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オーブリーの密かな想い


カシノニア王国を立て直すために、レティーツィアとアードルフ達側近の気持ちは団結した。



そのあと、レティーツィアはアードルフ達側近の気になっていた汚れた格好を精霊魔法で綺麗にしてあげた。


国境沿いで苦労して暮らしてきたのだろうアードルフ達側近の服は薄汚れていて、レティーツィアは自分の側近が苦労してきたんだなと胸が痛かったのだ。


せめて、習得した精霊魔法で綺麗にしてあげたいと思ったのだった。



「みんな、今から精霊魔法を使って服ごと身体を綺麗にするので、息を止めてくださいね。はい、いきますよ〜。」


「え?レティーツィア様?………ぶわっ」



あれ?側近の中で、ギーゼラがなんのことがわからずに息を止められなかったようだ。


変な声をあげて、服ごと綺麗にされている。



「うぅ……ぷはぁ。レティーツィア様。溺れてしまうかと思いました」


「あら、ごめんなさい。でも、息は止めるように言ったでしょう?」


「そう、ですけれどもっ。うぅ。まぁ、そうなんですけれどもぉ〜、レティーツィア様ぁ〜!」



ギーゼラは、拗ねたようにほっぺたを膨らませている。


かわいい……


レティーツィアの筆頭側仕えのギーゼラだが、どことなく抜けていることが多くて、よく他の側仕え達からや側近から揶揄われてた。


ギーゼラは、抜けているところはあるがみんなの愛されキャラなのだ。



「ふふ。ギーゼラ、拗ねないでちょうだい。ね、王城に向かうにしても先に腹ごしらえをしましょう?ギーゼラ、あなたの好きなケーキも食べましょ?」


「へ?ケーキですか!美味しそうですね!

……あ、けど、レティーツィア様。ここには、王城にいた頃みたいにオーブンとかの調理器具もないですし、材料もありませんよ? それに、ケーキを作るならたくさん材料がいりますけど、今のカシノニア王国ではどの食料も高級で。 私たちは実家とは実質縁を切った状態で、あまりお金はないんです。 アードルフ達護衛騎士が狩った獲物を売ったお金で暮らしてるので、食べ物がないってことはないんですけど、ケーキの材料を買うとなると、お金が足りそうにありません。」



ギーゼラはケーキと聞いて嬉しそうにしたが、ケーキの材料を買うお金がないとわかると、すまなさそうに私に話してきた。



「問題ありません」


「へ?」


「ですから。問題はないのです、ギーゼラ。」


「え、レティーツィア様? ケーキの材料も器具もないので、お金がないとケーキが作れないんですよ?」



ギーゼラはレティーツィアに教えるように伝えてくる。



そうだ。

普通なら、ギーゼラの言う通りだ。


ケーキを作るなら、ケーキの材料と器具が必要だ。

もし、それらを持っていないなら、お金を出して揃えなければならない。



だが、レティーツィアには他に方法があるのだ!



「ギーゼラ、私はハルトムートと一緒に過ごして新たな力を得たのです。その力を使えば、食べ物は何でも作れるのです!」


「え?え?食べ物を、作れる……?」



私はドヤ顔でギーゼラに伝えた。

すると、ギーゼラは理解ができないと言う顔で戸惑った表情をした。


そう、食べ物を作れるのだ!


カシノニア王国に帰ってくる前に、ハルトムートのプライベート空間と私の間を繋げてもらったんだよね〜!


だから、いつでもハルトムートのプライベート空間にあるフロレンツィアの実を取り出すことが可能になったわけ。


フロレンツィアの実があるのなら、実らせることも私には簡単だし。フロレンツィアの実を取り出す制限も何もない。取り放題、ってわけ。


うん、我ながら最強かもしれない……




「おぉ!それは、我が女神のレティーツィア様が、女神としての力を手に入れたと言うことなんですね!」


「……オーブリー、少し落ち着いてください」


「さすがは、我が女神レティーツィア様!ハイデマリーのクソがカシノニア王国を意のままにしていることを知って、そんな神業を習得されるとは……!この、オーブリー、感 動 !、いたしました〜っ!!」



またオーブリーが跪きだし、しかも涙を流して喜び出した。



オーブリーよ、オーブリー。

私の大切な側近のオーブリーよ。


顔はイケメンなのに、そんなに泣いてしまっては、イケメン台無しだぞ。

それに、オーブリーも貴族の、それも上位なはずなのだ。

なのに、なぜ泣くのだよ。

貴族はむやみに人前で泣かないはずなのだけど……、いや、考えるのはやめよう。


オーブリーだしね。



「オーブリー、いい加減口を塞がないと溺れてしまますよ?

いいですか、精霊魔法をかけて綺麗にしますからね!」


「我が主はやはり女神であらせ……ぶくぶくぶく―――」



私への女神賛美をしていたオーブリーは、警告したにもかかわらず女神賛美をやめなかった。


私は、涙で汚れたオーブリーの顔が綺麗になるように、と精霊魔法を使った。


それで、精霊魔法の水の中でも女神賛美をしようとして、溺れかけている。




オーブリーよ。

やはり、君は逞しいね………




精霊魔法で洗浄されていく中、オーブリーが女神賛美をやめずに泣き続けるので、精霊魔法は終わらない。


さすがにオーブリーが溺れてしまってはいけないので、私は諦めて精霊魔法を中断させた。



「ゲホゲホゲホ……ッ!!なんという、水量……けれど!

レティーツィア様の愛、しかとこのオーブリーには伝わりましたのでご安心を!」


「はぁ、オーブリー……」



オーブリーが、変な情熱のこもった気持ち悪い目で見つめてくる。



「む?レティーツィア、やはり其奴は処分した方がいいのでないか?気持ち悪いぞ?」


「やめろ、オーブリー。レティーツィア様が引いていらっしゃるぞ!」


「オーブリー、あなたったら、どうしてレティーツィア様の前だとそんなに気持ち悪くなるのよ!レティーツィア様がいない時は優秀で見た目はイケメンなのに、ほんっと残念な男よね〜!」



気持ち悪いオーブリーに反応して、ハルトムートとアードルフが私を守るようにそばにやってきた。


そして、ギーゼラは呆れたようにオーブリーにつっこんでいる。




さすが、アードルフ!私の筆頭護衛騎士なだけあるわ!



………にしても。オーブリーもアードルフにつぐ強さの、私の護衛騎士なはずなんだけどなぁ……


私は遠い目をしながらそんなことを思っていた。



「ハルトムートもアードルフも落ち着いて。オーブリーを攻撃しちゃ、だめですよ!」


「はっ、レティーツィア様」


「だ、だが、レティーツィア。此奴は気持ち悪いぞ?」



アードルフはすぐに私に従ったが、ハルトムートは心配そうだ。


だが、オーブリーも幼い頃からの付き合いだ。

大丈夫。

ちゃんと限度はわかっている、残念イケメンなのだから。



「いいのよ、ハルトムート。オーブリーは大丈夫だから。

傷つけちゃだめです。」


「うむ、そうか?レティーツィアがそういうならば、わかったぞ?」


「ありがとう、ハルトムート」



ハルトムートは見るからにしぶしぶといった様子でオーブリーへよ攻撃をやめた。でも、まぁ警戒した様子ではあるけどね。




「れ、レティーツィア様が庇ってくださるなんて〜!」



オーブリーはまだ気持ち悪いままだ。


はぁ、そろそろ本気で止めるか。



「オーブリー!いい加減にしないと、嫌い!、になっちゃいますからね!」


「はっ!それは、だめです!レティーツィア様、もう大人しくします。すみませんでした!」


「はい、よろしいです」



そう。

オーブリーはこう言うと、大人しくなるのだ。



私はにっこりと大人しくなったオーブリーに微笑みかけた。





「……ばっかよねぇ、オーブリーも。レティーツィア様に構ってほしいからって、そんな構い方じゃ嫌われちゃうのにねぇ。

レティーツィア様が好きなら、もっと他の接し方をしたらいいのに。ねぇ、アードルフ?」


「あぁ、そうだな。だが、オーブリーはレティーツィア様限定で不器用だから仕方がないさ。それに、『カシノニアの悪夢』で恋愛を敬遠されているレティーツィア様に負担をかけさせないようにという、オーブリーなりの配慮もあるのだろうからな」


「まぁ、そうね。オーブリーも、あれで報われない奴よねぇ」



呆れたようなギーゼラと憐れむようにアードルフが呟いた。


だが、残念ながら2人のその呟きはレティーツィアの耳には入らなかった。





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