい》と申します」


 帝はこれを慰労され、楊奉の庇護を受けた車駕は華陰《かいん》へと至った。将軍の段煨《だんわい》から衣服と飲食とが献上され、この夜、天子は楊奉の陣営にてお休みになったのであった。


 一敗を喫した郭汜は、明くる日もまた軍勢を整えて楊奉の陣営を襲撃してきた。楊奉側は徐晃が先陣を切ったが、郭汜の大軍に八方を囲まれてしまい、天子と楊奉がその中心部に喘ぐ形となった。


 まさに危急の中に在らんという時、忽然と東南の方角から喊声が沸き起こり、一人の将が手勢を引き連れ、馬を飛ばして切り込んできた。賊軍が潰乱したそこへ、徐晃が勢いに乗って攻勢に出、郭汜軍はまたも大敗を喫した。


 駆けつけた将軍を天子が見やれば、これぞ国戚の董承《とうしょう》である。帝が哭泣して経緯を話すと、董承は言った。


「陛下、ご心配なく。臣が楊将軍と誓って二賊を斬り、天下を安んじてご覧に入れます」


 帝は急ぎ洛陽へ向かうよう命を出し、連夜車駕を飛ばして、ついに弘農へと辿り着いた。

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