水の属性の精霊魔法マスター
飛行魔法でハルトムートの家に帰ったレティーツィアは、フロレンツィアの愛の桃を実らせてハルトムートと夕食を食べた。
やはり桃だけのご飯では飽きてきてしまうし、レティーツィアは疲れてカレーが食べたい気分だったので、昨日の夕食ではフロレンツィアの愛を実らせてカレーを作ったのだ。
レティーツィアのカレーを見てハルトムートもカレーが食べてみたいと言ったので、レティーツィアの物と同じ甘口のカレーを想定して作ってみたのだが、どうやらハルトムートにとっては甘すぎたようだった。
カレーを食べて渋い顔をしながら「これはもう少し辛い方がいいのではないか……」と呟くハルトムートを見て、レティーツィアはハルトムートは甘いものより辛い食べ物の方が好きなのだと知った。
だが、ハルトムートはレティーツィアがいなければ、本来はみずみずしくて甘くて美味しいフロレンツィアの愛の桃ばかりを食べていたはずである。
なんだか納得がいかないな、とレティーツィアは思った。
甘い桃は毎日食べていても良くて、レティーツィアが作り出したカレーには味に文句をつけるだなんておかしいのではないかと思い、なんとなくレティーツィアはムッとした気持ちになった。
だから、レティーツィアには新しくハルトムート用に辛めのカレーを作ることも可能だったが、あえてレティーツィアは新しいカレーは作って渡すことはしなかった。
そのあと、ハルトムートはレティーツィアとお揃いの甘めのカレーを最初の一言以外は文句の一つも言わずに食べきったのであった。
清めの儀式やら飛行魔法の精霊魔法などを使ってやはり疲れていたレティーツィアは、ハルトムートとご飯を食べたあとすぐに入浴を済ませたら、サッと布団に入ってぐっすりと眠りについたのであった。
ーーー
次の日の朝、レティーツィアは充分な睡眠をたっぷりとって、スッキリとして目覚めをしていた。
(んんーっ! よく寝たわ。)
レティーツィアは寝起きで腕を頭の上に伸ばしてストレッチをしながら、心地よい目覚めを堪能した。
昨日たくさん寝たことで、体力も魔力も元の状態に完全に戻っている感じがするし、身体のどこからも疲労感は感じなかった。
(やっぱり、疲れた時はたっぷり眠るのが一番ね!)
快適な目覚めで機嫌の良いレティーツィアは、ハルトムートが起きてくるまでに庭の桃を取りに行き、朝食の支度を準備した。
「おはよう、レティーツィア。
昨日はゆっくり眠れたか?」
レティーツィアが庭の桃を取って、ハルトムートの分の朝食をフロレンツィアの愛を実らせて作り終えたところで、障子の外からハルトムートに声を掛けられた。
レティーツィアはハルトムートの分の朝食も作り終えていたし、ちょうどいいナイスタイミングである。
「おはようございます、ハルトムート。
はい、昨日はぐっすり眠れたのですっかり元気になりました。
あなたの分も朝ごはんを作ったので、よかったら一緒にどうですか?」
レティーツィアは障子を開けてハルトムートを部屋に迎え入れた。
机の上には、レティーツィアが作った簡単なご飯と豆腐の味噌汁、焼き魚の朝食があった。
個人的にレティーツィアは朝から納豆を食べるのが好きなのだが、いかんせん納豆は好き嫌いが多い食べ物であるので、今回は遠慮したのである。
なんといっても、ハルトムートは今は人間の姿をしてくれているがやはり竜なので納豆は苦手かもしれないからである。
生まれながらのカシノニア王国の人間ですら時々納豆を苦手としている人はいるって聞くし、カシノニア王国以外の他国の人間なら尚更納豆の独特の粘りや味に苦手意識を持つ人は多いと聞くのだ。
だから、レティーツィアは朝食に納豆を用意したらもしかしたら竜でもあるハルトムートが苦手かもしれないと思って納豆は避けて、焼き魚にメニューを変更することにしたのであった。
「おぉ! 私の分も作ってくれているのか?
いい匂いがして美味しそうだな!
うむ……。 ちょうどお腹も空いてきたことだし、私も其方の料理をご馳走になるとするか。」
ハルトムートはレティーツィアの料理を残すことなく、全部ぺろりと綺麗に食べきってくれた。
昨日のカレーと違って焼き魚は甘口ではなかったので、ハルトムートの口にあったようだったのでレティーツィアはホッと一安心した。
朝食を食べ終わったあと、少し食後の休憩をしたレティーツィアとハルトムートは昨日の続きの精霊魔法の練習をするために庭へと向かった。
昨日までにレティーツィアが習得したものは、精霊の目と大量の精霊の加護、それから精霊魔法では基本の飛行魔法をマスターしている。
水の属性の精霊魔法は、洗浄魔法と治癒魔法の他にさらに降水魔法の説明だけを聞いたが、実践はまだ出来ていない。
なるべく早く今日中に水の属性の精霊魔法の洗浄魔法、治癒魔法、降水魔法 の3つをマスターしてしまいたいところである。
「では、レティーツィア。
昨日の続きの精霊魔法の練習をするとするか。
だが昨日其方が使っていた飛行魔法を見る限りでは、すでに其方は精霊との意思疎通とイメージを掴めているようなので、すぐに水の属性の精霊魔法を使いこなせるようになると思うぞ!
ハハハハハッ!」
「え、そうなんですか?」
「あぁ。
レティーツィアは精霊との意思疎通とイメージの中でも大切なコツをすでに掴めているようなのでな、私がお手本として何度か見せれば、其方であれば使えるようになるだろうな!
ハハハッ、さすが私のレティーツィアだ!」
「……」
(もうっ! だから私達は人間と竜だし、そもそも私はハルトムートのものじゃないんだから。 ……それに、今は私がハルトムートの婚約者ってことになってるし婚約破棄もできないって言われてるけど、いつまでもこんなに優しいハルトムートを私に縛り付けるわけにはいかないんだから……。 早く、ハルトムートを私に縛られずに自由にしてあげなくっちゃいけないわね……。)
そして結局の所、ハルトムートの言った言葉は正しかった。
レティーツィアはハルトムートのお手本の水の属性の洗浄魔法、治癒魔法、降水魔法を見たあとすぐに、たった1回でそれぞれの精霊魔法を成功させることができたのだ。
「おぉっ! さすがはレティーツィアだ!
たった一度でマスターしてしまうとは素晴らしいな!
うむ、これで水の属性の精霊魔法である、洗浄魔法、治癒魔法、降水魔法はこれで完璧だなっ。
良くやった、レティーツィア‼︎」
「ありがとうございます、ハルトムート!
水の属性の精霊魔法もマスターできましたし、あともう少しで私も精霊魔法の魔法使いとして一人前になってカシノニア王国に戻れそうです。
……それにしても、ハイデマリーに殺されそうになってここに来てから、もう3日も経つんですね。
あのハイデマリーなら私を排除した後で、3日もあればカシノニア王国をどうしているか想像するだけでも恐ろしいので、もっと頑張って他の4つの属性の精霊魔法も習得してなるべく早くカシノニア王国に戻れるようにしたいです。」
「……む? 3日だと……?
レティーツィア、何か勘違いしていないか?
この私のプライベート空間と外のカシノニア王国とでは、時の流れる時間の速さが異なっており違うということを忘れているのではないか?
たしかにレティーツィアが私のプライベート空間に来て今日で3日目だが、そとのカシノニア王国ではおそらく3ヶ月ほどの時が経っていると思うが、……其方そこのところは理解できているのか?」
「…………え?」




