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虹色の湖


 ハルトムートに右手を引かれながらどんどん湖の中の深いところから浅いところへと移動していくレティーツィア。

 次第に湖の浅いところまで戻ってこれたのか、レティーツィアの足が湖の底に着いたので歩きだした。



 湖の湖畔に近づくにつれて、湖の中が明るくなってきた。

 そもそも湖の中は澄んだ綺麗な水の為か、水の中でさえ外の光が届いていてほんのりと明るかったし、今は精霊の目を手に入れたのでレティーツィアの周りの精霊たちのおかげでさらに明るくなっていた。

 だが、やはり湖の湖畔に近づくと地上の光が入ってくる量が多いのか、湖の中でもそれなりの明るさになってきた。




ーーー



 ザバンッーーー。



 歩き続けてレティーツィアとハルトムートは湖の水から出た。

 濡れた水を含んだ服が重く感じるかと気構えたのだが、レティーツィアが湖の水から出た途端に湖の水は蒸発したのか、そもそも慣れていなかったかのようにレティーツィアの服は濡れていなかった。

 チラリと手を繋いだまま右横にいるハルトムートを伺いみれば、ハルトムートのもふもふの魔性の毛並みも全く慣れていなかった。

 レティーツィアの服よりもハルトムートの魔性の毛並みの方が、湖の水を含んでいそうなのに全く濡れていないということは、この湖の水は濡れないものだろう。

 レティーツィアはまぁそういうものなのかととりあえず結論づけた。


 まだ清めの儀式は続いているのだ。

 レティーツィアは清めの儀式に集中した。






「レティーツィア、私たちは清めの儀式の最初と同じようにもう一度挨拶をしなければならない。

 挨拶をすることで、清めの儀式は終了となるのだ!」



 ハルトムートはレティーツィアの方を見て話した後に、清めの儀式の最初と同じように正座で湖に向かって座った。

 すぐにレティーツィアもハルトムートの左横に並んで座った。



「私に続きなさい。」


「はい。」


「我らは清めの儀式の終了をここに宣言する!」


「…我らは清めの儀式の終了をここに宣言する……!」



 レティーツィアはハルトムートの様子を伺いながら、言われた通り同じ言葉を繰り返した。

 ハルトムートはレティーツィアの言葉が言い終わると、それで良いというように一度ゆっくりと頷いた。


 そして清めの儀式の始まりと同じように、湖に向かって土下座のように頭を5回下げた。

 レティーツィアもハルトムートと同じように頭を下げて挨拶を繰り返すと、湖の光が先程の精霊の目を手に入れた時と同じように虹色に輝きだした。



(…清めの儀式が終わったんだ。)



 虹色に輝く湖は美しくも優しげに輝いており、レティーツィアは本能的に湖が清めの儀式の終了を祝福してくれているのだとわかった。

 キラキラと幻想的に輝く湖を見つめていると、清めの儀式はこれで全て終了したのならばハルトムートとこのまま手を繋ぐ必要はないのではないか、と思った。

 ハルトムートと繋いだままになっている右手を見つめるが、ハルトムートはレティーツィアの手を離そうとする気配がない。



(清めの儀式が終わったのなら、このまま手を繋ぎ続ける必要ってないんじゃないと思うんだけど… でも万が一ってこともあるし、確認してから手を離した方がいいわよね…?)



 レティーツィアは戸惑いがちに、「…ねぇ、清めの儀式が終わったのなら私たちが手を繋ぎ続けなくてもいいんじゃないですか?」と聞いてみた。



「あ…、あぁ。 まぁ、清めの儀式が終わったので手を繋ぐ必要はもうないのだが……。」



 ハルトムートの口調はどことなく曖昧であり歯切れが悪い。

 だが、1つハッキリとした。

 やはり清めの儀式が終わったのだから手を繋ぎ続ける必要はなさそうだ。



 レティーツィアはハルトムートの手を離そうとした。



「あ…、レティーツィア!

 良ければこのまま、私と手を繋ぎ続ける、というのもいいのではないだろうか……?」


「え…、なぜですか?

 清めの儀式が終わって手を繋ぐ必要はもうないのですよね?

 それなら、私たちがこうして手を繋ぎ続けなくても良いと思いますけど。」


「いや、まぁ、それはそうなのだが…。」



 レティーツィアと手を繋いだままの手を交互に見つめるハルトムート。

 だが、レティーツィアにはこのまま手を繋ぎ続ける必要がさっぱりわからなかった。

 それよりも、精霊の目を手に入れたのだから早く精霊魔法が使えるようになりたい。

 レティーツィアは理解できないハルトムートのことは置いといて、ハルトムートと繋いだ手を離した。



「…あ。」


「どうかしましたか?」


「……いや、大丈夫だ。」


 ハルトムートはレティーツィアが手を離した途端に少し寂しそうな表情になった。

 だけど、レティーツィアにはいまいちその理由が理解できなかった。

 どうしたのだろう、とレティーツィアは不思議に思ったがハルトムートが理由を説明しないのならばわからなかった。

 ハルトムートが説明をしないということは話さなくてもいいことなのかな、とレティーツィアはそう考えた。

 


 ひとまずこれで精霊の目を手に入れて、精霊魔法を使うための大事な一歩を踏み出せたのだ。

 レティーツィアはこれからのやるべきことを考えた。



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