はじめての飛行魔法
ーー心を落ち着ける……。
雑念を取り払ってレティーツィアはまるで悟りを開くように心を落ち着けることだけに意識を集中させていた。
精霊の目を手に入れてから見えるようになった、レティーツィアの周りをふよふよと浮く精霊達ーー。
おそらくこの精霊達が、ハルトムートのいうところのレティーツィアに大量の加護を与えてくれている精霊達なんだろう。
レティーツィアは、精霊達のことだけを考えながらひたすら精神統一を図り心を落ち着け続けた。
無言で何も話さずにただ瞳を閉じて心を落ち着けることだけに集中して、さらにレティーツィアが周りにいる精霊達に意識を向け続けると、何か気配のような物を感じ取った。
その気配にさらに意識を集中させ続けると、気配は複数あることがだんだんとレティーツィアにも感じ取れるようになってきた。
そして心を落ち続け続けていると、レティーツィアはさらに自分とハルトムートの周りに多く集まっている多くの気配を感じられるようになった。
(…………‼︎ きっと、この気配が精霊達なんだわ……!)
レティーツィアが感じている気配の正体が、今レティーツィアが関わりを持ちたいと望んでいる精霊達なのだとレティーツィアにはすぐにわかった。
レティーツィアは清めの儀式で精霊の目を手に入れたときに、レティーツィアとハルトムートの周りを飛んでいる光り輝く光が精霊達なのだと知った。
そして今のレティーツィアも目を瞑る前にレティーツィアとハルトムートの周りにいる精霊達を見ていたので、この今感じる気配の位置などから考えてこれが精霊達なのだとすぐに理解できたのだ。
(今感じている気配が精霊達に違いないわ……!)
だが、レティーツィアの目標は精霊の気配を感じ取ることだけではない。
レティーツィアは、精霊達とコミュニケーションをとって意思疎通ができるようになりたいのだ。
もちろん、レティーツィアは精霊魔法を使いこなせるようになりたいと思っているが、まずは今の一番の目標は精霊魔法を使う上で重要になってくる精霊との意思疎通とイメージをまずはできるようになることなのだ。
だから、レティーツィアには精霊の気配を感じられただけの今の現状で満足なんてしていられない。
こんなことで満足していてはいけないと理性では分かっていても、それでもやはり精霊達の気配を感じられるようになったことでレティーツィアの気持ちは高鳴っていた。
精霊達と意思疎通を取ることが目標であるレティーツィアはここで諦められないのだ。
レティーツィアは、精霊の気配を感じられた嬉しさで飛び上がりそうになる気持ちをフーッと深呼吸をしながら精神を落ち着けた。
そして、レティーツィアは再び心を落ち着けることに集中し始めたのだ。
レティーツィアが心を落ち着けて精霊達と気持ちを落ち着けようとしているときも、ずっとそばでハルトムートが見守ってくれているのをレティーツィアは感じていた。
心を落ち着けるために目を瞑っているのにハルトムートがそばにいるとレティーツィアがそばにいると分かったのには理由がある。
それは、レティーツィアが感じている気配の中で他のどれよりも一際大きな気配を目を瞑る前のハルトムートがいるはずの場所から感じていたからだ。
そして、その一際大きな気配は他の気配とは明らかに飛び抜けて違っていた。
さすが、土の精霊王といったところだろうか……。
だが、そのハルトムートの気配はレティーツィアにとっては安心を与えてくれるものだった。
なんとなくハルトムートがそばにいることがわかることで、レティーツィアはなぜか少し安心して心を落ち着け続けることができたのだ。
レティーツィアは、精霊達の気配に意識をさらに向けた。
ーーザワザワザワ……。
レティーツィアの心の中へ向かって何か意思を持ったものが関わりを持とうと近づいてきているのを感じた。
(……なんだろう。 だけど、この気配に悪意は感じないわ。 ……そう、なんだか無邪気で無垢な子供が私を誘ってきているみたいな……。)
近づいてくる気配はレティーツィアに危害を加えようとしているものではないと感じた。
ただレティーツィアに好意を持っている無垢な者なのだと、レティーツィアは心で理解することができた。
そして、この無垢な気配はレティーツィアの周りにいる精霊達の気配から感じるのだ。
(私の周りの精霊達からのみ気配を感じるってことは、私に大量の加護を与えてくれている精霊が私に好意を持ってくれているってことなのかしら。 私に加護を与えてくれているから、私の周りの精霊達から好意を感じるのかもしれないわね……。)
レティーツィアは、ハルトムート以外のハルトムートの周りの精霊達からはレティーツィアへの好意のような意思は感じなかった。
精霊達から加護を得ているか得ていないかによって、気配の感じ方の違いがあることにレティーツィアは気づくことができた。
加護を与えてくれている精霊達は、すでにレティーツィアに好意的で精霊達からレティーツィアと関わろうとしてきてくれているのだ。
反対にハルトムートの周りにいて、レティーツィアはまだ加護を得ていない精霊達からは無関心というか、レティーツィアへの好意は感じられないのである。
(これが、加護があるかどうかの違いなんだわ……。)
これだけ感じるレティーツィアに加護を与えてくれている精霊達からの好意……。
レティーツィアにこれだけ加護を与えてくれている精霊達が好意的ならば、レティーツィアと上手く意思疎通が取れなくても、レティーツィアのためと良かれと思って勝手に行動してしまうこともあるだろうと納得できるものだ。
ーー精霊魔法を使う上でも大事になってくるのは、精霊との意思疎通とイメージだーー。
精霊達から感じてくる好意の感覚を真似して、レティーツィアは加護を与えてくれている精霊達に向けて飛行魔法で飛ぶようなイメージで伝えてみることにした。
すると……!
レティーツィアの身体がほんの少し浮かびあがったのだ……‼︎
「……う、浮いてるわっ……!」
急な浮遊感に驚いてレティーツィアは目を開いた。
足元を見ると、ほんの少しだが地面からレティーツィアの足が浮かび上がっていた。
レティーツィアがハルトムートの方を見ると、ハルトムートはずっとレティーツィアを見つめていたのか、すぐに優しい瞳をしたハルトムートの瞳と目があった。
「おめでとう、レティーツィア。
はじめての飛行魔法の最高だな。
これで其方も精霊魔法が使えるようになったのだな!
すごいぞ!
さすがは、私のレティーツィアだ!
ハハハハハッ!」
レティーツィアは精霊魔法の飛行魔法ができた感動と嬉しさで、心が幸せでいっぱいになった。
読んでくださる方がいてくださり、創作活動の励みになっています。
読んでくださる方に感謝です!
もちろんハルトムートからの好意のような意思はレティーツィアにガンガン届いております。




