表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
76/92

リルケとの別れ

 そんなある日、カリナは数人の子供たちと共に兵士に連れられて訓練場の外に向かった。兵員輸送用の馬車に乗せられて監視付きで戦場に向かう。向かった先は人間と魔族の戦乱の最前線だ。


「今日はお前たちに戦場の現実というのを見せてやる。お前たちがこれから何をさせられるのかはっきりと教える」


 硝煙と血煙と魔法発動の衝撃の舞う戦場の片隅でカリナたちは恐怖に怯えながら戦いの様相を見守っていた。


 強力な魔王軍の進撃に人間たちの軍は木っ端の様に蹴散らされていく。その最中、戦陣の中央に1人の少女が佇んでいる。その手に握りしめているのは――


「あっ、〝あの剣〟だ」


 いつかかつてカリナが握りしめさせられたあの金色の剣だった。その少女が手を掲げて何かを叫んでいる。その後、魔法が活動して巨大な雷が魔王軍の尖兵を蹴散らしていく。それをきっかけに人間の軍が反転攻勢に出る。結果として人間側の勝利に終わった。

 撤収していく自軍の群れの中で、遠くに見える剣の使い手の少女はひどく疲れているように見えた。でもそれをかばうものは誰もいなかった。


「誰も助けないんだ」


 そのことに気づいた時、自分たちが何をさせられるのか分かったような気がした。敵に気づかれないように気配を消して撤収していく中で痛感させられた。

 相変わらず自分たちが何をさせれるのか名言する人はいなかったが、今回の戦場視察で自分たちの未来が垣間見えたような気がした。自分たちに希望はないのだと――


 仲間たちは少しづつ減り、時たま補充される。減るのはかつて見たように戦場に連れて行かれて帰ってこないからだ。

 訓練を受けながら3年目のある日、カリナとリルケの元に教官の軍人が現れた。


「リルケ・マイアール、来い」

「はい!」


 個室の中で休憩していたがある日の午後にリルケだけが呼び出された。何が起きたか2人にはうっすらと分かっていた。リルケがカリナに振り向いて視線を向ける。


「ごめん先に行くね」

「お気をつけて」

「うん、あなたは頑張って生きてね」


 寂しそうにそう微笑みながらリルケは部屋から出て行く。その首筋にはあの金のチェーンネックレスが輝いている。いつだったかそれは母親の形見だと彼女が教えてくれたことがある。

 それから何日も待ってもリルケは帰ってこなかった。


 さらにそれから1月が経った後だ。カリナも突如呼び出された。普段顔を見ることもない上級士官が睨みを効かせるように待っていて、


「お前の番だ」


 とだけ言われた。そして渡されたのはカリナの人生を狂わせたあの聖剣だった。拒否はできないことは知っている。


「わかりました。お役目果たさせていただきます」

「あぁ、あっさり死ぬなよ」


 とてもではないが立場ある人間の態度や言葉ではなかった。それに、どうしても聞きたい疑問があった。


「一つ、お聞かせ下さい」

「なんだ」

「前任者の彼女はどうなりましたか?」


 優しくしてくれた同室のリルケは先に戦いの場へと連れて行かれた。そして彼女は特別加算と言われたカリナと違い普通の陽性とされた人だった。そう尋ねれば上級士官の男は睨みつけてきた。


「知る必要は無い」

「わかりました。余分な発言、大変失礼いたしました」


 もう一人、カリナの人生を狂わせた元凶であるあの魔導士が近づいてくる。


「その聖剣の使い方を教えてやろう」

「よろしくお願いいたします」


 初めの1年で言葉の使い方を身に着けた。ひたすら丁寧に、ひたすら大人しく振る舞う事が身についていた。


「では、基礎指導に入りますので」

「あぁ」


 上級士官が面倒そうに答えると彼らから見えない角度で魔導士は舌打ちしたのを見逃さなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ