六、魔王からの招待状
その日のうちに一行は洛陽へと帰還し、少帝と何太后は再会が叶ってともに声を上げて泣いた。
その後、宮中の点検が行われたが、宮室に代々伝えられてきた「伝国の玉璽」が失われていた。
董卓は城外に兵を留め、鉄騎兵を引き連れて市街を我が物顔で練り歩いた。これが毎日のように続くため、百姓は戦々恐々としていた。
董卓は入廷の際にも何一つとして憚ることがなく、後軍校尉の鮑信は袁紹に見えて、
「董卓には二心がある、早めにやつを除いてしまった方がよいのではないか」
と述べたが、袁紹は、
「まだ新政権が発足したばかりの時期に、むやみに騒動を起こすのはまずかろう」
として取り合わなかった。鮑信はそこで司徒の王允に同様の相談を持ち掛けたが、
「後で話し合ってみよう」
と、やはりにべもない返答しか得られない。諸人の危機感の無さに呆れてしまった鮑信は、手勢を纏めて縁故の地である泰山へと去って行った。
董卓は洛陽入りの際、何進兄弟に属していた兵を抜け目なく招致し、その悉くを統制していた。
機ここに至り──そう考えた董卓は、とうとうその野心を露わにして謀臣の李儒に諮った。
「わしは、帝を廃して陳留王を新たに擁立しようと考えておるのだが、如何か?」
「今、朝廷には確固たる指導者がおりませぬ。この機会に乗じて行動を起こさねば、すなわち変事が起こってからでは遅いというもの。明日、温明園に百官を集めて、帝の廃立を宣言いたしましょう。従わぬ者どもは見せしめとして斬り殺してしまえば、誰も公に逆らおうなどとは考えますまい。権威を一手に握るのはまさに今日、この時ですぞ!」
李儒の進言に喜色を浮かべた董卓は、翌日直ちに大規模な宴席を設え、文武百官を招いた。百官は董卓を恐れており、敢えて欠席しようと考える者は誰一人としていなかった。




