戦わなければならない理由、そして、相棒
その時、エレナの素直な言葉が溢れ出した。
「この仕事をしてるとね――自分の子供みたいな年頃の連中を毎日のように見送るんだけどさ――当然〝返ってこない子〟も居るんだ。でもみんな〝戦わなければならない理由〟を抱えているのさ」
エレナはカリナが落ち着くまで抱きしめ続けた。
「故郷のため――、部族のため――、民族のため――、復讐のため――、そして家族のため――。色んな理由を抱えてここにくるのさ。でも、結局戦場では最後に頼りになるのは〝自分自身〟――困難を乗り越えるのも、敵を打ち倒すのも――」
その言葉にはエレナが今までにどれだけのアーセナルコマンドを見送ってきたかが滲んでいた。戦争は人が死ぬ――、それは至極当然のことだ。
「だからこそ、自分で守る術を自分で身に着けなければならないのさ。あんたが生まれた世界では、それが〝剣〟であり、それが〝魔法〟であったように――この世界ではコイツなんだ」
エレナが視線で指し示す先には、そびえ立つヴァンガード――カリナの戦闘技術を育ててくれるグリーンドワーフが佇んでいた。
「カリナ、一度は、戦場の頂きに立ったあんたがゼロからやり直すのは本当に大変だと思う。見ず知らずの世界で、街の歩き方すらわからないのに、どうやって戦えとばいいか途方に暮れるだろう。でも、忘れちゃいけないよ――」
「え? なにを? ですか?」
不思議がるカリナにエレナは、カリナが左腰に下げている物をそっと触れながら言った。
「あんたには、あんたの戦いをずっと支え続けてくれた〝この子〟がいる。あんたには絶対的な味方になる〝相棒〟がいるんだ。私が知っている新兵の子たちと、あんたの違いはそれだ。自信をもっていいいんだ」
「あ――」
「戦場で何者にも代えがたい財産――それは〝戦友〟だよ」
その気づきにカリナは思わず左腰の剣を抜いた。そして、レギオンブレイドの十字鍔の中央にある青白く明滅するクリスタルを見つめる。
「エリュシオ――」
不安の中のカリナが見つめる先には、エリュシオの光があった。
『マスター、私は〝剣〟です。あなたの手にあり、あなたとともに戦場に生きる定め。あなたが赴く先がどのような地であろうと、私は共に生き続けます』
「うん、ありがとう――エリュシオ」
ようやくカリナは笑顔を取り戻したのだった。そして、エレナが不意に何かに気づいた。
「しかし、機械での戦闘が主流のこの世界での戦場では、〝アンタ〟もやりづらいだろうね」
エレナの一言にエリュシオもため息を付いたように呟く。
『おっしゃるとおりです。戦争の基本がソルスター世界とは全く異なるので、私も手探り状態です』
エリュシオのその一言にエレナがニヤリと笑った。
「なら、その手探り――手助けしようじゃないか」
「えっ?」
カリナが驚き、
『なにか策があるのですか?』
「あぁ、あたしゃ、この世界の〝匠〟だよ? あんたがカリナの戦友としてこれからも共に歩めるように〝こしらえて〟みるさ」
エレナの言葉にカリナも顔を明るくした。
「ほんとうですか?」
「あぁ、一つ思いついたことが有るのさ」
「お願いします! 戦場でこれからもエリュシオの力が得られるのであれば心強いです!」
『私からお願いいたします、エレナ様』
「任せておくれな」
エレナは技術者だ、テクノロジーで戦場の兵士を支えるのが役目だ。今こそ、エレナのカリナへの最大の支援が生み出されようとしていたのだった。




