精霊魔法の種類
レティーツィアは、飛行魔法をマスターできたのでハルトムートとともに地上に降りていた。
飛行魔法で魔力を使ったが、一流の魔術師を目指して魔力を使ったときよりも精霊魔法を使った方が使い終わった後の疲労感が少ないなと感じた。
おそらく魔力を使うときに精霊と連携しているので、身体への魔力の負担が少なくなっているので疲労感をあまり感じずに済んでいるのだろう。
……なるほど。
こうして考えてみると、ハルトムートの言う通り一流の魔術師を目指すよりも精霊魔法を使う魔法使いの方が良いという言葉の意味に納得できるなとレティーツィアは思った。
精霊魔法の方が使用する魔力の消費量も少なくて済むし、魔力を使った後の疲労感も少なくて済むからだ。
そしてなにより、一流の魔術師よりも明らかに精霊魔法を使った魔法使いの方が使える魔力の幅が広くなるのだ。
これではなぜ現代の世界で精霊魔法が廃れてしまい、精霊魔法より劣る魔術師しか残っていないのか疑問に感じてしまう。
レティーツィアだってカシノニア王国の王位継承者なのに、ハルトムートと出会うまでこれっぽっちも精霊魔法の存在を知らなかったのだ。
なぜだろう……。
明らかにレティーツィアが目指していた一流の魔術師より優れている精霊魔法の魔法使いの存在を知った今、レティーツィアは精霊魔法の現代の状態に不思議に感じた。
(……明らかに精霊魔法の魔法使い方が魔術師より優れているのに、どうして精霊魔法っていう存在自体が現代ではなかったものとしてすっかり忘れ去られてしまっているのだろう……。)
レティーツィアが疑問に思って考えていると、
「では、レティーツィア。 他の精霊魔法について説明しても良いか?」とハルトムートが聞いてきた。
なので、レティーツィアはとりあえず浮かんだ疑問は一旦頭の片隅に置いといて、「はい、よろしくお願いします。」と返事をして精霊魔法に集中することにした。
「まず、精霊魔法の中で基本は飛行魔法であるな。
どの精霊から加護を得ていたとしても、飛行魔法は精霊の目を手に入れて精霊の加護を得るか精霊と契約をして、精霊との意思疎通とイメージができるようになれば飛行魔法は使えるのだ。
だが、加護を得ている精霊の種類によって使える攻撃魔法やそれぞれの固有魔法は異なってくるぞ。」
「え……。 それじゃあ、飛行魔法が精霊魔法の基本ってことですか?」
「ああ。 まぁ、そういうことになるな。
どの精霊から加護を得ていても、魔法使い一人を浮かせて移動させることくらいできるな。」
「……」
(なんと……! それじゃあ、私ったら気づかないうちに精霊魔法の基本を無意識に選べていたんだ。 ……私って、選ぶセンスがあるのかも……!)
レティーツィアは小さく心の中でガッツポーズをとった。
「木・火・土・金・水 、それぞれ5つの属性の話は前にしたであろう?
使う精霊魔法使いの魔力量と属性も関係あるのだが、その精霊魔法使いが5つの属性のどの精霊から加護を得ているのかが重要になってくるのだ。
加護を得ている精霊の属性によって、使える精霊魔法の種類は大きく変わってきてしまうのだ。
だからな、魔力属性と魔力量が優れており優秀な精霊魔法を使う魔法使いになりたいと目指す者は、自らが望むより多くの属性の精霊から加護を得られるように希望するのだ。
だがな、精霊とはある意味でプライドが高くて気難しい所があるのだ。
其方は実感しにくいかもしれぬが、本来であれば1つの低級の精霊でさえ加護の契約をするのは難しいものだ。
一度精霊から気に入られて加護を与えた魔法使いに対しては無垢で素直になる精霊達なのだがな、……やはり私の知っている限りでは精霊から加護を得るまで好かれるのは遠い道のりとなることが多いな。
魔力属性や魔力量が充分優れており魔法使いを目指す者がいざ精霊達と契約をしようとしても、望む属性やレベルの精霊を得られなかったり、望む精霊どころかどの精霊からも全く加護を得ることができなかったりすることも多いものなのだ。」
「あの……、魔法使いになって精霊魔法を使うために、本来なら魔法使いは精霊から加護を得るために大変な苦労をされるように感じます。
でも、私は特に何も精霊から加護を得ようと努力とか何もした覚えなんてないと思うんですけど、大量の精霊の加護を得てしまっているんです。
前にハルトムートは私が守護の宝石の半分を持っているから、大量の精霊の加護を得ているんだろうって言ってましたよね。
それなら、……もし今後私が守護の宝石の半分を手放したら、今の私に加護を与えてくれている精霊達からの加護はなくなってしまうのでしょうか?」
「む?
……うむ……。 それは精霊達次第なので私もはっきりとはわからないが、今私がレティーツィアに加護を与えている精霊達をこうして見ている限りでは、其方にかなり好意を持ち懐いているようなので心配はいらないと思うぞ?
おそらく其方がいつか守護の宝石の半分を手放すことになったとしても、其方の心配していることは起こらないだろうな。
まぁ、とにかくだ。 其方は何も心配などしなくても良いぞ!
其方には私がいるのだからドォーンと安心して構えていれば良いのだ! ハハハハハッ!」
「ふふっ、ありがとうございます。」
レティーツィアは、簡単に大量の精霊の加護を得ることができていたので、ハルトムートの話を聞くまで低級の精霊1つからでさえ精霊の加護を得るのがそんなに大変だとは思っていなかった。
ーーだから、急に心配になってきたのだ。
今のレティーツィアは、カシノニア王国の王位継承者で次期女王予定であるがその立場は不安定なのだ。
悪役令嬢ハイデマリーがあんなことさえしなければ、本来であればレティーツィアの次期女王の座は確定していた。
だが、悪役令嬢ハイデマリーのせいでレティーツィアが次期女王として確定するために不可欠な儀式ができていないのだ。
そう、12歳になった後に行われるはずの、カシノニア王国の伝統である次期王位継承者の女王レティーツィアの継承の儀式が行われていないのである。
そうなのである。
レティーツィアは、継承の儀式の前の12歳の誕生日に直系王族の王位継承者が知るべきすべての知識の最後の指導と半分の守護の宝石を手に入れたが、肝心の継承の儀式がまだなのである。
次期王位継承者としてレティーツィアの継承の儀式の前日に、レティーツィアは悪役令嬢ハイデマリーに殺されそうになったのだから、カシノニア王国としてはレティーツィアは未だに正式な次期王位継承者として確定していないままなのだ。
ーーだから、不安になったのだ。
こうしてレティーツィアが数日だけだとしてもカシノニア王国から離れている間に、あの悪役令嬢ハイデマリーがレティーツィアの命さえ始末しようとしたのに何もせずに済ますはずがないのだ。
確定していないレティーツィアの地位だって、悪役令嬢ハイデマリーはきっと狙っているに違いないのである。
(……よかった……。 これでもし半分の守護の宝石を手放さないといけなくなっても、大量の精霊の加護を失わなければ精霊魔法を使い続けることができるわ……!)
レティーツィアは半分の守護の宝石がなくなったとしても、レティーツィアに懐いてくれて加護を与え続けてくれるだろう大量の精霊達に感謝の気持ちを込めて小さく「……皆さん、ありがとうございます」と呟いた。
小さな声で聞き取れなかったのかハルトムートが「む?」と聞き返すような声をあげたが、レティーツィアは「なんでもありません。」と照れくさそうに微笑んだ。




