8匹目 3
「「・・・」」
「ん?どうかしたか2人とも」
人化の魔法を使い16歳ぐらいの容姿(魔法学園の高等部に入学するという事はライナス達は16歳という事になるのでそれに合わせてみた)の人間になったらライナスとボルテールの2人は驚いたような顔をして固まった。
「「・・・」」
尋ねてもまだ固まったままの2人。
「ロイ,2人はどうしたんだ?」
「たぶん,ルナが女の子だとは知らなかったんじゃないか?」
「ああ,そうか。我の本来の姿とこの口調では性別までは分からぬな。むしろ男だと思うか」
「私も裏庭で会った時に確認していなかったら分からなかっただろう」
「ああ,あの時は驚いたぞ」
「いや,あの時は珍しい子犬だと思っていたから・・・」
「ふっ,別に気にしておらぬよ」
「それならいいが。・・・それにしてもその姿でその口調は似合わないな」
「ふむ。確かにそうだな」
今の私の姿は腰まである銀色の髪に切れ長の銀色の瞳,亜空間に入れてあった十字架のピアスを右耳に,イヤーカフとピアスがチェーンで繋がった物を左耳につけて,淡い水色のシンプルなワンピースを着ている状態である。十分,美少女と言える姿だ。まぁ,美少女と言っても人化の魔法は魔力量が多ければ多いほど見た目が美しくなる魔法で,人化の魔法は発動時に魔力を大量に必要とするから“人化の魔法を使える=美形”なんだけどね。細かい容姿の違いは元の性別や性格によって変わるものらしい。とにかくそんな美少女にこの口調は確かに似合わない。
「なら,人間の女の子らしい話し方にしておこうかな」
「・・・」
「何?もしかして可笑しい?」
「いや,そう言う話し方も出来るのかと思っただけだ」
「と言うよりさっきまでの話し方の方が演技だから」
「は?」
「さっきまでの見た目や私の立場を考えるとああいう話し方の方が良いんだよね。だから,ああいう話し方をしていただけ」
「なら,その話し方が本来の話し方なのか?」
「さぁ,どうだろうね?それよりいつまで2人は固まっているのかな?」
「「はっ!」」
「気が付いた?2人とも」
「ル,ルナ」
「何?」
「いや,その,お,女の子だったの?」
「そうだよ」
「お,女のくせにす,好きとか簡単に言ったのか!」
「え?だってボルテールの髪や目の色は本当に好きだもの。好きな物を好きと言ってなにがいけないの?」
「な,ま,また,~~~っ!し,失礼します!」
真っ赤になったボルテールは慌てて部屋から出て行った。
「髪や目の色が好きだと言っただけで別に告白したわけでもないのに何であんなに照れるんだろう?」
「カイロスはあの髪や目の事で色々と言われてきたからな。それを好きだと言われれば照れもするだろう。しかも女の子にだからな」
「うーん,何となくそんな気はしていたけど随分初心なんだねぇ」
「そう言うルナは全く照れていないね。俺の髪や目も好きだって言ってたけど,普通の女の子は相手の容姿を褒める事はあってもあんまり好きだとか言わないよ」
「見た目はライナス達と変わらないぐらいでも本来の年齢はもっと上だからね。自分よりだいぶ年下の子に好きだと言うのに照れるわけないよ」
「そう言えばルナの年齢っていくつなの?」
「女性に年齢を聞くのは失礼だよ」
「あ,ごめん」
私は気にしないが精神年齢は30歳だけど肉体年齢は10歳だから話すとなるとややこしいんだよね。
「とにかくこれでアルテナ魔法学園に通えるよね?」
「いや,試験を受けて合格しなければならないから通うことは無理だ」
「試験はいつ?」
「今月だ」
「なら問題ないよ。確か試験料さえ払えば誰でも試験は受けれるんだよね?」
「ああ。だが,貴族以外の者への試験はかなり難しいぞ」
「誰に言っているのロイ?私は神獣フェンリル。人間が作った問題ぐらい簡単に解けるよ。試験料を払うぐらいのお金なら持ってるしね」
「試験が問題ないのは分かるが何でお金まで持っているんだ?」
「覇王の森には時々実力試しにやってくる人がいるからね。一応皆実力がある人達だから本当に危なくなったら森から出て行くんだけど,たまに自信過剰な馬鹿もやってくるんだよねぇ。そういう人は森で死んじゃうんだよ。死体は魔物が食べるけど装備やお金はそのまま放置されるからそういうのを私が拾ってるんだ。自信過剰な馬鹿って大概金持ちのお坊ちゃんで装備の良さや周りの人のおかげで勝ててたのを勘違いしてる奴なんだよね。だからお金は持ってるんだ」
この世界に生まれてから10年,ずっとそうやってお金を集めていれば結構な額になるものなんだよね。おかげで私は割りとお金持ち!それにこれからはギルドってやつに登録して冒険者になろうと思ってるからまたお金を稼げるしね。私は食事代とかいらないし。
「えっと,じゃあ,ルナも一緒に学園に通えるの?」
「うん」
「やった!」
ライナスは嬉しそうに笑って私に抱きついてきたけど,私が女の子だと思い出して慌てて離れた。この世界の男の子は皆こんな感じなのかな?
「別に抱きつくくらい気にしないよ?」
「いや,ルナ。人間として生活する気ならそこは気にするべきだ」
「そうなの?」
「ああ」
前世では結構皆スキンシップが多かったから私は全然気にならないんだけどなぁ。あ,でも日本人はこんな感じだったかも。私は生粋のイタリア人だけど結構色々な国に行ってて,日本にも何回か行った事がある。
「分かった」
「本当に試験大丈夫か?」
「大丈夫だよ。私が分からないのは人間同士の細かい対応の仕方だけだよ。それ以外なら,この世界に関するほとんどの事を知ってるよ。人間の事も貴族の名前や関係性に裏の情報まで知ってるよ」
「そんな事まで知ってるのか」
「うん。あ,でも一応さっきみたいに知らない事もあるから試験までに色々と教えてくれると助かる」
「分かった。私は仕事があるからライナスかカイロスに教えてもらえ。一先ず学園に入学するまでの部屋は用意しておく」
「分かった。それじゃあ,ライナスよろしくね」
「う,うん」
まだ顔を赤くしていたがライナスは了承してくれた。これでこの世界での人間の感覚もある程度分かるだろう。まぁ,知識として分かるだけで納得できるかは怪しいけどね。




