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精霊魔法


 もしもハルトムートが竜の姿のままだったら、耳をペタリと寂しげにして、もしかしたら哀愁でも漂わせているかもしれない。

 だが、残念ながらハルトムートはレティーツィアに好かれたいがために再び竜の姿を取る気にはなれなかったので人間の姿のままだ。



 ーーーそう、人間の姿なのだ。



 竜と違って人間にも耳はあるが感情に左右されて反応するわけでもないので、もちろん人間の姿のハルトムートの耳はペタリとはなっていなかった。

 恋愛マスターを自称しているレティーツィアだが、今の思考は精霊の目を手に入れたことに向いてしまっており、ハルトムートの様子にはあいかわらずこれっぽっちも気づいていなかった。



 ハルトムートのもう少し手を繋ぎたかったという名残惜しげな気持ちなどレティーツィアはつゆ知らずなので、次の精霊魔法を習得に向けて意気込んでいた。

 そして、早速だが精霊魔法を使うぞ!とレティーツィアは精霊魔法を使おうとした。

 今までハルトムートが使っている精霊魔法はいくつか見たり聞いたりしてきた。

 ゴールドヒート、カシノニア王国の一流の魔術師達が作り上げた最強最悪の魔力封じの手錠を壊した魔法、飛行魔法、移動のような転移の魔法、洗浄の魔法がレティーツィアの知っている精霊魔法である。

 いや、まぁ、実際に見ていないゴールドヒートなどはおそらく精霊魔法なのだろうとレティーツィアが考えて検討をつけているだけで、本当は違うのかもしれないが…。



 知っている精霊魔法の中で1番レティーツィアが興味があった精霊魔法は、飛行魔法である。

 ハルトムートのプライベート空間だと言われたこの場所へ来る時に、レティーツィアは歩いて行こうとしたのだが、飛行魔法じゃないと無理だということで有無を言わさずハルトムートの背中に乗せてもらうことになって来ることになったのだ。

 もちろん、ハルトムートの背中の乗り心地は魔性の毛並みのおかげで饒舌に尽くし難いほど素晴らしいものではあったが、そういうことではないのだ。



 ーーー飛行魔法。



 それさえできれば、長距離でも馬車を使わずに早く移動ができるし、何よりハルトムートのプライベート空間のように飛行魔法でしか入らない場所もあると思うのだ。

 レティーツィアは、精霊魔法を習得するのならば飛行魔法は必ずできるようになりたいと思っていたのだ。




 レティーツィアは肩幅に足を開いて思い描く精霊魔法の飛行魔法の使い方を試してみることにした。

 姿勢良く立ち、右手をグーパーさせながら右腕の調子を確認する。



(うん、いいわ! これは、なかなかの高コンディションね! 清めの儀式をした後とはいえそれほど疲れていないし。 …この調子なら、…いけるわ……!)



 準備運動のように右腕を軽く回して緊張をほぐしたら、レティーツィアの準備は万全である。

 レティーツィアは、ふぅーっと息を吐いてから右腕を指揮者のように思いっきり頭上に掲げた。



(これこそ、理想通りの精霊魔法の構えよね!)



 初めての飛行魔法を使うというのに、自信満々の表情のレティーツィアは顔をキリッと引き締めて勢いよく右腕を右上から左下にブンッ!っと振り落とした。



「……」



 …何も起こらなかった。



 勢いよく右腕を振り落としたままの姿勢で固まるレティーツィア。

 それをさっきまで手を繋げなくなって寂しそうにして凹んでいたハルトムートが、レティーツィアは何をやっているだ?というポカンとした表情で見つめていた。



(あ…あれ……? なんでまだ飛んでないの…? …もしかして、勢いが足りなかったのかしら。)



 レティーツィアは右腕を振り落としたままの姿勢から今の失敗など何事もなかったかのようにすぐにスクッと姿勢を伸ばすと、再び姿勢を整えて先ほどよりやや強めに右腕を振り落とした。



「………」



 やはり何も起こらない。

 なぜだ…。

 こんなにも姿勢も右腕の調子も良いし、腕の振り落とし方もさっきより強めにしたのに、なぜなんだ。


 首を傾げるレティーツィアの横で、ハルトムートが無言でレティーツィアの様子を眺め続けていた。



(…もしかして、もっとスピード良く腕を振り落としたら良いのかしら…?)



 その後もレティーツィアは、ブンッ!、ブンッ!!っと何度か腕の角度やスピードなどを調節しながら腕を振り落として飛行魔法に挑戦し続けた。



「…レティーツィア。

 其方は先程から一体何をしているのだ?」


「見ればわかるじゃないですか。

 …まだうまくできてませんが、飛行魔法の訓練ですよ。」



 なぜハルトムートがこのレティーツィアの見事な腕の振り落とし方を何度も横で見てわからないのだろうと、レティーツィアは半ば呆れながらハルトムートに飛行魔法の訓練中であることを説明した。

 レティーツィアが丁寧にハルトムートに説明したにも関わらず、ハルトムートはなおも疑問を抱いていそうなポカンとした表情のままであった。



(説明したのにどうしてまだポカンとしてるままなのかしら? …まぁ、いいわ。 今はハルトムートより飛行魔法に集中しなくっちゃ…!)



「…あー…、レティーツィア…?

 頑張っている所大変申し訳ないと思うのだが、そのやり方では飛行魔法はいつまで経ってもできるようにならないぞ…?」


「………」



 …………は?

 なんですと…?


 レティーツィアはポカンとした表情でハルトムートを見つめた。




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[気になる点] だんだん主人公が嫌いになってきた 頭が悪すぎて ギャグ入れて場を和ませるとしたら逆効果
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