表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/30

4章ー7:必然の奇跡と新たな疑問

 とりあえず、俺とアリアは川崎駅前に直結しているモールまで移動して、サンギータの到着を待つことにした。

 

 約束の時間まであと5分を切ってしまった。

 あと少しで──リアルサンギータが襲来する。


 俺たちは緊張の面持ちで、モールの広場の片隅にテーブルと共に置かれた椅子に腰かけている。


 広場のステージでは折しもフリキュアショーをやっていて、小さなお友達から大きなお友達まで集まって賑わいを見せている。


 ついさっき、ショーでなくマジものの戦いを目の当たりにした身としては、フィクションの戦いに気が紛れてありがたい。


「都会の僻地に咲く一輪の花っ! フリキュア・フラワー! 悪い奴らはシオッシオに枯らしちゃいますわよーっ!」


 頭のてっぺんから突き抜けるような甲高い声が広場に響き、続いてファンの声援と拍手が沸く。


 絶大な人気を誇るフリキュアのヒロインが対峙しているのは蛇のモンスター。


 まさかフレイムスネイクじゃないよな……と、脳裏にマギアムジカ・オフラインのモンスターが頭をちらついて慌てて打ち消した。


 と、そのときだった。


 アリアが困ったような表情で、そっと耳打ちしてきた。

 

「……先輩……あれって、フレイムスネイクじゃないですよね?」

「っ!? 俺もそう思った」

「うんうん、見えちゃいますよねー! その辺のお庭にあるホースも大抵スネイク系のモンスターに見えちゃいますし……」

「い、いや……さすがにそこまでは……」

「えええええっ!? それがフツーって思ってました……」


 アリアの「フツー」に慄く。それは……廃人あるあるだ。


 さすが最強ギルドに所属しているだけはある。

 ログインの2時間縛りがなければ、確実に廃人だったに違いない。


 俺も他人のことを言えたギリじゃないが、少なくともアリアほど重度じゃないことだけは確かだ……。


「で、でも、その辺に植えてある木を見たら採取したくなっちゃいますし……ビー玉とか転がってたら魔宝石かもって……やたら拾いたくなりません?」

「……ま、まあ、気持ちはわかる。さすがにやらないけど」

「えっ!? や、やらない……ですか?」


 って、やったんかい!?


 と、しゅんっとうなだれるアリアに、心の中で突っ込みを入れる。


 ちょっと想像するだけで、やたら和むし笑えてくる。

 だが、冷静に考えたら廃人あるあるの中でも重症クラスの症状で……あまり笑えないような気がしなくもない。


 でもまあ、逆に考えれば、これくらいドップリハマっていないと最強ギルドに所属するとか無理ゲーってことか。


 俺も十分ハマっているほうだっていう自負はあったけど、アリアのハマりっぷりからすればぬるすぎる。


 でも──なんでまたここまでのめりこんだんだろう?

 そもそもゲームなんて、ほとんど興味がなかったはずなのに。


「……ん、どうかしましたか?」

「いや……なんだか、こうして一緒にいるのが不思議だなって……」


 遠回しに疑問を口にしてみる。

 いや、さすがに遠回しすぎて伝わらないだろうけど──


 でも、本当につくづく不思議だ。


 もうたぶん二度と会うことはないと思っていたのにこうして一緒にいること。実はゲームで再会していたこと。何もかもが奇跡に等しい確率なんじゃないかと。


 いや、会うことはないと思っていたというよりも、合わせる顔がないって言った方が正しいかもしれない。


 超絶ブラック企業の社畜とか……落ちぶれた姿を見られたくないっていうのもあったし……。


「不思議……ですか?」

「え?」


 てっきり同意を得られるとばかり思っていたのに、思いもよらなかったアリアの反応に驚かされる。


 アリアは、唇を尖らせて俺を軽く睨んで言葉を続けた。


「何も不思議なことなんてないです。私は、また会うって決めてましたから」

「…………」


 そのかたい決意が滲む言葉にハッとさせられる。


 そういえば、スカイドラゴの討伐のときも「ずっと探してた」って言っていたような──


 だとすれば、俺にとっては奇跡でも、アリアからしてみれば必然ってことか。


 なのに、俺のほうは……探すどころかむしろ遠ざけていた上に、アリアが東雲かもしれないってことを確かめようとすらしなかった。


 罪悪感とバツの悪さとにいたたまれなくなる。


「……いや、まさか……東雲もゲームやるとか思ってもいなくて……そりゃ似ているなとは思ってたけど……気のせいだろうって。その、いろいろ忙しいっぽいって聞いてたし……」


 口ごもりながらも、今度はさっきよりも一歩踏み込んでかまをかけてみる。


 アリアは、夢にまっすぐ突き進むべく順風満帆な大学ライフを謳歌していたんじゃないかと。

 なんで、マギアムジカ・オフラインにそこまでのめりこんだのかと。

 

 すると、アリアは遠い目をして口をつぐんでしまった。


「…………」


 その摩耗したガラスのような目を見て、聞かなきゃよかった──と後悔する。

 もしかしたら地雷を踏んでしまったのかもしれない。


 だけど、アリアはすぐに元通りの少し困ったような微笑みを浮かべて俺の質問に答えてくれた。


「だって、完全平等な世界だなんて面白そうじゃないですか? なんだろうって気になって、試しにやってみたら予想以上に面白い世界で……いつの間にか夢中になっていました」

「ああ、あのメール、アリアのところにも来たのか?」


 通常、ああいった類のメールや広告はそのテの趣味を持つ個人に向けて発信されるもののはずだが──


 たまに、ちょいエロ系の漫画だとかゲームとかの広告を間違ってクリックしたら、やたらそれ系の広告ばかり表示されるようになって地味にへこむっていうアレだ……。


 断じて意図的なものではない。


「おそらくあのメールは、世界中のアドレスに送られたものだと思うんです。国も老若男女も関係なく、それこそ平等に──」

「っ!? え?」


 アリアの言葉に俺は愕然とする。


 ていうか……そんなこと可能なのだろうか?

 そもそもなんのために!?


 言葉を失った俺に構わず、アリアは続ける。


「でも、大抵の人がおそらくスパムだと思ったでしょうし、迷惑メールのフォルダに自動振り分けされたケースも多かったでしょう」

「……なんで……そう思うんだ?」


 ここまでの確信は一体どこからくるんだろう?


「あ、えっと……これは私一人の考えっていうわけではなくて、前にギルチャで一度そういう議論で盛り上がったときがあったんです」

「おお、そ、そっか」

「そういった類の情報に精通しているギルメンがいて……いろいろ調べてみたそうです。もちろん真偽は定かではありませんけど、確かにそうかもしれないって妙に納得したもので……」

「……なるほどなあ」


 さすが最強ギルドともなると、ギルチャも深い内容になるんだなあと妙に感心してしまう。

 うちのグループチャットのようなアホな会話とは一線を画す。


 確かに、他のMMOに比べて異様に外国人率が高いとは思っていたが、まさかそんな背景があったとは思いもよらなかった。もちろん鵜呑みにするワケじゃないが、面白い視点だと思う。


「すべての機会はすべての人々に均等に──その機会に気づくも気が付かないのも本人次第だなんて……面白いですよね……リアルの世界じゃ、そうはいきませんから……」


 しみじみとした口調で語るアリアに思わず力いっぱい頷いてみせる。

 

 アリアの言うとおりだ。

 マギアムジカ・オフラインのスタートラインはみんな同じ。

 生まれたときから、あらかじめある程度の難易度が決められているリアルとは違う。


 でも、その台詞をアリアが口にするのは違和感があった。


 裕福な家庭に生まれて、夢をあきらめる必要もなく音大に進学とか──俺からすれば十分すぎるほど恵まれているように思えるし、平等な世界に憧れる必要もないはず……。


 一体──何があったっていうんだろう?

1ヶ月連続更新もこの話でいったん終了です! 次回更新は10月or11月を予定しています!

ブログやtwitterなどでも告知します。引き続きよろしくお願いいたします。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ