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淡々三国演義  作者: ンバ
第十回 王室に勤めて馬騰義を挙げ、父の讎に報いて曹操師を興す
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三、裏切りの代償

 李傕と郭汜は、李蒙と王方がいずれも馬超に討ち取られた事を聞き、まさしく賈詡に先見の明がある事を確信、その計略を重く用いるようになったのである。


 賈詡の唱える理屈としては、ひたすら関の防御を固めて、他の事に託けて交戦したり、迎撃してはならない──というものだった。


 李傕らがその計に従えば、果たせるかな、西涼軍は二ヶ月を待たずして糧秣や秣がともに欠乏し、いつしか撤退が議される程の窮状に追い込まれていた。

 

 そんな折、長安城中にある厩《うまや》の家僮が出頭し、「家主が劉範《りゅうはん》・种邵《ちゅうしょう》とともに、外部の馬騰・韓遂と内応を目論んでいる」等の情報を訴え出てきた。激怒した李傕と郭汜は、彼ら三人の一家を老若男女問わず市に引き摺り出して斬殺、三人の首級は門前に晒された。


 馬騰と韓遂は、軍糧が既に尽き果て、更に内応の手筈まで漏れてしまった事を鑑み、已む無く軍を撤退させた。


 李傕・郭汜は張済《ちょうせい》に軍勢を率いさせて馬騰を、樊稠《はんちょう》には韓遂を追撃させ、西涼軍は大敗を喫した。ただ馬超は劣勢の中で死を賭して戦い抜き、張済を退かせた。


 一方の樊稠は、陳倉の近隣にて韓遂を目の前に捉えていたが、韓遂はそこで馬を勒えて訴え出る。


「私と君とは同郷の出身だというのに、今日、どうしてこのような無情な仕打ちをなさるのかね」


 樊稠も馬を留めて答える。


「上司の命令を違えるわけにはいかんのだ」


 韓遂、


「私がこうしてやって来たのはただ国家の為だ! 君はなぜかくも頑迷に私を追い詰めようとする!」


 韓遂の必死の訴えが通じたか、樊稠はその言を聞き終えるや馬首を返し、兵を収めて撤退。韓遂を見逃したのであった。


 しかし、李傕の甥である李別《りべつ》がこのやり取りの一部始終を目撃しており、舞い戻って叔父にこの事を報せてしまった。


 李傕は恚怒《いど》し、直ぐに兵を興して樊稠を討とうとしたが、そこで賈詡が諌めた。


「目下、人心が定まっておらぬのに、頻りに干戈《かんか》を交えるものではない。張済と樊稠の功を労わんと称して酒宴を催し、席上にて彼を捕えて斬ってしまうに越した事はなかろう。秋毫《しゅうごう》も労力を費やさずに済むぞ」


 賈詡の言に喜んだ李傕は、すぐに宴席を設けて張済と樊稠を呼び寄せた。二将は忻然と赴き、宴も酣《たけなわ》となった頃、李傕は忽然と顔色を変えて述べた。


「樊稠。なにゆえ韓遂と誼を通じ、造反を企てようとした?」


 仰天した樊稠が弁明をする暇もなく刀や斧が一斉にその身に襲いかかり、あっという間に落とされた樊稠の首が机の下へと転がった。


 脅嚇《きょうかく》された張済が地に伏すと、李傕がその身を助け起こして言うよう、


「樊稠は反逆を企てた故に誅殺した。君と私とは心腹の間柄ではないか、何故驚懼(きょうく)する必要がある」


 かくて樊稠の手勢は張済の指揮下に入る事となり、張済は自ら弘農《こうのう》へと去って行った。


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