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淡々三国演義  作者: ンバ
第十回 王室に勤めて馬騰義を挙げ、父の讎に報いて曹操師を興す
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二、馬孟起見参す

 李傕・郭汜・張済・樊稠は、馬騰と韓遂が至った事を聞き知ると、一同防護策を僉議した。


 謀士賈詡が言うよう、


「馬騰・韓遂の両軍は遠方より来攻しておる。ひたすら溝を深く、砦を高くして堅守し、防衛に努めるべきであろう。百日を過ぎずして彼方は糧秣が尽き、必ずや自ずから撤退していく筈。然るのちに兵を率いてこれを追撃したなら、二将を倶に捕える事ができよう」


 そこで、李蒙と王方が進み出て述べた。


「斯様な消極策は良計とは申せますまい。我々に精兵一万人をお与えくだされば、立ち所に馬騰と韓遂の首を斬り、麾下に献じてご覧に入れます」


 賈詡の反駁、


「今もしすぐに交戦したなら、間違いなく敗北を重ねる事になるぞ」


 李蒙と王方も引っ込みがつかない。


「もし我ら二人が負けたならば、その時は斬首してください。だがもし我らが勝利を収めたならば、その時は貴公が首級を捧げるがよかろう!」


 と、声を揃えた。


 賈詡は顔色一つ変えず、李傕と郭汜に更に提言する。


「長安の西方二百里の位置に、険峻で聞こえる盩厔山がございます。張・樊の二将をこの地へ拠らせて塁壁を堅めさせ、李蒙と王方が自ら兵を率いて敵を迎撃するのがよろしいかと存じます」


 李傕と郭汜がその案に従って一万五千の人馬を李蒙と王方に与えると、二人は欣喜して去ってゆき、長安より二百八十里の位置に幕営を設けた。


 西涼軍がやって来ると、両個は軍勢を率いて迎撃に出た。西涼の軍馬は路を塞ぎ止めて陣形を展開、馬騰と韓遂は轡を揃えて出向し、王方と李蒙を指して痛罵した。


「国家に仇為す賊徒めが! 誰ぞ、やつを捕えられる者は──」


「俺が行きます」


 言い終わらぬうち、一人の年若き将軍が名乗りを上げた。


 面は冠玉、眼光はあたかも流星の如く、虎の体に猿の臂、彪の腹に狼の腰、手に執るは長槍、坐するは駿馬、陣中より飛ぶように罷り出でしこの少年こそ、馬騰の息子の馬超《ばちょう》──字を孟起《もうき》である。この時、年は十七であり、既にその武勇の前に敵無しと謳われていた。


「笑わせおって! 貴様のような小僧に我が相手が務まるものか!」


 王方は馬超の幼若を侮り、馬を勇躍させて迎撃に出たが、数合と持たずして馬超の長槍に身体を刺し貫かれ、馬上から強かに崩れ落ちていた。


 王方が刺し殺されたのを見て、李蒙はただ一騎で馬超の背後へ迫った──が、馬超が気付く様子はない。


 馬騰は陣門から下へ向かって絶叫する。


「超! 後ろから敵が来ておるぞーっ!!」


 声のなお絶えぬうち、ただ見やれば馬超が已に李蒙を馬上で手捕りにせんとしていた。馬超は李蒙が接近してきている事にとうに気付いており、故意に弛緩した素振りを見せる事で油断を誘ったのである。


 敵方が馬に乗って接近し、槍を振り上げて刺そうした折、馬超の身は一筋の閃光と相成り、李蒙の刺突は空を切る。両馬が並んだ際には、馬超のしなやかな猿臂は李蒙を既に生捕りにしていた。


 王方・李蒙がいともあっさりと破られ、主将を失った軍勢は恐れをなして逃げ出した。馬騰・韓遂は勢いに乗じて追撃、大勝を収めて直接敵の駐屯地である要害へ迫ると、捕えた李蒙を斬首して号令をかけた。

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