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軍事教練でもカリナは涙を流さなかった

 カリナは夢を見ていた。懐かしい記憶、辛い記憶。

 戦場での戦いの光景が、脳裏に焼き付いて居たからだと思う。

 カリナは昔の夢を見ていた――

 それは彼女にとって一番つらい時期の記憶だった。


 幼少時の自分が夢に出てくる。

 

「カリナ、ジェシカ! ここは村の連中と一緒に俺が食い止める! お前たちだけでも逃げろ!」

「お父さん!」

「強く生きろ! カリナ!」


 村を襲った魔獣の群れ。魔王軍の影響下にある凶悪な一団がカリナの故郷を襲った。大軍の突然の襲来に村の人間たちはなすすべを知らなかった。男たちが中心となり子供や女性たちを逃がす逃がす事となった。カリナの父はその時に犠牲となったのだ。

 カリナが4歳の時だった。


「元気に生きてねカリナ」

「お母さん! やだ! 一緒にいる!」

「さよならカリナ」

「お母さん!」


 それから1年後、母親も魔王軍の兵士により惨殺された。カリナを守るために自ら囮になってのことだった。


 天涯孤独となったカリナはそれから孤児院に身を寄せた。貧しい暮らしではあったが優しいシスターと友人たちに恵まれそれなりに幸せな日々を送っていた。だが――


 今のカリナは訳も分からず隣国の軍隊に攫われて軍事教練を受けさせられていた。


「モタモタするな!」

「誰が休んでいいと言った!」


 大人の兵士の軍事教練なみに過酷な訓練が続く。フラフラになっても休ませてもらえない。ある日走り込みの際に足の痛みからふと立ち止まってしまった。

 すると中年の強面の教官が飛んできて気を失うほど殴りつけられた。疲れ様ようが、体が痛もうが、命じられた通りの結果が出ない時は殴る蹴るは当たり前の毎日だった。


「何を泣いてる? 泣いても誰も助けに来んぞ。お前の代わりはいくらでもいるんだからな」


 決まって浴びせられる侮辱の言葉だった。換えはいくらでもいる。有能であると示さないと捨てられると徹底的に叩き込まれるのだ。


「ごめんなさい」


 こう答えた時はビンタされた。


「言葉が違う。〝申し訳ありません〟だろう」

「申し訳ありませんでした、教官殿」

「ふん、それでいい」


 言葉遣いが悪いという理由だ。食事も決められている時間に速やかに食べないとまた殴られた。

 夕暮れ時になると上官の中には酔っ払って女の子に絡む不良軍人も居た。


「最低」


 カリナがそう言葉を漏らせばリルケが吐き捨てるように言う。


「あんなやつ死んじゃえばいいのに」


 誰もがそう陰口を叩いた。ある日、カリナも、そのクズの上官に手を握られた。全身の毛が総毛立つ様な悪寒を感じる。だが――


「おい、その子は〝特別加算〟だぞ」


 強い口調で警告が発せられる。その言葉を出したのはあの厳しかった戦闘技術の指導教官だった。


「特別加算を潰すと上層部も黙ってないぞ? さすがに最近逃亡が増えたんで問題視され始まっている。ほどほどにしておけ」


 その指導教官の睨むような視線にゲス教官は舌打ちしながら去って行った。指導教官はカリナに視線だけを向けてそこから去って行く。もはや何のために訓練を受けているのかその意義さえ分からない毎日だった。


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