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閑話 ギーゼラの怒涛の始まり

レティーツィアがハルトムートと出会っているとき、レティーツィアの側近達はどうだったのかを書いてみました。

今回の話は、レティーツィアの筆頭側仕えのギーゼラの視点で、レティーツィアがいなくなった後の怒涛の様子になります。


 レティーツィア様の筆頭側仕えとして仕えてきたギーゼラは、ボサボサの髪と薄汚い服でカシノニア王国の国境沿いの寂れた地域にいた。

 寂れた地域なのでギーゼラの周りは寂れており、王城の側のように商店が立ち並ぶような賑やかさはみられない。

 こんな寂れた地域は本来であれば誰も好んで来ようとしない地域なのだから、ギーゼラの周りにはギーゼラの仲間以外の人は誰一人として見当たらなかった。

 簡易な木などで組んだ、お粗末な家のような物がいくつか見えるが、それはギーゼラ達がここで生き延びるために自分たちで作り上げた物なのだ。



「おい、ギーゼラ!

 いつまでそんなにメソメソとしているんだ?

 私達はレティーツィア様の側近なんだから、しっかりしなければならないぞ。

 レティーツィア様になすりつけられた汚名をそぐために動くべきだとは思わないのか?」


「わかっていますっ。

 いつまでも泣き続けていてもどうにもならないことぐらい、わたくしにだってわかっていますっ。

 でもっ!、わたくし達の大切な主人であるレティーツィア様が亡くなられただなんて、わたくしには信じられないのです。 レティーツィア様がご自身の家族である王妃様やご兄弟を殺められた後に、その現場を国王とハイデマリー様に見つかり、逃亡している時に崖から落ちて亡くなられただなんて……!

 レティーツィア様は側近であるわたくし達にすら、深い愛情をくださる方でした。 それに、わたくしが知るレティーツィア様はご家族をとても大切にされている方でしたし、どんなに考えてもあのレティーツィア様が王妃様やご兄弟を殺められただなんて、とてもっ……、とてもわたくしには信じられないのですっ!

 ……アードルフ。 レティーツィア様の側近だったあなたなら、レティーツィア様の優しい家族思いな性格は充分知っているはずです! ……あなたはっ!、……あなたは信じられるというのですか?」


 泣きすぎて腫れてしまった目で、ギーゼラはアードルフを見つめた。

 アードルフはギーゼラに見つめられて苦り切ったような顔になった。


「まさか。

 私だって、レティーツィア様がそんなことをする人ではないと信じているさ。

 ……信じているからこそ、私はこんな所にいるのだしな。」


 悔しそうな顔をしながら話すアードルフを見て、ギーゼラは「私達だけでもどんなことがあっても最期までレティーツィア様を信じましょう……!」と、再び瞳に強い光を灯して頷いた。






 ギーゼラはこれまでのことを振り返る。



 急にレティーツィア様がいなくなり何が起こったのかわからないうちに、レティーツィア様の筆頭側仕えであるギーゼラ達は王城から追い出されていた。

 王城の警備の騎士から、普段のレティーツィア様を知るギーゼラには信じられないような、レティーツィア様が家族を殺して自身も亡くなられた罪人だと知らされた。


 ーーーだが、到底信じられるわけなかった。


 信じられないとギーゼラ達が抗議の声をあげて抵抗したが、王城を守る凄腕の騎士にたかが側仕え達の抵抗が効くわけがなかった。

 王城の騎士達のリーダーのデニスから、ギーゼラ達側仕えに「警告はしたのだからこの後抵抗する者は斬り捨てるぞ!」と脅しかけてきた。


「……わたくし達はレティーツィア様を信じますっ!

 レティーツィア様がご家族を殺したという証拠はどこにあるのですか。

 ……たとえ、あなた方の言う通りレティーツィア様が既に亡くなられているのだとしても……わたくし達はレティーツィア様に会うまでは信じませんっ……!」


「フッ……馬鹿な奴らだ。

 お前たち、抵抗する者は切り捨てろ!

 容赦はするなよ!」


「ヒィッ……」


 王城の騎士のリーダーと思われる男は、ギーゼラ達側仕えを嘲笑った後に抵抗する者を切り捨てろと命令を下した。

 ギーゼラ達側仕え達からは悲鳴が上がった。


「どうだ? 恐れをなして抵抗する気をなくしたか?

 怯えて抵抗する気をなくした者は大人しく我らに降伏して従っていれば良いのだ!

 お前たちの主人は罪人となったのだ!

 巻き添えをくらいたくなければ、大人しく我らに従えっ!」


 王城の騎士のリーダーのデニスは部下の騎士達に剣を抜刀させながら汚らしい笑みを浮かべており、ギーゼラ達側仕えが抵抗出来ないだろうとたかを括っている。


 剣を騎士から向けられて、ギーゼラは身体がブルブルと震えていた。

 長年仕えてきたレティーツィア様が罪人になったなど、そんな馬鹿げた話は信じられない。

 だが、ギーゼラは騎士ではないただの側仕えだ。

 騎士で、それも王城の騎士のリーダーであるデニスから剣を向けられて怯えない方がおかしい。


「……わ、わた、わたくしはっ! それでも、レティーツィア様を、し、信じますっ……!」


 ギーゼラは、筆頭側仕えとしてただ怯えながら主人であるレティーツィア様の無実を訴えることしか出来なかった。

 ギーゼラの周りの側仕え達も怯えながらも、ギーゼラの発言を肯定するように頷いて賛同を示した。


「馬鹿な奴らだ。 素直に従っておけばよいものを……。

 お前たち、こいつらを1人残らず切り捨てろっ!」


 王城の騎士のリーダーとみられるデニスがクイッと顎を動かすと、周りの騎士達が動いた。


「危ないっ!!」ギーゼラの目の前に血のしぶきが飛び散った。


 ギーゼラの顔にも血しぶきがくっついた。



ーーーなんで。



「お、逃げください、ギーゼラ様。」

 ギーゼラを庇って王城の騎士に斬られた側仕えのパウラはそう言って動かなくなった。


 斬られたパウラに呆然と近寄ろうとするギーゼラを横の側仕え達が泣きながら、「ギーゼラ様、お逃げください!」と叫んでいる。

 それでもあまりのことにギーゼラはのろのろと歩いてパウラの方は向かおうとしたが、なおも王城の騎士達はギーゼラ達を斬り殺しに向かってきているのが見えた。

 横の側仕えのリタに強引に引っ張られるまま、ギーゼラは呆然と走った。



 そこからの記憶は曖昧である。

 ギーゼラ以外の側仕え達は散り散りになって逃げたが、切り捨てられていった。

 ギーゼラの横にいてくれた側仕えのリタもギーゼラを守るために切り捨てられてしまった。


 そして、ギーゼラは偶然にも同じように逃げていたレティーツィア様の筆頭護衛騎士であるアードルフ達に出会ったのだ。


 なんとかアードルフ達、レティーツィア様の護衛騎士と合流出来たことで王城を抜け出せたギーゼラたちだが、王城の側は騎士達が居て危険なので逃げるしかなかった。

 着の身着のままで、カシノニア王国の国境沿いの寂れた地域まで逃げ延びることで精一杯だったのだ。




 ギーゼラは逃げ延びた後もしばらくは呆然としていた。

 側仕えでは、ギーゼラのみが助かったのだ。

 ギーゼラの心の衝撃は大きかったのだ。




 だが、こんなカシノニア王国の国境沿いの寂れた地域にも、レティーツィア様の父上と新しい王妃としてハイデマリーが結婚するという噂が流れてきた。

 ギーゼラはレティーツィア様の無実を確かめるためにレティーツィア様の父上である国王に会いに行こうと、気持ちを立て直したのである。


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