学習漫画
研究所の前の広場。日課となった【ゴミ召喚】の時間がやってきた。
「それじゃ、今日の召喚いきます! 【ゴミ召喚】!」
俺がスキルを発動すると、魔法陣からポンッ、と間の抜けた音を立てて何かが出現した。
それは一冊の分厚い本だった。表紙にはポップなキャラクターのイラストと、『マンガでわかる! なぜ?なに? 科学のふしぎ(小学1〜2年生向け)』というデカデカとしたタイトル。どこかの家庭で読まれなくなり、資源ゴミに出されたものだろう。
「む? 今日は書物か。どれどれ……」
バルトさんが無造作に本を拾い上げ、パラパラとページをめくり読み始めた。
「私にも異界の文字がスラスラと読めるようになるとは、本当に便利なスキルですな!」
転移時のお約束である『言語理解スキル』は、俺が召喚したアイテムの文字をこの世界の人々が読む際にも適用されるらしい。謎の便利機能である。
しかし、問題はそこからだった。バルトさんの肩越しに漫画を覗き込んでいた研究員達が、突然悲鳴のような声を上げたのだ。
「ば、バルト主任! ここを見てください! 『カミナリの正体は電気』!? 神と怒りと言われる雷が、雲の中で氷の粒がぶつかり合って発生する自然現象だと書いてありますよ!?」
「ま、待て! こっちには『物が燃えるには酸素が必要』と書いてあるぞ! 火の魔石がなくても、空気中の成分を使えば燃焼をコントロールできるということか……!」
「主任! この『水のじゅんかん』というページを! 雨が降り、川となり、海から雲へ還るシステムが、こんなにもわかりやすい絵解きで……っ!」
小学生向けに、わかりやすく描かれた『科学の基礎』。
それは、基礎的な物理や化学が発達していないこのファンタジー世界の人々にとって、まさに世界の真理を記した神の魔導書そのものだったのだ。
「カイト殿ッ!! これは大発見ですぞ!! 異界の英知が、この書物に網羅されているぞ!!」
「うおおおおっ! 次のページをめくってくれ!」
「待て、まずは私がこの『磁石』の項目を書き写す!」
目を血走らせて俺の肩をガンガン揺さぶるバルトさんと、たった一冊の漫画のページを巡って怒号を飛び交わせる研究員たち。研究所は、昨日以上の大パニックに陥っていた。
……あの、それ、日本じゃ小学生が読むやつなんですけど。
俺はまたしても、異世界人に特大のカルチャーショックを与えてしまったようだ。
お読み頂きありがとうございます。
ブックマーク、★ボタン、できたらよろしくお願いします。
次話明日7:00に公開予定。




