嘘
会社を飛び出した直哉の携帯に一通の動画が届き、新宿のホテルへ急いでいた。
ピーッ。
ガチャ。
フロントで受け取ったカードキーでロックを開けて、ドスドスと中に入る。
「あ、来たんだ〜。」
そこにはベットに寝転がってテレビを見るセリカが居た。
「テメーッ!!ふざけんじゃねーぞ!?」
息を切らせながら直哉がセリカの前に立ちはだかった。
「え?何が?」
そう言ってセリカは笑っていた。
「これっ!」
直哉はセリカに自分の携帯を投げつけた。
直哉の携帯がベットの上で大きな音を出して動画を再生している。
「どうもー!島田セリカです!
動画を見てる皆さん、こんにちは〜。
アレ?こんばんはかなぁ?」
それは今いるベットでセリカが自撮りしている映像だった。
「実は〜、発表された週刊誌の件で
当分芸能界を干されることになっちゃいました〜。ふぅ〜。」
動画の中で泣いている振りをするセリカ。
「それで、皆んなに聞いてもらいたいことがあって、今日は動画を作りました。
…実は私、あの3人の男に脅されていたんです。それで、仕方なく3人とお付き合いしてました。あの3人はグルです。」
そう言って本当に涙を流すセリカが映る。
「私はやっとこの恐怖から解放されて、今は少し気持ちが楽になりましたが…
大好きな芸能界の仕事が出来なくなると寂しいです…。」
現実のセリカは面白そうに動画を眺めている。
「でもしばらくはゆっくり休憩を取りたいと思います。皆さん…それではしばらくの間さようなら!」
動画が終了するとセリカはニンマリと笑いながら直哉を見た。
「どう?うまく撮れてるでしょ?」
「…殺すぞ。」
鋭い目つきでセリカを睨む直哉。
「まぁまぁ、そんなに怒んないでよ。まだYouTubeにはアップしてないから。」
「…。」
「まだいくつかパターン有ってさ、1人の男を名指しでディスるのも作ったんだけど見る?」
言い終わるか終わらないか位に直哉がセリカの髪に掴みかかり、グッと顔を上に向けた。
「…マジで殺されたくなかったら止めろ。」
「じゃあ殺してよ。」
セリカも鋭い目つきで直哉を見る。
直哉はそのまま首に手を掛けようとしたが、ふと日菜子の顔が目に浮かび手を離した。
「死にてーなら、自分で飛び降りでもやって死ねば良いじゃねーか。巻き添えにすんな。」
「…なんだ、つまんない。
アンタだったら怒って殺してくれると思ったのに…。動画作って損したわ。」
「頭おかしいんじゃねーの。」
そう吐き捨てて、直哉は部屋の出入り口へ向かった。
ガチャ。
ドアを開けると1人の男が血相を変えて立っていた。
「あっ…?」
「っんだテメー!島田セリカ中にいるんだろ!!出せよ!!」
メガネをして一見真面目そうな男だった。
「知らねーよ。」
「どけっ!」
そう言って直哉を手で避けて男が中に入る。
入れ違いで直哉は外に出たが、ドアが閉まる瞬間…
怒号とガラスが割れる音がしてドアが閉まった。
「…。」
部屋の中では男がセリカに掴みかかり迫っていた。
セリカは殴られて口元から血が出ている。
「ふざけんなよ!殺されたいのか!」
「フフッ。そうだよ…殺されたい。」
怒りに我を忘れた男が、近くにあった花瓶をセリカに向けて振り下ろした。
(これで全てが終わる…。)
そう思いながらセリカが目を瞑った瞬間、
花瓶はセリカに当たらなかった…。
目を開けると、男の腕を抑えた直哉が目の前に立っていた…。




