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4章ー6:害人襲来の兆し

 アリアが少し焦っている様子でスマホの画面に指を滑らせた。

 なんか……リアルで一緒にいるのに、チャットするっていうのは不思議な感じがする。


●アリア「あ、あの……実はご近所だったもので……それでたまたま……」

●サンギータ「ご近所!? ナニそれっ!? 運命? 輪廻( ゜д゜)!?」


 だから、輪廻は違うだろう。


 なんか、いつも以上にサンギータがワケが分からなくなっている。

 でもまあ……確かに驚くよな。リアル知り合いだったってだけでもすごいのに、挙句近所だとか……フツーはまずありえない。

 俺だっていまだに夢でも見ているんじゃないかって疑っているくらいだし。


●リュウキ「あと……部活も一緒でな。高校時代の話だけど」

●サンギータ「部活まで一緒ッ!? ナニそれっ!? 運命? 輪廻( ゜д゜)!?」

●リュウキ「ちょっとは落ち着け」

●サンギータ「……(´・ω・`)」


 サンギータの狼狽っぷりに笑いを誘われる。


 ふと画面から顔をあげてみると、同じくアリアも顔をあげて視線が交わる。


「………っ!」


 アリアは、顔を真っ赤にすると、すぐさまうつむいて再びスマホの画面をのぞき込む。


 その反応に、こっちまでもがなんだか落ち着かなくなる。


●サンギータ「サンギータも混ぜて混ぜて混ぜて! あげよーよー(´;ω;`)」

●リュウキ「えええ!? リアルにかっ!? チャットで十分じゃ……」

●サンギータ「ヤダ! サンギータも二人に混ざルッ!」

●リュウキ「…………」


 混ぜるなキケンという言葉が頭をよぎる。


 2chのマギアムジカ・オフラインスレ内の害人ランキングの常連とリアルに会うとか……ハードル高すぎる。


 いや、まあ……サンギータの場合は、ただ単に生まれた国やら環境やら文化やらの違いでアレコレやらかしていただけとは思うけど……。


 それでもやっぱり一抹の不安は残る。

 スゲーのが来たらどうしようって……。


●アリア「ちなみに、サンギータさんはどちらにいらっしゃるんですか?」

●サンギータ「アキバ一択っ!( ゜д゜)b」

●アリア「い、一択……ですか……」

●サンギータ「最高の住み心地! 天国ヨ! 漫画・メイド・オタク三昧ヨ! 会社のオフィスはここにって日本来る前から決めてたモン!」

●リュウキ「オフィスッ!? って……まさかサンギータのか!?」

●サンギータ「うんうん(゜д゜)(。_。)」

●アリア「も、もしかして……会社を経営……されているとか?」

●サンギータ「うんうん(゜д゜)(。_。)」

●リュウキ「…………」


 まさかのサンギータのカミングアウトに、アリアと顔を見合わせて驚愕する。


 いや……そりゃタダモノじゃないとは思ってたけど……まさか社長だったとは。

 っていうか、ぶっちゃけこんな社長嫌すぎる。

 心の中で激しく社員に同情する。


 そういや、なんかやたらさっきから「調べさせた」とか言っていたような……あれって社員に調べさせていたのか……。社員を私用で使ってやるなよ……頼むから。


●アリア「んー、アキバならそう遠くないですねー」

●サンギータ「二人はドコドコ?」

●リュウキ「川崎と蒲田の間……だけど……」

●サンギータ「あ、ホント! じゃ、今すぐ馬車馬のように行くカラ! 川崎でガッタイよっ\(^o^)/」

●リュウキ「っ!? 今からすぐにかっ!?」

●サンギータ「思い立ったがキツツキよー! ドコに行けばいい? イィ?」


 それを言うなら吉日だ!


 ついでに言わせてもらえば、吉日ならぬ凶日になりそうな予感が半端ない。


 害人リストはともかくとしても、なんせサンギータといえばトラブルメーカー。 トラブルメーカーといえばサンギータ。


 思いつき&見切り発車のボス討伐関連のみならず、何度トラブルを起こしてきたかしれない……。

 そして、いつもなんでかその尻ぬぐいをさせられるのが俺だっていう……。


「……先輩……大丈夫ですか?」

「……ああ」


 アリアに尋ねられて頷いてみせるも、表情が思いっきり引きつっているのが自分でも分かる。


 サンギータのせいであれこれ悩まされた思い出とトラウマがよみがえってきて、インフルの頭痛がぶり返してきた。


「すみません……もしかして、場所とか教えないほうがよかったですか?」

「いや、それはいい。ただ、ちょっと覚悟がだな……」

「ああ、た、確かに……でも、会社を経営されている社長さんならたぶん大丈夫じゃないでしょうか?」

「……会社もピンキリだからな」

「そ、そうなんですね……す、すみません……ちょっと軽率でした」


 アリアがしゅんと肩を落とす様子を見ると、覚悟なんてさっさと決めてやれと逆に前向きになる。

 いや、むしろヤケクソといったほうが正しいか──


●リュウキ「──じゃ、川崎のラゾラゾモールの広場に13時な?」

●サンギータ「っ!? ラゾラゾモール! ラジャー!('◇')ゞ」

●リュウキ「ただし! 絶対にトラブル起こさないって約束できるか!?」

●サンギータ「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪」

●リュウキ「……アリアにセクハラも駄目だぞ?」

●サンギータ「ェー(´Д`)……」

●サリア「……するつもりだったんですか!?」

●サンギータ「う、ううん!? そんなこと全然(ヾノ・∀・`)ナイナイ」

●リュウキ「怪しいな。絶対に駄目だからな? 約束できなきゃ、集合場所に行かないからな?」

●サンギータ「ちぇ、それじゃ、まーリーダーでいいやー」

●リュウキ「なんだそれっ!」

●サンギータ「とりあえずー! ムクムク準備してソッコー向かうネー! セックハラーだいっすきー♪ みんなでサ・ワ・ロー( *´艸`)」


「…………」


 アホな発言の後、チャットは止まった。


「あ、あの……すみません……なんだか……私のために先輩がサンギータさんのセクハラを受ける羽目に……」

「さすがにアレは冗談だろ」

「だったらいいんですけど……いつもがいつもなので……」

「……それな」


 もはや不安しか残らない。


「サンギータさん……どんな方なんでしょうね……」

「案外、男だったりしてな……」

「えっ!? 男の人なのに先輩にセクハラするんですか!?」

「……とりあえず、セクハラからいったん離れよう」

「っ!? す、すみません……私ったら……」


 耳まで真っ赤になってアリアが慌てふためく。


 アリアとこういうやりとりをしていると、高校時代に戻ったような気がする。


 非日常のショックが日常に和らいだせいか、ようやく胃の辺りのつっかえも取れて、俺はハンバーガーを頬張った。


 腹が減っては戦はできぬとはよく言うけど、そもそも腹が減らなきゃ戦はできぬってほうが正しいに違いない。

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