ギーゼラの奮闘
前半は筆頭側仕えのギーゼラの視点のお話です。
後半は、ハイデマリーの屋敷へ向かったレティーツィアの視点でのお話になります。
アードルフとオーブリー、それから他の護衛騎士達はレティーツィア様と別れた後に王城に潜入していました。
ですが、悔しいです。 あの裏切り者のエイバルのせいで計画は失敗して、アードルフとオーブリーは捕まってしまいました………
全ては、あの裏切り者のエイバルのせいです!
ギーゼラはエイバルへの言いようのない怒りでどうにかなりそうだった。
エイバルさえ裏切らなければ、アードルフとオーブリーはエイバル率いる王城騎士に待ち伏せされることはなかったでしょう。
エイバルが裏切ったせいで、アードルフと、アードルフを助けようとしたオーブリーは捕まってしまったのですから……
『アードルフを1人だけ捕まらせるわけにはいかない、それに僕がいた方がアードルフと逃げやすくなるはずだ。 ………ギーゼラ、すまないが君は護衛騎士達とともに、抜け道を通ってひとまずここから逃げてくれ。 さすがのエイバルも、筆頭側仕えしか知らないような抜け道なら捕まえることはできないだろうしねぇ。それじゃあ、僕はアードルフの所に行くよ。』
と、オーブリーはなんてことないように話しながら、エイバルに見つかってしまったアードルフの元に向かって行ってしまったのでした。
呆然とするわたくしには、オーブリーを止める間もありませんでした。
―――けれど、残念ながらエイバルの方がアードルフとオーブリーよりも考えは上でした。
エイバルは予想以上に多くの王城騎士を引き連れていたようで、さすがに王位継承者で次期女王予定のレティーツィア様の筆頭護衛騎士のアードルフと副護衛騎士のオーブリーとはいえ、多勢に無勢でした。
レティーツィア様の筆頭護衛騎士のアードルフと副護衛騎士のオーブリーが弱かっただなんて、そんなことはありません! ………ただ、あまりにエイバルが連れている王城騎士の人数が多すぎただけ、ということなのですから。
エイバルの合図でアードルフとオーブリーを捕まえようとする王城騎士達と、アードルフとオーブリーは善戦をして戦っていました。ですが、やはりアードルフとオーブリーは王城騎士達に最後は捕まってしまいました。
きっと、2人が連れて行かれる先はきっとハイデマリーのところでしょう。
ギーゼラはエイバルに対して憎しみと言い表せないやるせなさを感じていた。
かつては、エイバルも同じレティーツィア様の側近で、筆頭文官のエイバルとは協力し合っていた仲でした。 でも、その時のことを思うと、今のエイバルと私達の関係は最悪です。
仲間だったはずのエイバルにまた裏切られて、今度はアードルフとオーブリーまでもが捕まえられてしまった。
………あぁ、レティーツィア様わたくしはどうすればいいのですか。
アードルフとオーブリーがいない今、わたくしはどうすればいいのでしょうか………
ギーゼラは心の中で悲しい悲鳴をあげた。
「ギーゼラ、この先はどうしますか?」
アードルフとオーブリーがいない状況で残された護衛騎士のリーダー格であるルトバがわたくしに聞いてきます。
えぇ、本当に。これからどうしましょうか。
ギーゼラは必死に頭を働かせて考えた。
あぁ、そうです。 まずはオーブリーが最後に言い残したことをするべきでしょうか。
「………ルトバ、まず私達はここから逃げなければいけないわ!
わたくしについてきてください。」
わたくしはルトバにとにかく逃げようと提案しました。
「そうですね。 みんな、ギーゼラについていって、この場からひとまず退却するぞ。」
「はっ!」
ルトバの呼びかけに、他の護衛騎士達が頷いて、わたくしについてきます。
次はレティーツィア様と合流したい所です。
こういう時のために、レティーツィア様から言われた緊急時の待ち合わせ場所を決めていただいていて助かりました。
やはり、レティーツィア様の考えは深いです。 ここ以外の緊急時の待ち合わせ場所を決めていたおかげで、わたくし達はレティーツィア様と合流して打ち合わせをすることができるのですから……!
わたくしはルトバ達を抜け道に案内しながら待ち合わせ場所に向かって行きます。
側仕えなら、いくつか抜け道くらい把握しているものです。ましてや、わたしくはレティーツィア様の筆頭側仕えだったのです。
普通の側仕えざ知らない細かい抜け道だって、正確に把握しているのです。
まさか、レティーツィア様に不自由なく王城で生活していただくために覚えた抜け道が、こんな形で役に立つとは思いませんでした。
わたくしはそんなことを感慨深く思いました。
―――そして、わたくしはルトバや他の護衛騎士達を引き連れて、レティーツィア様との待ち合わせ場所に向かったのでした。
―――――
ハルトムートと気になっていた場所に向かったレティーツィアは、その場所がハイデマリーに与えられた屋敷だと気づいて驚いた。
この禍々しい黒いモヤはなんなのだろう……
レティーツィアは、秘密の地下通路を通っている時に僅かだけど黒いモヤが出ている場所を見つけて異変に気がついたのだった。
まさか、ハイデマリーの屋敷からこんな黒いモヤが出ているなんて……
レティーツィアは気持ち悪い黒いモヤが出ているハイデマリーの屋敷を見つめた。
「レティーツィア、其方が気になっていたのはこの家だな?」
「はい、そうです。ハルトムートにも、あの家から出てる黒いモヤは見えますか?」
「いや、私には見えんな。 何か良くない気配は感じるのだが……」
「そう、ですか」
やはりハルトムートには気配だけであの黒いモヤは見えないようだ。
一体、あの黒いモヤはなんなのだろう?
レティーツィアは、ハイデマリーの屋敷付近から出てくる黒いモヤに嫌な感じを覚えていた。
―――カシノニア王国に戻って来てから気が付いたのだが、こういう時に精霊魔法はとても便利だ。
属性はあるはずなんだけど、なぜか私はイメージして想像したら、その通りにどんな精霊魔法でも使えちゃうみたいなのだ。
不思議だよね……
そのことを話した時、ハルトムートが「やはり、其方は………」と呟いて、またぼんやりしちゃったからどうしてこんなに私の精霊魔法が万能なのか、原因は聞けてない。
けど、まぁ、私の精霊魔法は万能ってことは悪いことじゃないし、まぁいいんだけどね。
ハイデマリーの屋敷には鍵がかかってたけど、私の精霊魔法を使えば簡単に鍵は開錠できた。
――精霊魔法にかかれば、普通の鍵なんてなんてことないよね!
私とハルトムートは精霊魔法で気配を消して、ハイデマリーの屋敷の黒いモヤの発生源を辿っていった。
ハルトムートと歩きながらレティーツィアは、『この屋敷は、全体的に黒いモヤが充満していて気持ちが悪い』と思った。
もしハルトムートがいなくてレティーツィア1人だったら、
『黒いモヤは気持ち悪くて怖いので、黒いモヤの発生源を突き止めるのを諦めていたかもしれないな』と、レティーツィアは思った。
ハルトムートがいることを心強く思いながら、レティーツィアはハルトムートと一緒に黒いモヤの気配を辿りながらハイデマリーの屋敷を進んで行ったのだった。
―――そして、たどり着いたそこで、レティーツィアとハルトムートはおそらくハイデマリーの秘密の隠し部屋だと思われる、黒いモヤの発生源の場所を見つけたのだった。
他の護衛騎士の1人のルトバに、ようやく名前がつきました。なかなかルトバの名前をつけられずにいましたが、ようやくです。ルトバ、遅くなってごめんなさい。
ここまで付き合って読んでくださってくる方に感謝です。あともう少しで完結予定です。なんとか完結までは頑張って書き切りますので、できればもう少しお付き合いいただけると嬉しいです。




