選択した属性
「それで、レティーツィア。
其方はどの属性を選ぶのだ?
あー……、土の属性を選べば私とお揃いになるのでな、もし其方が希望するのならば他の属性よりも土の属性の方が良いと私は思うのだがなーーーー……。」
レティーツィアは、どの属性から最初に学び始めるのかを選ぶかを考えた。
だが、すでにレティーツィアの心の中では話を聞くうちに惹かれている属性を見つけていた。
(……水の属性って、すごく気になるのよね。)
そう、水の属性にレティーツィアは惹かれていた。
水の属性である洗浄魔法があることにも心が惹かれたのだが、一番レティーツィアの心を惹きつけたのは治癒魔法が水の属性であったということであった。
レティーツィアの中には、悪役令嬢ハイデマリーに復讐したいという気持ちは今も消えずにまだある。
その復讐のためを思うならば、攻撃系の精霊魔法をすぐに習得するべきなのはわかっているのだが、レティーツィアは最初に攻撃系の精霊魔法の属性を選ぶ気にはなれなかった。
なぜなら、崖から転がり落ちて傷だらけのレティーツィアを命の危機から救ったのはハルトムートのゴールドヒートであり、攻撃系の精霊魔法ではなかったからである。
たとえハルトムートの使ったゴールドヒートが5つの精霊王の竜だけの固有精霊魔法で、魔法使いを目指すレティーツィアには使えなくとも、レティーツィアにだって代替えではあるが水の属性の治癒魔法を習得することは可能なのだ。
まだレティーツィアの中では悪役令嬢ハイデマリーへ復讐をしたいという憎しみの気持ちは消えてはいない。
だが、ハルトムートと関わるうちに徐々に元々レティーツィアが持っていた天性の優しさの心を、レティーツィアは思い出してきていたのである。
だから、ただ単に復讐したいからといって、攻撃系の精霊魔法を最初に選びたくないと思ったのである。
(結局私が崖から殺されそうになって、今ここでこんなことになっているのもハイデマリーが憎しみを抱いて私へ復讐心を持ったことが原因なんだと思うのよね。 全ての恨みや憎しみの元を辿れば、結局はその前に何らかの形で恨みや憎しみを受けたことが原因なのかもしれないわ。 でもその全ての恨みや憎しみを忘れずに、やり返しとして恨みや憎しみを繰り返していったら、この世界では永遠に恨みや憎しみの復讐のループは終わらせることはできないんだと思うのよね……。 難しいことだけど、誰かがその復讐のループを終わらせなくっちゃいけないんだと思う。 ……まだ私にはその方法はわからないけど、それでも私があのハイデマリーと同じように人を傷つけて恨みや憎しみだけの方法でやり返す復讐の方法はしなくないわ……!)
そうなのだ。
レティーツィアは、悪役令嬢ハイデマリーへの復讐心がなくなったわけではない。
ただ、悪役令嬢ハイデマリーと同じように人を恨みや憎しみで傷つけるようなやり方では、永遠に復讐のループが終わらずに続いていくことになってしまうのでやりたくない、と思っているのだ。
だから、レティーツィアが一番最初に求めた力は癒しの力を持った水属性の治癒魔法だったのだ。
「ハルトムート。
私は、まず最初に水の属性の精霊魔法を使いたいと思います。」
「う、うむ……水の属性にするのか?
まぁ、レティーツィアが決めたことならばそれも良いか。
そうと決まったのならば、まず一番最初に私がレティーツィアに教える精霊魔法は水の属性に決まりだな!
ハハハハハッ!
安心するがいいぞ!
この私がついているのだから、任せるがいいのだ!」
ハルトムートは、一瞬だけレティーツィアが土の属性を選ばずにお揃いの属性になれなかったことを気にした様子だったが、結局はすぐにレティーツィアの決めた決断を応援してくれるようだ。
ハルトムートは言葉の通りに、その後すぐにレティーツィアに水の属性の精霊魔法を教えてくれた。
水の属性の精霊魔法には、洗浄魔法と治癒魔法の他にさらに降水魔法があるとハルトムートから説明を受けた。
降水魔法とは、規模の大小により作用の仕方が大きく異なるものなのだという。
例えば、小さい範囲で使えば水溜りや井戸の水を増やす程度だが、大規模の降水魔法となると雨を降らせて湖をつかり出すことも可能になるという。
降水魔法は、使い方次第で命を育む飲み水を生み出すこともできるが、反対に水で相手を攻撃することも可能になるということだった。
レティーツィアはハルトムートの説明を聞いて、今すぐにでも引き続き精霊魔法の水の属性を使いこなせるように練習したいと思ったが、意外と疲労が溜まっていたようで疲れてきてしまった。
そういえばと振り返れば、さすがに今日は清めの儀式や飛行魔法を習得したりと体力や魔力の多くをすでに消耗してしまっているようであった。
レティーツィアはハルトムートと相談して、今日は水の属性の説明を聞くところで止めておくことにして、続きは明日から水の属性の実践をやっていくことにした。
レティーツィアとハルトムート、ひとまずハルトムートの家に帰ることになった。
ハルトムートの家までは、ハルトムートがまた背中に乗るか?と誘ってくれたのだが、レティーツィアは自分で習得したばかりの飛行魔法を使ってハルトムートの背中には乗らずに帰ることにした。
疲労しているとはいっても、レティーツィアは水の属性の実践をしないで明日に精霊魔法のやることをまわした分、それだけまだレティーツィアには体力と魔力の余裕があったのだ。
レティーツィアは、習得したばかりの飛行魔法を使って早速ハルトムートの家まで練習として飛行するのならば、ハルトムートがそば見守っていてくれるならば安心するなと思って、ハルトムートの背中にならなかったという理由もある。
飛行魔法を使ってハルトムートの横に並んで空を飛ぶと、ハルトムートの背中に乗せてもらっている時とは違って自分の意思で空を飛んでいるんだなと感じることができた。
飛行魔法を使って飛んで、気持ちいい風に当たりながらレティーツィアは飛行魔法を使えるようになったんだな、と実感した。
精霊との意思疎通とイメージの使い方をマスターしたレティーツィアは、飛行魔法を自由自在に使いこなしながらハルトムートの横で空を自由に飛び続けた。




