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魔王城からの帰路 ―歴代勇者英霊との交流―

 戦いは終わった――

 魔王城の外部の戦いも終結していた。大魔王傘下の幹部級の魔族もことごとく打ち取られた。周辺の支城も猛攻の末に陥落を果たしていた。

 無論損失もある、倒れた兵士は数えきれない。 


 現地にて戦死者の霊を弔う葬送の儀式を略式で行う。

 カリナ自身が巫女となり、葬送の聖句詠唱と、戦死者の魂の天界葬送の儀式を行う。


『黙祷』


 全軍が沈黙を捧げることで葬送の儀式は終わった。

 そして次にやることといえば一つだ。


「帰りましょう、戻り道もおそらくは魔王軍の残党が一矢報いようと、悪あがきをするかもしれません。でも我々はここに至るまで多くの勝利を積み重ねました。なればこそあとひと踏ん張りです」


 アーヴァインと言うやや老齢の魔導剣士がぼやいた。


「そのあとひと踏ん張りってのが面倒くさいんだがな」


 そのぼやきに笑いが思わず漏れた。柔和な空気の中、意外な人物たちが協力を申し出た。


『現世勇者の軍勢の諸君――』


 カリナ率いるアルカナヴァンガード、そしてソルスター自由連合軍。彼らの前に現れたのは200柱の歴代の勇者の英霊たちだ。

 話しかけてきたのは、500年前の英霊である、壮年の甲冑姿の剣士の勇者だ。


『我ら歴代英霊、ここから先の戻り道の護衛をしたい』


 意外な申し出だった。


「どう言うことですか?」


 驚くカリナに英霊の一人、切り札の剣士ブレイズがいう。


『特別なことではない。戦いが終わったんだ。みんな、まだ地上の風景を見ていたいのさ』


 風の魔道士エアリスも笑顔で語る。


『この大地に眠る大ドラゴンの魂たちが、地上滞在に必要な理力(マナ)を提供してくれるそうだ。だから君には負担はかからない』

 

 英霊召喚はカリナの力を消費するが、それも問題なかった。

 カリナも笑顔で頷いた。


「英霊も人の子……、ですよね」

『そういうことさ』


 ブレイズの笑顔に歴代勇者の誰もが頷いていたのだった。



§



 魔王城から光の領域であるセプタリアへの道のりは一月半ほどの工程だった。

 その道中、英霊たちは自らのゆかりの祖国の人々と語り合った。

 平和の到来を喜び、時には悲劇に涙し、あるいは自らの子孫に思いを託す。

 魔王軍の残党は決して少なく無かったが、これも全員で力を合わせて乗り越えた。

 

 帰路において魔王軍残党が襲いかかってくることもある。

 それを察知したのは、大斧を背負った730年前のドワーフの戦士英霊と、バスタードソードを帯びた570年前の女性剣士だった。

 歩哨を引き受けてくれていた彼らが、残党の襲来を察知して叫んだ。


『敵襲! 魔王軍残党! 騎兵部隊50騎! 歩兵1000人! 確認!』と、730年前のドワーフ、

『魔道士は確認できないが、火薬を使った武器を装備している』と、補足したのは570年前の女性剣士が叫ぶ。


 それを120年前の少年勇者が突っ込むように声をかける。


『先輩、それ〝銃〟って言うんだよ』

『うるさいわね! 私の時代には無かったのよ!』


 そのやり取りに誰もが思わず笑い、350年前の全身総鎧の騎士勇者が語った。


『火薬が戦争に出てきたのは私の時代からだな』


 今の時代の銃火器兵が反応して問いかける。


「騎士道の戦いにハンドキャノンが登場した頃ですね?」

『あぁ、火砲歩兵と馬上騎士でもめたものさ』

「もしかしてサーペンタインですか?」

『よく知ってるな? 俺も持たされたが扱いづらくてなぁ。当てるより暴発のほうが多かったものさ』

「暴発回避は習熟訓練あるのみです」

『そこだけはいつの時代も変わらぬな』


 そして、730年前の老ドワーフが発破をかけた。


『雑談はそこまで! 客人たちを出迎えるぞ!』

「はいっ!」

「全員、起こし! 緊急迎撃!」

「全員、起こーし!」


 叩き起こされた現世兵士たちが起き上がり武装を身に着けて隊列を組むと、英霊たちをけしかける。


「先輩! 歴戦の戦術を見せてください!」 

『まかせろ!』と、120年前の少年勇者が言い、

『当時の魔王に一泡吹かせた戦術だ!』と、730年前の大ドワーフが言い放った。

『気合い入れてついて来い!』と、350年前の騎士勇者が叫んだ。

 

 そして、570年前の女性剣士が叫ぶ。


『野郎ども! キ○タマ握って気合入れろ!』

「おおお!」


 出自の国も、種族も様々な兵士たちが、太古の傭兵たちの英霊たちと共に迎撃を開始する。


『かかれぇ!』

「おおおつ!」


 こうして彼らは、魔王軍残党へと立ち向かっていった。 

 カリナは帰り道の隊列のその先頭において、英霊たちと現世兵士たちの心の交流をそっと見守った。


「残党の始末――、それも戦いの終わりだわ」

『えぇ、そして、平和につながるのです』


 エリュシオの言葉にカリナは頷くのだった。


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