4章ー5 仕様変更の驚愕
「あ、ちなみにお金も倉庫から引き出せました」
「ええぇええええええ?」
「使い方も倉庫番さんから教えていただけましたし──実際に使えました」
そう言うと、アリアは斜めがけのふっくらしたがま口バッグの中からスマホを取り出して操作して、画面を俺へと見せてきた。
ウミスラが全体的に覆いかぶさるような自作と思しきスマホケースに気を取られつつも、その画面に目が釘付けになる。
「──────っ!!!!!!!!!」
そこには、ゲーム内で倉庫を開いたときのウインドウがあった。
ただし、一つだけ大きく異なる点があった。
ウインドウ上部に「リアル所有分アイテム及びマネー」という見出しが追記されている。
その下にアリアの所持金と装備品がずらりと並んでいて……思わず言葉を失ってしまう。
うっわ……エッグぅ……。
心の中で呻く。
たぶんアリアの装備はものすごいんだろうなと予想はついていたけれど、Sクラスの装備にさらに強化を重ねたトンデモ装備だったっていうのがアイコン上に書かれた数字によって判明して愕然とする。
+30ってなんだそれ?
俺なんてせいぜいその半分だっていうのに……。
この世にこんなエグい装備が存在していたなんて……知らなかった。
アリア怖ぇえ……。
ドン引きしている俺には気づいていない様子でアリアは言葉を続ける。
「どうやらゲームのアイテムは、いったんリアルの倉庫番NPCから、今回アップされた新しいアプリを通じて引き出して使う仕様のようです」
「な、なるほど……」
「とりあえず『本サービス』がどんなルールになっているのか、まずは知るのが先決かと思っていろいろ試してみていました。それで連絡が遅れてすみません」
「いや……むしろ、そのおかげでさっきも助かったようなものだし」
俺が言うと、アリアはホッとした様子ではにかむ。
と、次に何気なく所持金欄に目が行って──息が止まるかと思った。
「──────────っ!!!!!!!!!!!!!」
ウソ……だろ!?
コレ何桁あるんだ?
パッと見で、いくらか把握できないほどのエグい桁の数字が並んでいた……。
うあああ……見なけりゃよかった。
後悔するも後の祭り。
なんかもう……いろんな意味で打ちのめされる。
「アプリ上の取引内容で何を買ったとか分かるのが便利でいいですね~。これで、お小遣い帳つけなくてすみますし♪」
うれしそうに「取引内容」の明細を俺に見せるアリア。
そこは、「プリン 1、08MGC」とあった。
そのあまりにもささやかすぎる支出に和む。
だが、待て──お小遣い帳?
いやいや! その所持金、お小遣いっていうレベルじゃないだろ! ちょっとした資産だぞ!
と、心の中で突っ込む。
って、あれ?
なんかおかしいような?
ふと違和感を覚えて、もう一度数字を確認して……度肝を抜かれた。
「あれ? 1、08? プリンが100円として……108MGCじゃ?」
「ええ……それなんですけど……なぜか価値が上がってますよね?」
「ええええええぇえええええええええっ!?」
円換算だと、108円のプリンが……1,08円!?
2桁も違うとかっ!? ちょっと高騰どころの騒ぎじゃないだろ、これ。
MGCに100倍の価値がついているってことかっ!?
でも、一体なんでそんなことに?
「……なんだか……とんでもないことが起きているようだな……コレ、いろいろヤバい感じが……」
「……ですかね? いまいちピンと来ていなくて」
「まあ、俺もそうなんだけど……」
あまりそういった方面に詳しいほうじゃないが、マギアムジカ・オフラインは、ただでさえリアルマネーが絡むからってことでドロドロしたいざこざ──金品狙いのPKや詐欺なども横行していた。
ってことを考えると、そういった類の争いが激化するだろうというのは、素人目にも明らかだ。
「……とりあえず……こういうのはサンギータに聞くべきだよな……」
ああ見えて数字には強いし頭もキレる。
そういえば──チャットを投げて放置したままだった。
スマホを取り出すと、サンギータから届いたチャットの通知がずらりと並んでいて申し訳なく思う。
アリアも自分のスマホを見てチャットアプリを立ち上げた。
●リュウキ「悪い、もどり」
●サンギータ「っ!? リーダーおかーーーーーーーーーーー(´;ω;`)! っていうか、放置プレイよくナイ(-"-)!」
●リュウキ「いや……ちょっといろいろ大変なことが起きてて……ウミスラ、ガチでいたし……」
●サンギータ「ああ、それねー! 気になって調べさせたら、ゲーム内モンスがアチコチで沸いてるってネットでも話題フットー(´Д`)動画もイッパーイ……」
●リュウキ「……マジかっ!?」
●サンギータ「うんうん! 気になったことはゴツゴツ調べさせるヨー!」
そういや……さっきの戦いもたぶん撮られてるな。スマホ構えていたの何人かいたっぽいし。
昨今はなんでもかんでも簡単に文字やら写真やらで拡散されるから、たまったもんじゃない。
情報が一部の人間に独占されてきた過去よりは全然マシなんだろうが……。
って、俺だってさっきみたいな状況に出くわしたら、迷わず撮って拡散してるだろうし──他人のことを言えたギリじゃないか。
●サンギータ「でもサ、なんでかすぐに片っ端から消されてってルンだよネー」
●リュウキ「へ? なんで? 運営が消していってるってことか?」
●サンギータ「ううん、違うと思う。それにしては速度が速すぎモンネー」
どういうことだ?
チャット入力の手を止めたところで、アリアがチャットに参戦してきた。
●アリア「こんにちは。サンギータさん」
●サンギータ「あー! アリアもキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!! わーい♪」
●リュウキ「ああ、実は……今一緒にいる」
●サンギータ「( ゜д゜)!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! にせふじkshyらyあ」
驚きのあまりだろう。サンギータのチャットが激しく乱れる。
●サンギータ「っちょ! ナニナニそれっ! ずるーイ! 仲間はずれ駄目ゼッタイ( ゜д゜)!」
●リュウキ「いや……ピンチを助けてもらってだな」
●サンギータ「またー!? リーダー、いつもそれバッカじゃん!( ゜д゜)」
●リュウキ「…………」
地味に痛いところを突かれてさらにへこむ。
そうなんだよなー。
フツーこういうのって逆だろっていう……しかも、後輩に助けられまくりとか……。
軽く死にたくなる。




